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現代インド【全6巻】

[シリーズ著者]

田辺明生 編者代表

シリーズの特徴
◆成長し台頭するインドの現在を総合的・体系的に解明するシリーズ
◆現代インド研究の最先端の議論を明快な叙述であますところなく紹介
◆環境,エネルギー.ジェンダー等の新しい問題群を理解する枠組みを提示
◆〈生態環境〉〈政治経済〉〈社会文化〉の連環的構造と歴史的変化を解明


1 多様性社会の挑戦  田辺明生・杉原 薫・脇村孝平 編

二一世紀のインドは,もはや単なる貧困にあえぐ「閉じられたカースト社会」ではなく,グローバル化を通じた世界経済の成長を牽引するとともに,それ自身が成長力をもつ「開放的な多様性社会」でもある.その多面性を眺め渡す基本的・総論的な視座を提供する.

2 溶融する都市・農村  水島 司・柳澤 悠 編

インドにおいて,今や「躍進する都市」と「停滞する農村」という二項図式は成り立たず,両者の溶融関係が明らかになりつつある.農村と都市および両者の産業的相互関係を軸に,それぞれの社会における構造的変動,階層間格差と社会の再編を描き出す.

3 深化するデモクラシー  長崎暢子・堀本武功・近藤則夫 編

一九九〇年代以降,インドでは世界的なグローバル化・経済自由化・民主化と軌を一にして政治体制が大きな変動を遂げた.第一六次総選挙における新政権誕生に至る政治の重層性と多様性を,内政と外交の両面から分析し,変化の内実の解明と今後の展望を試みる.

4 台頭する新経済空間  岡橋秀典・友澤和夫 編

経済成長を支えている全体的な制度と構造とともに,グローバル市場と密接なつながりをもつ都市の空間再編と社会変動が起きている様相を明らかにする.特に,社会インフラや物的・人的資源の開発および産業集積にともなう「新たな経済空間の台頭」に着目する.

5 周縁からの声  粟屋利江・井坂理穂・井上貴子 編

グローバル化の進展に伴い,ダリト(不可触民),宗教的マイノリティ,女性らが形成する「対抗的公共圏」はインドの政治・社会・経済に大きな影響を与えている.「周縁」に位置する多様な集団や個人による社会運動の諸相を思想や文学も含めて分析する.

6 環流する文化と宗教  三尾 稔・杉本良男 編

近代的洗練を経て「神秘のインド」を改めて体現するヨーガ.欧米のエスニック趣味を経て逆輸入される伝統的ファッション.グローバル化のもたらす在地文化・宗教の「環流」現象を精査し,根底にある知の枠組みの変容と共に移ろうインド文化の現在を照射する.



 

