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東アジア海域に漕ぎだす【全6巻】

[シリーズ著者]

小島 毅 監修

シリーズの特色
■「国家」や「領土」を基軸とする歴史認識を越えて,人・モノ・情報が移動・交流する場としての「海域」から東アジアを捉えなおす.
■近代以前の国交なき時代に展開した,日中・日韓の往来の歴史を知る.
■歴史学を中心とした人文学のみならず,建築学,植物学,環境といった自然科学の視点もまじえ,総合的に交流の諸相を明らかにする.
■書画,書物,仏教など「日本伝統文化」の起源を,多彩で豊富な交流のなかに探る.
■多分野横断的な共同研究の成果を,やさしい叙述と多数の図版でわかりやすく提示.


1 海から見た歴史  羽田 正 編

これまで「国」単位の歴史をもとに理解されてきた東アジア史を,「海域」概念を用いて描きなおし,新たな歴史解釈の可能性を示す.「東アジア海域」という地理的には同じ位置に視点をおきつつ,時間軸のうえでは異なった3つの時期に注目することによって描きだされるそれぞれ100年間の歴史像は,時系列史の相対化と歴史のモデル化という2つの点において革新的である.

2 文化都市 寧波  早坂俊廣 編

上海の南に位置する港町,寧波.群を抜いて多くの科挙合格者を輩出した土壌を背景として宋代には文化的にも経済的にも大いに繁栄し,日本・韓国への文化・情報発信の結節点となっていく.また多種多様な「記録」が作成・保存され,「記憶」が伝承されてきた点でも特徴的である.記録はなぜ,どのように遺されたのか.書物,記憶,場をテーマに,海域交流の姿を「記録文化」という視点から明らかにする.

3 くらしがつなぐ寧波と日本  高津 孝 編

人びとが日常的に暮らしている世界とその文化は,その自然環境によって,国という単位でははかれない独自で多様な特色をもつ.「日本文化」の形成に大きな影響を与えた寧波の文化は,いかなる環境のなかではぐくまれたのか.多彩なフィールドワークによって,寧波の自然環境と人間社会とのかかわり,そして日本の環境との類似性を示しながら,海を介してつながる生活世界を豊富な具体例で描く.

4 東アジアのなかの五山文化  島尾 新 編

禅宗の世界のトップにあった,寧波・杭州の五つの寺院,「五山」.日本でも鎌倉と京都の寺院を五山に指定し,これらを頂点とする宗教的・文化的なシステムを導入した.中世の日本において五山は新しい文化センターとなり,ここから寧波の思想・生活文化は社会のさまざまな領域へと浸透し,独自に発展していく.東アジアをまたいでつながる五山文化の世界性に注目しながら,「日本文化」の形成過程を明らかにする.

5 訓読から見なおす東アジア  中村春作 編

黄河流域で発明された漢字とそれによって綴られる漢文は,二千年間にわたり東アジアにおける共通書記言語として機能し,宗教・文学から社会制度や世界認識にいたるあらゆる局面を司っていた.日本における「訓読」という技法,さらには日本以外の訓読的現象に着目して,東アジアを,漢文の受容と変容の過程から捉えなおす.

6 海がはぐくむ日本文化  静永 健 編

多様で具体的な素材をとりあげ,連ねていくことで,特定の事象やテーマをあつかう視点からは見えにくい全体像を浮かびあがらせる.東アジア海域交流のダイナミズムを,従来のような国家間交流ではなく地域間の交流として捉えなおす試みであり,寧波を出発し,平泉にいたる旅の行程から見えてくる日本伝統文化の形成過程は,海の広大さを想起させる.最後にシリーズ全体の総括をおく.



 

刊行にあたって

 日本にとって,中国や韓国との交流の歴史にはどんな意味があったのか?
 東アジアでの緊密な関係が,日常的な経済的・文化的な交流からますます期待される一方,そのためにはさらなる相互理解が差しせまった課題として眼前にある.そうしたよりよき関係の構築には,過去を振り返り,日本列島が中国大陸・朝鮮半島とともに織りなす海域世界がどのような歴史を歩み,その結果として今日の日本文化がいかにして形成されてきたかを知る必要があろう.このシリーズは,共同研究の成果にもとづいて,東アジアの海域交流の諸相とそれによる日本伝統文化の形成過程を提示するものである.
 遣唐使時代の交流は,教科書などを通じて広く認知され,従来から社会的な関心も強い.また,近代における“不幸な歴史”についても,歴史認識上の立場の相違こそあれ,多くの書物で一般向けに語られている.ところが,894年の遣唐使廃絶から1894年の日清開戦にいたる期間の日中・日韓の交流については,個別にいくつかの事象が思い浮かぶ程度というのが,多くの人にとっての実情であろう.
 本シリーズはこの一千年間を対象とし,ほとんど正式な国交がなかったにもかかわらず,多彩で豊富な交流の営みがおこなわれ,それらが日本で“伝統文化”と呼ばれているものを生みだすうえで決定的な役割を果たしたことを明らかにしていく.読者は既知の個別事象がいかに関連しあっていたかに,新鮮な驚きを覚えるであろう.
 全6巻を読み終えたとき,あなたの世界観はきっと変わっている.

