TOP > シリーズ福祉社会学【全4巻】

シリーズ福祉社会学【全4巻】

[シリーズ著者]

武川正吾

副田義也

藤村正之

庄司洋子

シリーズの特色
身近なケアや社会保障制度・社会政策まで,私たちはあらゆるレベルで福祉と密接にかかわって生きている.少子高齢化や個人化がすすみ,家族や地域も変容する現代,福祉社会学の体系と魅力をつたえる新シリーズ――.

●「福祉社会学」の名を初めて冠した意欲的なシリーズです.
●マクロな社会変動からミクロなケアの関係まで,さまざまなレベルで社会と福祉をとらえます.
●関連分野の研究者も執筆に参加し,多様な角度から福祉を考えてゆきます.


1 公共性の福祉社会学  武川正吾 編

公共性にかかわる領域は,福祉社会学の重要な研究分野のひとつである.とりわけ労働・家族・ジェンダーなど,社会学固有の領域と交錯させながら社会政策の問題をとりあげ,ワークフェア,ジェンダー・エクイティ,グローバル化などのイシューをとおして,公正 な社会のありかたを探究する.

2 闘争性の福祉社会学  副田義也 編

闘争の理論は社会学の主戦場のひとつである.貧困問題とそれへの抗議,当事者運動,認知症ケア,ターミナルケアなどにおける葛藤,東アジア社会における不平等とそれへの対抗など,さまざまな論争的テーマをとりあげる.博愛と受容の社会福祉論は,闘争と主張の福祉社会学へとその姿を変える.

3 協働性の福祉社会学  藤村正之 編

産業社会の進展によって地域共同体の機能は弱まり,また自己決定が唱導される現代社会では個人化の進行が著しい.そのような社会で,異なる人びとが共に携わる協働がどのように可能なのか.人びとの共生への志向,新たな組織・媒体を通じた行政と民間の連携など,個人化社会における連帯の動きをさぐる.

4 親密性の福祉社会学  庄司洋子 編

ケアをめぐる諸問題は,福祉社会学においてもっとも重要な関心事である.家族機能が変容する現在,生老病死において生じるケアの関係は,親密性の世界に独自かつ多様な展開をみせている.子ども・高齢者・障害者・病者をめぐるケアの現実をとりあげ,福祉社会学における課題にこたえる.



 

刊行にあたって

 これは,日本においてはじめて刊行される,福祉社会学の体系と魅力をつたえるシリーズである.東アジア諸国においても,さらにおそらくは世界の先進諸国においても,これは最初の試みであろう.
 福祉社会学において,研究主題は福祉であり,研究方法は社会学である.その体系は,主題と方法の接点を4つ見出して,構築される.すなわち,公共性,闘争性,協働性,親密性である.多少具体的にかんがえてみよう.

 公共性の福祉社会学は,公正な社会の条件を探求し,福祉社会学の国際的展開を研究する.公共性の諸相としては,ワークフェア,ジェンダー・エクイティ,子どもにとっての公正さに注目する.市民社会,市民権の思想に基礎づけられた福祉社会学を構築し,それを国際的に展開する.
 闘争性の福祉社会学は,生活と福祉を闘争,葛藤に注目しつつ研究する.東アジア三地域,日本,中国,朝鮮は,それぞれにどのような不平等とそれにもとづく紛争をかかえているか.日本の貧困と公的扶助は,近年,社会闘争の局面を急速にあらわにしつつある.また,障害者運動,認知症ケア,ターミナル・ケアでも葛藤は興味深い研究主題である.
 協働性の福祉社会学は,個人化が進む社会での連帯の可能性を研究する.障害者の自立やホームレス,シングル化の進行をいかに理解し支援するか.若年雇用や外国人の子どもたち,限界集落での孤立の様相と共生の課題はどうありうるか.福祉NPOや社会的企業,地域通貨,地域福祉のネットワークや社会関係資本などの議論が新たに展開される.
 親密性の福祉社会学は,ケアが織りなす社会関係の多層性を研究する.ケア関係の歴史社会学において,家族のケアが社会のケアへと社会化されていく様相がしめされる.少子高齢社会の最初のケアは子育てである.ついで,障害者,病人,高齢者への介護と看護の重要性が注目される.また,ケアそのものが専門職論議の現代的課題のひとつである.

 このような福祉社会学のシリーズが2013年に刊行されることは,二重の意味で,事件ともいうべき意義のある出来事である.
 まず,現代日本の社会学にとって,これは事件である.この半世紀あまり,福祉は人々の重要な関心事のひとつであったが,社会学によるその研究は個々の単発的なものにとどまってきた.社会学の具体的な各領域研究,いわゆる連字符社会学の諸研究に比して,その進展と体系化は充分なものとはいえなかった.しかし,福祉社会学の本格的な生成と展開によって,さきの4つに列記したような多彩なトピックスへの体系的な取り組みが可能となるところまで研究が追いついてきたのである.それは,福祉が社会の仕組みにビルト・インされる度合がいっそう高まり,福祉を研究することが現代社会の構造と変動を直接研究することにつながるようになってきたということでもある.
 ついで,現代日本の福祉研究にとって,これは事件である.やはりこの半世紀あまり,社会福祉学が代表する福祉研究が中核となり,政策や実践の分析に基づき有効な指針を提供し,専門職養成に向けた教育的役割を果たしてきた.しかし,社会福祉が広がれば広がるほど,政策や実践の課題に直結するがゆえに見失いがちな,社会福祉の存立根拠や潜在的機能をも反省的に認識しようとする学問的役割が求められるようになってきた.福祉社会学はそこに登場し,他の諸学問とともに,理念と現実の双方を透徹して見据える福祉研究の一端を担おうとするのである.