刊行のことば

 現代インドは大きく変わりつつある.近年の経済成長は著しく,民主化によるさまざまな社会集団の公共圏への参加も進展している.こうした政治経済的なダイナミズムとともに,インドの国際的なプレゼンスも増大する一方である.しかしその一方で,社会経済問題が深刻化していることも事実だ.地域的な経済格差は広がり,階層による貧富の差も解消されないままである.環境・エネルギー問題は喫緊の課題であるし,暴力やテロは深刻化しつつある.このように相反する二つの顔をもつインドの現実を総合的に把握し,変化の行方を見定めることが,今求められている.
 従来,一九九〇年代以降のインドの変化は,「計画から市場へ」という政治経済システムの問題として,あるいは,グローバル資本主義による一方向的な包摂として,理解されることも多かった.しかしその過程は,冷戦後の世界的な構造変動という新たな状況に,インドが主体的に対応してきた過程でもある.そしてその基礎には,歴史的に培われてきたインド世界の潜在力の発揮があった.つまり,グローバル化の動きとインド世界固有の論理が交わるなかで,新たなダイナミズムが生まれている.
 本シリーズでは,現在のインドの動態を支えるメカニズムを理解するにあたって,グローバルな文脈と国家レベルの変容をおさえながら,現代インドがつくってきた独自の発展のかたちに着目する.そして地域固有の〈生態環境〉のなかで発展してきた〈政治経済〉〈社会文化〉の構造と歴史的変化を長期的な視野において解明する.そのうえで,インド独自の発展径路やデモクラシーのかたちを総合的視野から明らかにし,それが現在の政治経済社会の活況そして問題といかに結びついているかを把握することを試みる.
 具体的には,「現代インドはいかに変容しているのか」という共通の問いについて,次の三つの視点から論じる.(1)現代インドは,一九八〇─九〇年代を境としてポストコロニアル期を終え,次なるグローバル・インドの時代に入った.(2)インド研究の関心の焦点は,「停滞がもたらす貧困や限られたパイの取り合いからなる紛争」から,「経済成長とデモクラシーの深化にともなう社会変動そしてグローバルな構造変化などの新しいダイナミズム」へ移った.(3)現在私たちに求められているのは,インド・南アジアの経済成長およびデモクラシーの深化を支えるメカニズムと,それにともなう全体的な構造変動のありかたを,執拗に続く貧困や紛争の問題に加え,環境・エネルギー問題や教育・雇用・医療問題また地域間・階層間格差という新しい問題を含めて理解するための枠組みである.
 本シリーズは,このように変貌する現代インドを学際的・長期的な視野から検証し,現代インドの現実を総合的に把握すると同時に,将来的展望を提示することを目指すものである.二一世紀の世界の動向を把握するために,現代インドを理解することは決定的に重要であろう.多角的な視野からの論述によって,現代インドの立体的な理解を提供することができていれば幸いである.

編者代表 田辺明生        

 


各巻詳細

1 多様性社会の挑戦

 序 章 「カースト社会」から「多様性社会」へ  田辺明生 (京都大学)
第I編 生存基盤確保の歴史
 第1章 環境の多様性と文化の多様性  佐藤孝宏 (国際稲研究所)・杉原 薫 (政策研究大学院大学)
 第2章 人口と長期的発展径路  脇村孝平(大阪市立大学)
 第3章 近現代インドのエネルギー  神田さやこ (慶應義塾大学)
 第4章 生存とジェンダー  粟屋利江 (東京外国語大学)
     [補論1]ユーレィジアン問題  水谷 智 (同志社大学)
第II編 開放体系としてのインド世界
 第5章 支配の論理と共存の論理  太田信宏 (東京外国語大学)
 第6章 インド洋世界とインド人商人・起業家のネットワーク  大石高志 (神戸市外国語大学)
 第7章 植民地期における国内市場の形成  杉原 薫
 第8章 差別解消の方法とヴィジョン  長崎暢子 (龍谷大学)
     [補論2]英領インドの企業  野村親義 (大阪市立大学)
第III編 グローバル・インドの潜在力
 第9章 多様性社会と宗教的共存の文化的基盤  外川昌彦 (広島大学)
 第10章 独立後インドの経済発展径路  藤田幸一 (京都大学)
 第11章 民主政治と社会運動  中溝和弥 (京都大学)・石坂晋哉 (京都大学)
 第12章 グローバル・インドのゆくえ  田辺明生
     [補論3]工場の中の神霊  石井美保 (京都大学)
     [補論4]連邦制  藤倉達郎 (京都大学)


2 溶融する都市・農村

 序 章 溶融する都市・農村への視角  水島 司 (東京大学)
第I編 農村社会の変容
 第1章 人口・耕地・農業の長期変動とインド農村  水島 司
     [補論1]降水量の変動と農業生産への影響 
       岡本勝男 (農業環境技術研究所)・堀野豊人 ((株)シーテック)
     [補論2]環境問題の見通し  川島博之 (東京大学)
 第2章 農村人口動向と地域類型  高橋昭子 (東京大学)・水島 司
 第3章 農村発展の類型論  宇佐美好文 (東京大学)・柳澤 悠・押川文子 (京都大学)
第II編 都市の経済と生活
 第4章 拡大する溶融空間  宇佐美好文・岡本勝男
 第5章 都市の経済活動  佐藤隆広 (神戸大学)
 第6章 農村と都市の生活環境  和田一哉 (長崎県立大学)
第III編 農村・都市の境界を越えて
 第7章 農村から都市へ  宇佐美好文・柳澤 悠
     [補論3]雇用環境と教育投資  和田一哉
 第8章 学校教育改革  押川文子
     [補論4]女性と社会変化  喜多村百合 (筑紫女学園大学)
     [補論5]変貌する健康問題  山崎幸治 (神戸大学)
 第9章 引き続く課題  柳澤 悠


