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超大国・中国のゆくえ【全5巻】

[シリーズ著者]

天児 慧

シリーズの特色
■ダイナミックに動いている中国社会の核心的な特徴を描き出す.
■台頭する中国が日本や世界に及ぼしてきた影響を明らかにする.
■第一線の中国研究者による書き下ろし.

【未刊】1 文明観と歴史認識  劉 傑・村田雄二郎

中国はその独自の「文明観」と「歴史認識」を背景に,今後どのような道を歩むのか.多元化する中国において,「文明観」と「歴史認識」をめぐって,(1)政治的空間,(2)学問的空間,(3)社会的空間という三つの空間が現出し,相互に影響し合いながら,「大国」としての価値観を模索している.このような複雑な構図が,中国の多様な未来像を物語っている.三つの空間の特徴と相互関係を解明しつつ,近代以降中国人の自己認識と対外認識の変遷を通じて,「文明観」と「歴史認識」に中国の進路を左右するいかなる魔力が潜んでいるのかを抉り出す.

2 外交と国際秩序  青山瑠妙・天児 慧

中国の経済力や軍事力の飛躍的増大によって米中G2時代の到来とも言われるなか,中国は鄧小平時代の慎重な外交路線から積極外交へと転換し,「責任ある大国」として国際社会に対して大きな影響力をもつようになってきた.台頭する中国の外交の特徴をどうとらえればよいか.中国は国際社会をどのようにイメージし,いかにして国際秩序形成の道筋を構想してきたのか.

3 共産党とガバナンス  菱田雅晴・鈴木 隆

胡錦濤から習近平へと党トップ人事の進展を経て,カリスマ不在下の集団指導体制のガバナンス(治理)にはどのような特性を見出すことができるのか.制度化,政治プロセスの規範化,公開化を軸に,これに関わるさまざまなアクター(近年ではメディア,インターネットも含まれる)の役割や機能,効果などを交叉させ,中国の国内政治のダイナミズムを描いていく.

4 経済大国化の軋みとインパクト  丸川知雄・梶谷 懐

中国の経済成長は今後も持続するのか.超大国に向かって歩むなかで,中国の経済は国内にどのような軋みを抱え,海外にいかなるインパクトを及ぼしているのか.中国経済に特有の不確実性とダイナミズムに注目しながら,中国のマクロ経済政策と通貨問題,中国の貿易・投資大国化や技術大国化が世界経済にもたらす影響と摩擦,経済成長と土地制度の矛盾といった側面から分析する.

5 勃興する「民」  新保敦子・阿古智子

目覚ましい経済成長を遂げた中国は,既得権益層を重視する政策によって,貧富の差を驚異的な水準にまで拡大させた.格差や不平等が拡大する一方で政治参加が制限されるなか,「民」はいかにして存在感を表しているのか.少数民族,学生,農民,農民工(農民労働者),知識人に焦点を当て,「民」の声を重層的にとらえることにより,ダイナミックに変動する中国社会を描き出す.



 

