TOP > デジタル・スタディーズ【全3巻】

デジタル・スタディーズ【全3巻】

刊行にあたって

 インターネット,モバイル・メディアからウェアラブル端末,ICタグまで,SNS,ブログから,動画サイト,デジタル・アーカイブ,電子図書館まで.21世紀の人類文明は,時間と空間,行為と場所,ヒトとモノ,感性と心理,思考と判断のあらゆる次元においてデジタル・テクノロジーに媒介されて成り立つようになった.
 ルネッサンス以降の近代において,〈知〉は活字をベースとした人文知(ヒューマニティーズ)として成立してきた.しかし,今日では世界のあらゆる情報がデジタル化されるにともなって,人文知も再定義へと向かい,世界の大学・研究機関では,デジタル・ヒューマニティーズの動きが盛んである.
 デジタル文明は知を新たな情報基盤の上に転位するにとどまらない.知の成り立ちを根本的に問い直し,知の枠組みの組み替えをめざす,〈知のデジタル転回〉の動きも強まっている.
 東京大学大学院情報学環では2007年に,メディア哲学のフリードリヒ・キットラー,映画批評の蓮實重彦,脳神経美学のバーバラ・マリア・スタフォード,技術哲学のベルナール・スティグレール,ニューメディア哲学のマーク・ハンセン,ポストヒューマン研究のN・キャサリン・ヘイルズ,メディア・アーティストの藤幡正樹らメディア・スタディーズの代表的な理論家たちを集めて大規模な国際シンポジウムUbiquitous Media: Asian Transformation(ユビキタス・メディア:アジアからのパラダイム創成)を開催した.この会議を契機に,東京やパリ,ロンドンなど欧米各地から集った研究者から,その後,デジタル・ヒューマニティーズの理論と実践を革新する動きが起こってきた.これらの動きは,ニューメディアの哲学,ポストヒューマン研究,ソフトウェア・スタディーズ,デジタル・カルチャー研究といった多様な呼称のもとに先進的な研究動向として国際的に繰り広げられている.さらに,スティグレール,石田英敬らは国際的に研究連携することで,新たな知のネットワークを形成するにいたっている.
 本シリーズでは,デジタルなメディア文化社会事象一般を研究対象にしつつ,過去8年におよぶこのような国際的な研究協働の成果の体系化を試みる.そして,これらの研究をここでは,〈デジタル・スタディーズ〉と呼び,メディア研究から出発したデジタル・ヒューマニティーズの理論と方法を提示することをめざす.
 その上で,20世紀のメディア哲学,メディア批判,表象美学,映像論,記号論,メディア社会学,文化研究,都市建築研究の系譜を〈知のデジタル転回〉の文脈で受けとめ,デジタル・テクノロジーの遍在する時代におけるメディア・スタディーズの新たな方向性を提示し,新しい知のパラダイムを展望する.

編者一同


 

シリーズの特色
◆21世紀の世界において(デジタル)メディアと人文学的知がどのように切り結び,存在していくのか,その一端を描き出すシリーズ.
◆2007年に東京大学大学院情報学環,東京大学大学院総合文化研究科,ノッティンガム=トレント大学セオリー・カルチャー&ソサエティセンターの主催で行われた国際会議「ユビキタス・メディア:アジアからのパラダイム創生(Ubiquitous Media: Asian Transformation)」をもとに構成される.
◆フリードリヒ・キットラー,蓮實重彦,ベルナール・スティグレール,バーバラ・マリア・スタフォード,マーク・ハンセン,N・キャサリン・ヘイルズ,藤幡正樹などの論者が一堂に会する.
◆広義のデジタル・ヒューマニティーズの視点を意識しながら,メディアをより根源的に考察する第1巻,記号・文字・言語などといったシンボルならびにアートやアニメなどの視覚表象とメディアの相関を描く第2巻,都市や公共空間,受容者,ポリティクスなどメディアを取り巻く外部要因との交錯を論じる第3巻でシリーズを構成.