3 深化するデモクラシー

 序 章 インド型民主政治の可能性  長崎暢子 ・堀本武功 (京都大学)・近藤則夫 (アジア経済研究所)
第I編 インド民主主義の構築と変容
 第1章 民主主義の拡大と再編  田辺明生 (京都大学)
     [補論1]パンチャーヤット  北川将之 (神戸女学院大学)
 第2章 政党システムの変容と民主主義のガバナンス  三輪博樹 (放送大学)
 第3章 中央─州関係  上田知亮 (京都大学)
 第4章 近代政治思想の形成と展開  長崎暢子
     [補論2]北東部の声  木村真希子 (津田塾大学)
第II編 国内政治の課題と方向性
 第5章 「社会正義」の実現とインド憲法  孝忠延夫 (関西大学)
 第6章 政治経済論 近藤則夫
     [補論3]個人識別番号と現金支給  今藤綾子
 第7章 インド社会変動とヒンドゥー・ナショナリズム  志賀美和子 (専修大学)
     [補論4]宗教マイノリティ  山根 聡 (大阪大学)
 第8章 グローバル化と国内政治  中溝和弥 (京都大学)
第III編 新しい対外関係の模索
 第9章 現代インドの外交戦略  堀本武功
     [補論5]インド系アメリカ人  中津雅昭 (大東文化大学)
     [補論6]日印関係  溜 和敏 (京都大学)
 第10章 覇権なき地域大国としてのインド  伊藤 融 (防衛大学校)
     [補論7]インド洋戦略  清田智子 (Pacific Forum CSIS)
 第11章 民主主義国家インドにおけるシビリアン・コントロールと軍事力構築  伊豆山真理 (防衛研究所)
     [補論8]軍事力  長尾 賢 (東京財団)
     [補論9]核兵器政策  中西宏晃 (京都大学)


4 台頭する新経済空間

 序 章 経済発展と新しい経済空間  岡橋秀典 (広島大学)
第I編 現代インドの空間構造
 第1章 空間構造の形成と変動  岡橋秀典
 第2章 グローバル化にともなう空間の再編成  澤 宗則 (神戸大学)
第II編 開発政策の展開と経済空間の統合
 第3章 包括的成長におけるインフラ整備の役割  小田尚也 (立命館大学)
 第4章 労働市場と人材開発  岡田亜弥 (名古屋大学)
     [補論1]若者の失業問題  佐々木宏 (広島大学)
 第5章 資源開発とエネルギー問題  南埜 猛 (兵庫教育大学)・石上悦朗 (福岡大学)
 第6章 都市化と都市システムの再編  日野正輝 (東北大学)・宇根義己 (金沢大学)
第III編 新経済空間としての大都市の発展
 第7章 自動車産業の発展と産業集積  友澤和夫 (広島大学)
     [補論2]繊維・アパレル産業  宇根義己
 第8章 ICTサービス産業の大都市集積と地理的な分散  鍬塚賢太郎 (龍谷大学)
 第9章 大都市の発展と郊外空間  由井義通 (広島大学)
     [補論3]インドにおけるショッピングモールの発展の意味  土屋 純 (宮城学院女子大学)
 第10章 変容する都市公共空間と露天商  岩谷彩子 (広島大学)
     [補論4]貧困層教育とNGO  針塚瑞樹 (九州大学)
 第11章 郊外農村の社会経済変動  森日出樹 (松山東雲女子大学)
     [補論5]大都市への農産物供給  荒木一視 (山口大学)
 第12章 都市環境問題と環境教育  三宅博之 (北九州市立大学)
 巻末資料 インド社会経済アトラス(GISによる主題図集)