監修 小島 毅        

 

推薦のことば

 「東アジア海域」に目線の基点をすえたとき,在来の各国単位の歴史には映らなかった映像が,新鮮かつトータルに見えてくる.日本列島から,中国沿岸から,東南アジアから,海域を渡った人々は具体的に何を発見し,誰と出会い,どんな文物に情熱を注ぎ,お互いに何に魅了されたのか.このシリーズは,東アジアを横つなぎする歴史知識を掘り起こす斬新・果敢なチャレンジである.

斯波義信(財団法人東洋文庫文庫長)        

 

 天気晴朗ならず,波いよいよ高し.異常気象による台風の大型化に加え領土問題で東アジア海域は大荒れである.その昔,遣唐使の旅は命がけの冒険であったが,航海術の進歩により,近世ともなれば海の旅も安全となる.そうなれば彼我の交流は増え,紛争も起こるが理解も進むはずが,海禁,鎖国と海を排除した「すみわけ」により,交流は逆に減った.今やそのつけが回って来たというべきか.解決策は地域から海域への発想転換にあろう.図らずもか,予想どおりかは知らないが,本シリーズの主題は目下喫緊の課題となった.学界,読書界はもとより,政治家諸氏にも是非読んでもらいたい.

金 文京(京都大学人文科学研究所教授)        

 


各巻詳細

1 海から見た歴史

プロローグ 海から見た歴史へのいざない
第I部 ひらかれた海 一二五〇―一三五〇年
一 時代の構図
二 海域交流の舞台背景と担い手たち
三 海商がおしひろげる海域交流――開放性の拡大
四 モンゴルの衝撃がもたらしたもの――開放のなかの閉鎖性
五 モノと技術の往来――すそ野の拡大と双方向性
第II部 せめぎあう海 一五〇〇―一六〇〇年
一 時代の構図
二 大倭寇時代――東アジア貿易秩序の変動
三 海商たちの時代
四 多様で混沌とした文化の展開
第III部 すみわける海 一七〇〇―一八〇〇年
一 時代の構図
二 海商たちと「近世国家」の“すみわけ”
三 交流と居留の圧縮と集中
四 海をまたぐモノと情報

【執筆者】
伊藤幸司,榎本渉,岡美穂子,岡元司,岡本弘道,小畑弘己,鹿毛敏夫,久芳崇,佐伯弘次,杉山清彦,高津孝,高橋忠彦,中島楽章,長森美信,野田麻美,橋本雄,蓮田隆志,羽田正,藤田明良,森平雅彦,向正樹,山内晋次,山崎岳,吉尾寛,四日市康博,米谷均,渡辺美季


2 文化都市 寧波

プロローグ 「文化都市 寧波」という視点
第I部 書物がつくる文化
一 天一閣蔵書楼とは何か
二 寧波の郷土史料『四明叢書』
三 語り継がれる記憶と寧波の地方志
四 思想家の言葉はどのようにして書籍に定着したのか――王陽明を一例として
コラム 「中国のルソー」を育んだもの
第II部 知識人たちの記憶と記録
一 王朝をこえて――宋元交代期の碑刻の書き手たち
二 豊氏一族と重層する記憶
三 思想の記録/記録の思想――寧波の名族・万氏について
四 寧波という磁場と文学者たち
コラム 江戸文化と朱舜水
第III部 場と物が織りなす記憶と記録
一 石に刻まれた処方箋
二 墓地をめぐる記憶と風水文化
  三 文化を支えるお金のはなし
コラム 東銭湖墓群と史氏
コラム 寧波の英雄・張煌言