 

第1巻 メディア哲学

最高峰のメディア理論家たちによるマニフェストから本シリーズは始まる.20世紀は「メディア論」の勃興期だった.メディア論は,20世紀の知的フロンティアを形成すると同時に人文学,文化研究,社会理論の学際分野を開拓してきた.その成果を踏まえ,いま一歩進んで,デジタル時代の〈メディアの知〉としての次元をどのように切り開くことができるのか.「メディアの哲学」の基礎を問い,メディアの知のアーキテクチャを描き出す.

序 章 知のデジタル転回 …石田英敬
第1部 メディア・オントロジー
 第1章 フィクションと「表象不可能なもの」:あらゆる映画は,無声映画の一形態でしかない…蓮實重彦(東京大学名誉教授)
 第2章 メディアの存在論に向けて…フリードリヒ・キットラー/大宮勘一郎(東京大学)訳
[対話コラム1] 眼と耳/映像と音:フリードリヒ・キットラー×蓮實重彦 …構成:中路武士(鹿児島大学)
第2部 形而下的/形而上的
 第3章 カタツムリの目的論=遠隔 論理:WiMaxネットワークを装備し彷徨する自己…ベルナール・スティグレール(ポンピドゥー・センターIRI)/ 西 兼志(成蹊大学)訳
 第4章 われわれ自身のものならざる思考 :選択的注意に何が起こったか…バーバラ・マリア・スタフォード(シカゴ大学)/ 星野 太(東京大学)訳
[対話コラム2] 注意の危機:ベルナール・スティグレール×バーバラ・マリア・スタフォード …構成:中路武士
第3部 ホモジェナイズド・メディア  第5章 技術的時間を生きる(生かす)こと:代理母的メディアから認知の分配へ…マーク・ハンセン(デューク大学)/大橋完太郎(神戸女学院大学)訳
 第6章 リアリティ・マイニング,RFID,無限のデータの真なる恐怖…N・キャサリン・ヘイルズ(デューク大学)/御園生涼子(筑波大学)訳
 第7章 メディアアートとの対話
1A Beyond Pagesを創った頃:計算機をメディアとして使う…藤幡正樹(東京藝術大学)
1B Ceci n弾st pas un livre これは本ではない:藤幡正樹のBeyond Pages …石田英敬
2 この国で表現すること:技術模倣と芸術概念の受容 …藤幡正樹
[対話コラム3] RFIDとメディアアート:マーク・ハンセン×N・キャサリン・ヘイルズ×藤幡正樹 …構成:中路武士

第2巻 メディア表象

 デジタル・メディアにおいてメディア・テクノロジーは,その「形而上学」の極限にまで達したといえる.「時間」とはなにか(リアルタイム),「場所」とはなにか(ユビキタス),「人」とはなにか(ポストヒューマン),「記憶」や「物語」とはなにか(アーカイブ)が,根底的に問われることになる.
 知のデジタル転回を受けて,メディア論の理論パラダイムの転換はいかにはかられるべきか.メディア・テクノロジーがもたらす記号・文字・イメージとメディアの基礎理論の変容を問い,デジタル・メディアと「接続」する視覚や触覚を経由した私たちの生が向かう行方を展望する.

序 章 Digital Media Paradigm …石田英敬
第1部 記号・文字・テクノロジー
 第1章 新ライプニッツ派記号論のために:「中国自然神学論」再論…石田英敬
 第2章 映画テクノロジーの新しい文字:モバイル・メディアとデジタル・イメージ …中路武士
 第3章 デジタルネットワーク社会において複合化する記録資料とアーカイブズ …研谷紀夫(関西大学)
[コラム1] エクリチュール・オンライン …二木麻里(東京大学)
[コラム2] 大規模国際会議における批評空間:メタ・スペースの構築…久松慎一(アーティキュレイト株式会社)
第2部 認識と批判のパラダイム
 第4章 〈テクノロジーの文字〉と〈心の装置〉:フロイトへの回帰…石田英敬
 第5章 メディアの消滅:一九八〇年代のメディア理論に見るマクルーハンの影…門林岳史(関西大学)
 第6章 触覚,時間,技術:レヴィナス,または触覚的コミュニケーションの倫理…デイブ・ブースロイド(リンカーン大学)/ 中路武士+谷島貫太(東京大学)訳
 第7章 コミュニケーションのvectorとしての〈キャラ〉:indi-visualコミュニケーション …西 兼志
[コラム3] 八年後から振り返る:「メタ・スペース」がしようとしたこと …谷島貫太
第3部 感性と経験
 第8章 デジタルメディア時代のアート …草原真知子(早稲田大学)
 第9章 経験変容としての瞑想イメージ:ビル・ヴィオラのヴィデオ・アート分析…ネヴェナ・イヴァノヴァ(香港城市大学)/中路武士訳
 第10章 アニメの創造性:クールジャパンを求める中でのキャラクターと設定…イアン・コンドリー(マサチューセッツ工科大学)/Kukhee Choo(上智大学)訳
 第11章 ニューメディアと浮遊する宗教…ブライアン・スタンリー・ターナー(ニューヨーク市立大学)/山崎隆広(群馬県立女子大学)訳
[コラム4] 光の類型文字:写真植字あるいはもうひとつのグラマトロジーの可能性…阿部卓也(東京大学)