刊行にあたって

 21世紀の世界を考える時,中国をどのように分析し,理解するかは従来の歴史発展論,経済社会発展論,あるいは体制変容論,国際秩序論などの文脈から見て,最も重要な意義のある課題であろう.「台頭する中国」自体は,もはや論争すべき重要なトピックではない.「台頭している中国」が国内的に,また国際社会においてどのような道を歩むのか,そしてそれらが国内外にどのような影響を及ぼすのか,こういった問題こそ今日の中国研究者たちが正面から問うべき課題であろう.
 まず国内的に見るならば,市場化,国際化を牽引力にして社会主義経済は大きく変わった.では政治,社会の領域で経済に続く変化はどのように考えればいいのだろうか.依然として共産党一党体制を堅持している中国が,例えば経済発展,中間層・市民層の台頭から民主化へといったような従来の移行論では十分に説明できない政治移行の段階にあるように思える.あるいは沿海と内陸,都市と農村,階層間などで深刻な格差,不平等,腐敗を生みだした中国が,今後どのような経済調整を図るのか.成長の鈍化が不可避になっている今日,本当に「和諧社会」は実現できるのかといった問いが生まれてくる.
 さらに国際社会との関係では,中国の経済発展が疑いなく国際経済構造の転換を促している.中国は「世界の工場」として台頭したが,同時にいまや「世界の市場」として米国に代わるアブソーバーになりつつある.ディファクトとして進む「人民元圏」の形成,幾つかの開発・投資を目的とした国際銀行の設立などと合わせ,今後の中国経済が世界の経済をどのように変えていくのかが問われる.そのような中国は将来,世界の国際秩序そのものも変えていくのか.確かに指導者たちは「中国は現在の国際秩序の挑戦者ではなく,いかに現存の秩序に調和していくかだ」と語る.しかし,国際社会において従来には見られなかった「自己主張」を始めていることも確かである.鄧小平が指示した「韜光養晦」(力を見せず静かに力を蓄えよ)の外交戦略は「積極的な突破」へと変わった.軍事力の増強は世界のパワーバランスを変えつつある.そして,それらの延長線上に習近平の主張する「中国の夢」が構想されているように見える.そこでわれわれの関心はさらに,そうした中国の底流に流れる歴史観とそれらによって築かれてきた中華文明に向かう.それは過去を見る視座ではなく,未来の中国を見るもっとも核心をなす視座だからである.
 本シリーズは5巻で構成される.従来の政治,経済,社会,歴史といったスタティックな設定をとることはしない.今日ダイナミックに動いている中国そのものの核心的な特徴を描き出すには,新たな視点と幾つかの斬新な切り口からアプローチすることが不可欠である.本シリーズは中国をめぐる核心的な課題を基軸として各巻を構成することとした.基本的にはオーソドックスな分類をベースにしながら,それぞれの巻の問題意識とアプローチがタイトルから読み取れることを心がけた.これによって,従来にはない新鮮さと未来の中国を考える上での貴重な視座を提供できる斬新な「現代中国像」を描き出すことができるだろう.
 

編者 天児 慧        

 


各巻詳細

1 文明観と歴史認識

第1章 文明観と自己認識
 第1節 二つの文明──「近代」と「中華」
 第2節 連続と不連続──国学ブームをめぐって
第2章 歴史認識の形成
 第1節 中華文明史の構築と演繹
 第2節 乱反射する革命と改革
第3章 文明観と歴史認識の転換
 第1節 中華民国の建国と歴史認識の構築
 第2節 「独立」と対外認識
第4章 「大国」を目指す文明観と歴史認識
 第1節 中華人民共和国の建国と歴史認識の再構築
 第2節 「開国」と対外認識
第5章 文明観と歴史認識でよむ現代中国
 第1節 歴史認識と国家統治──文明観と歴史認識の政治的空間
 第2節 格闘する革命史観と近代化史観──文明観と歴史認識の学問的空間
 第3節 歴史認識の伝承──文明観と歴史認識の社会的空間


2 外交と国際秩序

序章 中国外交へのアプローチ
第1章 中国外交戦略の系譜
 第1節 冷戦構造形成下の毛沢東外交戦略
 第2節 中間地帯論からの毛沢東外交戦略──「三つの世界論」
 第3節 独立自主外交の展開──毛沢東から鄧小平へ
 第4節 脱鄧小平と「大国外交」への回帰
第2章 グローバル大国に向けての対外戦略
 第1節 冷戦終結後の国際構造と中国の対外戦略
 第2節 グローバル大国に向かう中国の関与政策
第3章 多元化する社会と中国の外交
 第1節 「百家争鳴」の中国社会
 第2節 「中国モデル」と中国の外交
第4章 中国の外交行動思想と国際秩序観
 第1節 外交行動思想の原理──型と利の関係
 第2節 中国が目指す21世紀の国際秩序とはどのようなものか
終章 葛藤の中で挑戦する中国の未来