【執筆者】
伊原弘,大田由紀夫,倉員正江,近藤一成,佐藤浩一,須江隆,高津孝,陳捷,鶴成久章,TJヒンリクス,永冨青地,早坂俊廣,平田茂樹,水口拓寿,森田憲司


3 くらしがつなぐ寧波と日本

プロローグ くらしがつなぐ寧波と日本
第I部 「水の世界」寧波の環境と社会
一 「水郷」寧波の生活
二 「港町」寧波の人々
コラム 寧波名物タンユエン
第II部 歩いて実感する浙江の生活文化
一 お茶のふるさとを求めて――民族植物学者浙江の旅
二 浙江東部の伝統演劇を求めて
三 浙江地域の「船上生活者」
第III部 いざ,寧波から海を越えて
一 海を渡る石
二 海を越える神々
三 近代寧波の商人と日中貿易
コラム 越窯

【執筆者】
上田望,大木公彦,太田出,岡元司,佐藤仁史,曽田三郎,高津孝,高村雅彦,二階堂善弘,橋口亘,早坂俊廣,藤田明良,本田治,松浦章,松田吉郎,水上和則,南埜猛,山内晋次,山川均,山口聰


4 東アジアのなかの五山文化

プロローグ 五山でなにが起こったか
第I部 東アジアをまたぐ禅宗世界
一 東アジアをまたぐ禅宗世界
二 日本の五山禅宗と中世仏教
三 海域ネットワークのなかの五山
四 地方勢力の成長と五山
第II部 受容と創造――日本伝統文化の源流
一 五山版から古活字版へ――出版と学問の飛躍
二 漢詩文を読むことと書くこと
三 詩書画と唐物――新たな中国風
四 禅院の風景――建築・庭園研究の視点から
五 栄西から利休へ――茶文化研究から見た五山文化
六 五山のゆくえ――思想史研究の視点から

【執筆者】
伊藤幸司,斎藤夏来,島尾新,鈴木智大,住吉朋彦,高橋忠彦,中村春作,野村俊一,原田正俊,韓志晩,藤井恵介,堀川貴司


5 訓読から見なおす東アジア

プロローグ 訓読から見なおす東アジア
第I部 訓読をどう論じるか
一 文化の翻訳/二 クレオール/三 雅言/四 辺境の国学/五 他地域における「訓読」 ①朝鮮半島 ② ベトナム
第II部 多様な漢文世界
一 多言語世界の中国/二 朝鮮時代の多層的漢文世界/三 長崎唐通事の言語世界/四 琉球の漢文/五 素読の教育文化/六 国学者が訓んだ『論語』
第III部 訓読は日本語をつくる
一 近世日本の訓読法 ①一斎点の登場まで ②敬語をどう表現したか/二 白話小説の受容と訓読 ①白話小説はどう読まれたか ② 近代日本における翻訳/三 近代日本の成立と訓読 ①明治前期建白書の文体 ②明治・大正期の教科書 ③国語施策と「訓読」
第IV部 訓読論から展望する
一 荻生徂徠の「訓読否定論」/二 学校教科書のなかから/三 詩吟と唱詩の言語/四 近代日本の中国学と訓読 ①漢文直読論の運命 ②漢文を訓読で読む/五 中国古典と近代日本

【執筆者】
中村春作,高津 孝,齋藤希史,澤井啓一,伊藤英人,岩月純一,渡辺純成,崔在穆,木津祐子,辻本雅史,田尻祐一郎,齋藤文俊,前田 勉,川島優子,勝山 稔,木村 淳,山東 功,小島 毅,加藤 徹,陶徳民,市來津由彦


6 海がはぐくむ日本文化

第I部 寧波からの出航
一 海路をはさんで向かいあう海と川の港町
二 中国古伝承のなかの海
三 一五世紀寧波が見た東アジア絵画
四 一六―一七世紀の中国沿海の海禁
五 満洲人の北京
六 イギリスから眺めたアジアの都市
第II部 玄界灘の潮風
一 戦国大名と海・船・交易
二 両浙地域の仏教と日本
三 建盞から天目へ
四 長崎唐通事と読書
五 沖縄マーラン船を科学する
第III部 吾妻路の面影
一 日本に庶民の学校ができるまで
二 朱舜水の語った中国の科挙制度
三 江戸時代和文の生みの親
四 尾張徳川公の愉しみ
五 その物語は海域を越えて
第IV部 雪降る金色堂
一 発掘された古代の書物
二 哭き祭の音風景
三 平泉と東アジア海域交流
海域の“みちのく”、そしてその先へ

【執筆者】
小島毅(監修),静永健(編者),板倉聖哲,伊原弘,榎本渉,鹿毛敏夫,勝山稔,川邉寛,木村直弘,塩卓悟,妹尾達彦,副島一郎,高西成介,高橋忠彦,高橋久子,鶴成久章,寺尾裕,難波征男,誉田慶信,増山豊,三木聰,森中美樹,八木光,藪敏裕,山本英史,渡辺純成

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