 

第3巻 メディア都市

 遍在化するデジタル・メディアは,その個々の使用や受容の実践において,各々の社会的な空間や主体の構成,そのトランスナショナルな布置と結びついている.デジタル・テクノロジーは,「都市」に装備されて身体を囲繞し,あるいは遊歩し,国境を越えていく「モバイル」な主体に装着されている.今日,その広がりは全地球的な規模に達しており,私たちの「文化実践」や「社会運動」は,そうしたデジタル・メディアのグローバルな配置,その使用の戦略と不可分に結びつきつつある.
 遍在化するデジタル・メディアがいかなる建築や都市,メディアの実践,ポピュラー文化や社会運動を浮上させつつあるのかを,具体的な事例に即して考えていく.

 序 章 多孔的なデジタル都市とグローバルな資本の文化地政 …吉見俊哉
第1部 建築と身体,公共空間
 第1章 共生する建築:デジタリティを抱握する…ルシアナ・パリジ(ロンドン大学ゴールドスミス校)/戸田 穣(金沢工業大学)訳
 第2章 生態学的都市論のために:「ベンヤミン的方法」と多孔性…田中 純(東京大学)
 第3章 映像文化へのアプローチ:遍在するスクリーンのアルケオロジー…大久保遼(東京藝術大学)
 第4章 帝都東京における音のネットワーク:戦時下のラジオ放送と「アメリカ」…林 三博(コーネル大学)
[コラム1] Thinking Forest:メディア実験としての工事中景…韓亜由美(前橋工科大学/Studio Han Design)
第2部 モバイルな都市文化
 第5章 「たまごっちの時代」における愛の変容…ドミニク・ペットマン(ユージーン・ラング・カレッジ)/辻 泉(中央大学)
 第6章 ポータブルな市民権…アン・アリソン(デューク大学)/永原 宣(マサチューセッツ工科大学)訳
 第7章 世界を駆ける『アイアンシェフ』:日本の料理番組,ソフトパワー,そして文化グローバル化 …ガブリエラ・ルカーチ(ピッツバーグ大学)/河津孝宏(株式会社WOWOW)訳
 第8章 オンライン・ファン・コミュニティにおける交流と闘争:台湾におけるジャニーズファンを例に …龎惠潔
 第9章 ユビキタス以前へのノスタルジー:「メディアとしての鉄道」と想像力のゆくえ …辻 泉
第3部 ユビキタス都市の社会運動
 第10章 ユーザー・ジェネレーテッド・トーキョー …マティアス・エチャノベ(The Institute of Urbanology/東京大学)/五月女晋也(東京大学)訳
 第11章 ICTの社会への浸透と地域との齟齬:一九九五年以降の地域とメディアをめぐって…三浦伸也(国立研究開発法人防災科学技術研究所)
 第12章 インタラクティヴィティの神話:監視モードと透明なコミュニケーション …阿部 潔(関西学院大学)
 第13章 ポストメディア時代における文化政治学へ向けて …毛利嘉孝(東京藝術大学)
[コラム2] セキュリティ国家における市民社会メディアとコミュニケートする権利…ガブリエレ・ハード(関西学院大学)+浜田忠久(東京大学)

●書籍検索

●ジャンル

シリーズ・講座

●最新情報