 われわれは,福祉社会学に関わる内外の精鋭研究者たちを総動員して,学史に残るこの仕事にとりくむ所存である.

編者 武川正吾 副田義也 藤村正之 庄司洋子        

 


各巻詳細

1 公共性の福祉社会学 公正な社会とは

1章 公共性の福祉社会学・序説 武川正吾(東京大学)
I 市民社会の公正
2章 ワークフェアと労働――ニューヨーク市の労働体験事業   小林勇人(日本学術振興会)
3章 ジェンダー・エクイティと福祉国家   下夷美幸(東北大学)
4章 子どもにとっての公正   阿部 彩(国立社会保障・人口問題研究所)
II 福祉社会と市民権
5章 シティズンシップの福祉社会学   亀山俊朗(お茶の水女子大学)
6章 共生社会における関係性と差別   三重野卓(帝京大学)
III グローバル化する福祉社会学
7章 ユーロ危機と「ヨーロッパ社会モデル」のゆくえ   下平好博(明星大学)
8章 ポスト「三つの世界」論の可能性――比較福祉国家研究における類型論と段階論   金 成 垣(東京経済大学)
9章 ヨーロッパにおける社会サービスの市場化と準市場の理論   平岡公一(お茶の水女子大学)
IV 福祉社会学への期待
10章 権力・承認・福祉社会――政治学的視点から 宮本太郎(北海道大学)
11章 経済学で福祉を評価すると 橘木俊詔(同志社大学)
12章 社会学と福祉研究 富永健一(東京大学名誉教授)
13章 福祉社会学と社会福祉学 岩田正美(日本女子大学)


2 闘争性の福祉社会学 ドラマトゥルギーとして

I 闘争と葛藤の福祉社会学
1章 社会の闘争モデルによる福祉社会学・序説  副田義也(筑波大学名誉教授)
2章 「当事者」研究から「当事者研究」へ   上野千鶴子(立命館大学)
3章 市民社会のグローバル化――同型化と多様性のせめぎあい   須田木綿子(東洋大学)
II 貧困と公的扶助における闘争
4章 生活保護しかなかった――貧困の社会問題化と生活保護をめぐる葛藤   岩永理恵(神奈川県立保健福祉大学)
5章 公的扶助訴訟の社会史――朝日訴訟と資源動員   菊地英明(武蔵大学)
6章 ケースワーカーとクライエントの葛藤関係   副田あけみ(関東学院大学)
III 運動とケアにおける葛藤
7章 障害者運動における親と子の葛藤について   杉野昭博(関西学院大学)
8章 映像の中に見る認知症の人の「思い」――ぼけ・痴呆・認知症をめぐるケア実践の社会学   井口高志(奈良女子大学)
9章 緩和ケア病棟で働くということ   株本千鶴(椙山女学園大学)
IV 東アジア諸国の福祉と闘争
10章 中国における都市部と農村部の福祉格差   鍾 家 新(明治大学)
11章 北朝鮮住民の生活実態   申 榮 全(漢陽大学)
12章 変化する社会の不平等――闘争から協調,そして葛藤へ   白波瀬佐和子(東京大学)


3 協働性の福祉社会学 個人化社会の連帯

1章 個人化・連帯・福祉   藤村正之(上智大学)
I 個という生き方と支援
2章 障害者の自立生活運動   立岩真也(立命館大学)
3章 ホームレスという生き方   仁平典宏(法政大学)
4章 シングル化と社会変動   山田昌弘(中央大学)
II 孤立・共生・連帯
5章 若者問題と多元的な社会的包摂――社会保障と雇用のかたち   樋口明彦(法政大学)
6章 外国人の子どもと多文化共生   宮島 喬(お茶の水女子大学名誉教授)
7章 空間の孤立と「限界集落」   高野和良(九州大学)
III 連帯の方法
8章 地域福祉のネットワーク   小林良二(東洋大学)
9章 福祉ボランティアとNPO――福祉社会学の論点   安立清史(九州大学)
10章 社会的企業のハイブリッド構造と社会的包摂   藤井敦史(立教大学)
11章 地域通貨は連帯メディアとなりうるか   杉岡直人(北星学園大学)
12章 コミュニティと社会関係資本――資本主義の進化と変容   広井良典(千葉大学)


4 親密性の福祉社会学 ケアが織りなす関係

1章 ケア関係の社会学――家族のケア・社会のケア 庄司洋子(立教大学名誉教授)
I 現代家族の子育てと支援
2章 児童虐待という問題の構築   上野加代子(徳島大学)
3章 現代家族の養育力と子育て支援   相馬直子(横浜国立大学)
4章 ひとり親家族をめぐる分断の諸相   湯澤直美(立教大学)
II 介護・介助・看護――家族の意味と限界
5章 ケアの帰責――子育てと高齢者介護   藤崎宏子(お茶の水女子大学)
6章 自立と介助――ありふれた日常のなかで   時岡 新(金城学院大学)
7章 看取りの社会学   三井さよ(法政大学)
8章 男性介護者の増大と家族リスクの深まり――家族主義福祉レジームのパラドクス   春日キスヨ(元松山大学)
III 家族ケアと専門職ケア
9章 「親密性の変容」再考   野口裕二(東京学芸大学)
10章 ケアラーという存在   木下康仁(立教大学)
11章 インフォーマル・ケアの質を測る   稲葉昭英(首都大学東京)
12章 社会サービスとしてのケア   天田城介(立命館大学)

●書籍検索

●ジャンル

シリーズ・講座

●最新情報