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「形」の完璧な模倣を超えて「型」の習得へ――伝統芸道における「わざ」の伝承過程の神秘にメスを入れることで,状況の中で「身体全体でわかっていくわかり方」という学習者の認知プロセスに光をあて、教育実践への応用を図る.巻末には,【解題】「わざ」から「ケア」へ――「知識」とは何かを問いつづけて(生田久美子)を新規収録.
序 型なし文化のなかで
1 「わざ」の習得
2 「形」より入りて、「形」より出る
3 「間」をとる
4 「わざ」世界への潜入
5 「わざ」言語の役割
6 「わざ」から見た知識
7 結び――学校、生活、知識
補稿 なぜ、いま「わざ」か(佐伯 胖/青山学院大学教授)
*解題 「わざ」から「ケア」へ――「知識」とは何かを問いつづけて(生田久美子)
教育学者である著者が,「教える」とは何か,「学ぶ」とは何か――つきつめれば「知識」とは何か,という問いから出発し,従来,非知的なものとして軽視されてきた言語化・記述化されない技能・技術・方法といった,身体にかかわる知識に着目して,教育実践を問い直します.
具体的には,歌舞伎,義太夫,日舞,三味線,茶道,華道,武道,……伝統芸道の名人たちの芸談から,師匠と弟子という関係性のなかで,どのように「わざ」が習得されるのかを解き明かしていくのですが,以下のような過程が浮かび上がってきます.
(1) 模倣・繰り返し・習熟という教授・習得法をとる
(2) 外面的な「形」の完璧な模倣を超えた,文化的な意味に裏打ちされた「型」の習得を暗黙的な目標とする
(3) (1)(2)を可能とするのが,内弟子・徒弟制度を究極の形とする世界への潜入(師匠の生活への接近)である
(4) これらの前提に,状況に埋め込まれた知的な認識活動(正統的周辺参加)・アイデンティティー変容がある
本書は,認知科学や教育学をご専門とする方ばかりでなく,こうした伝統芸道にご興味をお持ちの方にも楽しんでいただけるものです.味わい深い芸談からここまでの分析を展開する,著者の丁寧な読み解きと発想力を,存分にご堪能ください.
解題では,状況に埋め込まれた学習理論から,教育的関係における共感に基づく「傾向性」を経て,現在注目を集めている「ケアリング論」に引き寄せ,「知識」とは何かを問い続ける著者の足跡を辿ります.