3 共産党とガバナンス

はじめに 中国政治へのアプローチ──アクター・制度
第1章 中国政治の現段階──高度成長の先にあるもの
 第1節 高度成長と体制移行
 第2節 歴史的転換
第2章 ポスト高度成長期のアクター群
 第1節 ガバナンスの主体──党・国家アクター
 第2節 ガバナンスの客体──社会アクター
 第3節 交叉するアクター群
第3章 ガバナンスの制度的対応
 第1節 「変わりにくい支配」とガバナンスの改革
 第2節 「民主化なき」ガバナンスの改善
第4章 トップ・アクターとしての習近平指導部
 第1節 「カリスマなき」最高指導者のリーダーシップ
 第2節 習近平ガバナンスの夢
終章 漂流する中国?


4 経済大国化の軋みとインパクト

序章 経済超大国への道
 第1節 そもそも中国は超大国になるのだろうか
 第2節 「中国経済崩壊論」に根拠はあるのか
 第3節 成長速度はどの程度鈍化するのか
 第4節 生産年齢人口の増減よりも重要な労働移動
 第5節 これからの経済成長率を予測する
 第6節 本書の構成
第1章 投資過剰経済の不確実性とダイナミズム
 第1節 「過剰資本蓄積」の下での高成長
 第2節 脆弱な財政・金融システムと「自生的秩序」──「影の銀行」と「融資プラットフォーム」
 第3節 グローバル不均衡の拡大と人民元問題
第2章 貿易・投資大国化のインパクト
 第1節 アジアの巨鳥から世界の巨鳥へ
 第2節 中国と競争しているのはどこか
 第3節 中国がもたらす発展途上国のモノカルチャー化
 第4節 日本に対するインパクト
 第5節 投資大国の実像
第3章 技術大国化のインパクト
 第1節 科学技術政策と技術開発の進展
 第2節 独自技術の罠
 第3節 キャッチダウン型技術発展の意義
 第4節 テクノナショナリズムの衝突
第4章 土地制度改革と都市化政策の展開
 第1節 市場経済化の中の土地制度改革
 第2節 農地の市場流動化と農村余剰労働力
 第3節 農村における都市化の進展と土地制度改革
終章 経済の曲がり角とその先
 第1節 中国経済の曲がり角
 第2節 成長率の低下
 第3節 不動産バブルの崩壊と都市化
 第4節 金融改革の新たな展開
 第5節 新たな国際金融秩序への模索


5 勃興する「民」

序章 改革開放の30年──目覚める「民」とその分化
第1章 英語教育と教育格差──少数民族地域における小学校英語の必修化をめぐって
 第1節 中国における小学校英語必修化の動き
 第2節 中国における英語教科書
 第3節 都市部における英語教育
 第4節 少数民族と英語教育
 第5節 上級学校進学をめぐる少数民族地域の問題
第2章 少数民族大学生と就職
 第1節 大学生と就労の実態
 第2節 大学生の就職難
 第3節 少数民族大学生の就職状況
 第4節 上級学校進学に対するアスピレーションの低下
第3章 移動の中のエスニック・マイノリティ家族と文化伝承──移動と家族の解体
 第1節 移動する中国少数民族
 第2節 学校の統廃合と寄宿制度
第4章 格差社会の構造
 第1節 エリート主義と中国人のアイデンティティ
 第2節 「社会主義市場経済」の土地制度
 第3節 格差拡大を助長する戸籍・社会保障制度
第5章 中国の市民社会と民主化の行方
 第1節 インターネットが変える言論空間
 第2節 言論統制と世論工作
 第3節 市民社会は発展しているのか
 第4節 民主化の行方
終章 格差の克服・公民社会の建設に向けての胎動

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