5 周縁からの声

 序 章 「公共圏」論再考  粟屋利江 (東京外国語大学)
第I編 新たな社会運動の主張とかたち
 第1章 現代ダリト運動の射程  舟橋健太 (龍谷大学)・鈴木真弥 (東京外国語大学)
     [補論1]インドのNGO  大橋正明 (恵泉女学園大学)
 第2章 異議申し立てとしての仏教  桂 紹隆 (龍谷大学)
     [補論2]テランガーナ分離運動  山田桂子 (茨城大学)
 第3章 歌う会衆  井上貴子 (大東文化大学)
 第4章 「民俗芸能」が創造されるとき  小西公大 (東京外国語大学)
     [補論3]ストリート・チルドレン  中根智子 (龍谷大学)
 第5章 資源開発・環境・住民  杉本 浄 (東海大学)
第II編 ジェンダーからみる社会変容
 第6章 女たちが政治に参加するとき  喜多村百合 (筑紫女学園大学)・菅野美佐子 (青山学院女子短期大学)
 第7章 フェミニズムとカーストの不幸な関係?  粟屋利江
     [補論4]クィア政治  江原等子 (京都大学)
 第8章 北インドの女神信仰にみる社会変容  八木祐子 (宮城学院女子大学)
     [補論5]伝統的女性観  高島 淳 (東京外国語大学)・水野善文 (東京外国語大学)
 第9章 女が「私」を描くとき  小松久恵 (追手門大学)
第III編 再構築される言語と文学
 第10章 マイノリティ文学からの発信  萩田 博 (東京外国語大学)・石田英明 (大東文化大学)
     [補論6]ディアスポラ文学  松木園久子 (大阪大学)
 第11章 言語問題とアイデンティティ  萬宮健策 (東京外国語大学)
 第12章 多言語社会における出版文化と社会運動  井坂理穂 (東京大学)
 巻末資料 インド各地の主な社会運動解題


6 環流する文化と宗教

 序 章 「環流」するインド  三尾 稔 (国立民族学博物館)
第I編 グローバル化と南アジア的な社会結合
 第1章 ラージャスターン農村における交換と社会関係  中谷純江 (鹿児島大学)
 第2章 空間の再編と社会関係の変容  常田夕美子 (大阪大学)
 第3章 デリー都市圏における近隣関係の構築と変容  中谷哲弥 (奈良県立大学)
 第4章 トランス・ナショナルの時代へ  高田峰夫 (広島修道大学)
     [補論1]移民大国ネパール  南真木人 (国立民族学博物館)
第II編 インド的なるものをめぐるポリティクス
 第5章 環流化を媒介するメディア  松川恭子 (甲南大学)
     [補論2]映画の二一世紀  杉本良男 (国立民族学博物館)
 第6章 踊る現代インド  竹村嘉晃 (国立民族学博物館)
     [補論3]メディカル・ツーリズム  松尾瑞穂 (国立民族学博物館)
     [補論4]インド料理  松川恭子
 第7章 インドのモードファッションと「手仕事」のナショナリズム  杉本星子 (京都文教大学)
     [補論5]伝統染織  上羽陽子 (国立民族学博物館)
 第8章 「インド」をめぐる知の変容  杉本良男
     [補論6]国民総幸福  宮本万里 (ロンドン大学)
     [補論7]日本のインド・イメージ  五十嵐理奈 (福岡アジア美術館)
第III編 分割と包括の葛藤
 第9章 ディアスポラとヒンドゥー教  山下博司 (東北大学)
     [補論8]グル  池亀 彩(Open University)
 第10章 愛国と愛教のはざまで  山根 聡 (大阪大学)
 第11章 キリスト教改宗問題とコミュナリズム  サガヤラージ アントニサーミ (南山大学)
 第12章 宗教のポリトロピー  三尾 稔

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