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公共する人間【全5巻】

1 伊藤仁斎:天下公共の道を講究した文人学者  片岡 龍・金 泰昌 編

「道なるものは天下の公共,人心の同じく然るところ」――17世紀の京都,「武」に偏した時代に抗し,一市井人として『論語』と『孟子』というアジアの古典に立ち向かった仁斎.「公共的な対話」の場を重視した仁斎は,人間社会を,そして人や自然の「生命」のつながりをどう見ていたのか.

2 石田梅岩:公共商道の志を実践した町人教育者  片岡 龍・金 泰昌 編

「士農工商は天下を治めるたすけとなる」――江戸期,都市化・経済化の流動的な波の中で,人々の生のつながりの公共的意義を説いた梅岩.広範な影響を及ぼしたその心学は,人々に希望を与え,世界のすべての存在が共に幸福になることをめざす創造的・運動的な営みであった.

3 横井小楠:公共の政を首唱した開国の志士  平石直昭・金 泰昌 編

「道を明らかにして世界の世話焼きにならねばならぬ」――幕末期に世界における日本の位置を見定め,「公共の政」としての近代日本の行方を指し示した小楠.その公共する思想を焦点とし,関連する人物を多角的に論じ,小楠とその時代について新しい知見を示す.

4 田中正造:生涯を公共に献げた行動する思想人  小松裕・金 泰昌 編

「真の文明は山を荒さず,川を荒さず,村を破らず,人を殺さざるべし」――今に生きる田中正造について,環境運動,取り巻く人物,思想的可能性の三つの視角からアプローチし,明治の足尾銅山鉱毒問題から現代の水俣病まで射程に入れて,公共する「いのちの思想人」を描き出す.

5 新井奥邃:公快共楽の栄郷を志向した越境者  コール ダニエル・金 泰昌 編

「人たる者は皆神聖にして犯すべからず」――幕末を生き,明治・大正を駆け抜けた稀有な思索の人・奥邃.儒教とキリスト教を思想的背景とし,田中正造との精神的な深い交友をもった,知られざる「いのちの思想家」の事跡と言行と思想に対し,公共哲学の観点から新たな光をあてる.



出版=公共するにあたって

 東京大学出版会は,21世紀初頭から,公共哲学に関連する企画を積極的に世に問うてきた.シリーズとしてだけでも,「公共哲学」全20巻,「物語り論」全3巻,「公共哲学叢書」既刊9巻がある.ほかに単行本も上梓している.
 2009年,「公共哲学」第1期10巻の中国語版が人民出版社から刊行された.韓国においても,翻訳刊行が計画されている.東アジアにおける公共哲学をめぐるこのような状況を受けて,その新しい段階を切り開くべく,ここにシリーズ「公共する人間」を刊行する.
 シリーズ「公共する人間」は,近世・近代の日本で生まれ生きた5人を取り上げ,その人物と時代とにさまざまな角度から新たな光をあてなおして,公共哲学をさらに深め広げる試みである.日本に焦点をすえた所以は,公共哲学のこれまでの傾向は,西欧産の思想と人物はとりあげられるが,東アジアの思想と人物はそれほど重視されないという傾向があることにかんがみ,このアンバランスを是正し,東アジアの優れた遺産の継承と再生をめざす意図に基づく.その手がかりのはじめとしての日本の5人である.
 それぞれの巻の発題者および討論者は,可能な限り,国・地域・文化的背景の異なる人々を組みあわせる意図をもって依頼している.それは,今後わたしたちが生きる地球の未来は,国・地域・文化的背景の異なる人々の対話と共働によって開新される公共世界に可能性を見出すことができると確信するからである.
 本シリーズとこれに続く関連企画が東アジアから発信する公共哲学のさきがけとなることを期待し,異質多様な他者とともに生きる人々の思考と生活と生命の糧となることを願う.

 2010年9月
                         編者一同

各巻詳細

1 伊藤仁斎:天下公共の道を講究した文人学者

序:武威の風土のなかで
1.「武国」に抵抗する江戸思想――伊藤仁斎の「文」と「王道」言説をめぐって(藍弘岳/台湾・交通大学)
I 「理」の批判がねらったもの――気質・人倫・生命
2.伊藤仁斎と公共哲学――韓国儒教との比較を中心に(朴倍暎/東京大学)
3.江戸期・朱子学批判の現代的意義を考える――山鹿素行に即して(立花均/久留米工業大学)
III 仁斎のめざしたつながり方――公共・ケア・赦し
4.伊藤仁斎における「恕」の可能性――〈公共〉野視点から(田畑真美/富山大学)
5.伊藤仁斎の「天下公共の道」における公共的な生と倫理(高煕卓/韓国・延世大学)
III 仁斎が構築した公共空間――テクスト・哲学・環境
6.伊藤仁斎の学問観――<公共>への参与と鑑識(片岡龍/東北大学)
7.伊藤仁斎の言語学と世界論――宇宙と天道の観念を中心に(ジョン・タッカー/米国・イーストカロライナ大学)
8.伊藤仁斎を公共哲学する(金泰昌/公共哲学共働研究所長)
補論
9.「武士的公共性」の可能性――山鹿素行・荻生徂徠・乳井貢(小島康敬/国際基督教大学)


2 石田梅岩:公共商道の志を実践した町人教育者

序:21世紀アジアで再発見された商人道徳
1.韓・中・日を媒介する商人道――東アジアから見る石田梅岩の「商人道」思想(林泰弘/韓国・成均館大学)
I 都市化・経済化する不可測な世界の中で
2.石田梅岩の普遍主義――閉ざされた国家的秩序の中から(川田耕/京都学園大学)
3.経済社会化の時代における公共性探求の様相――石田梅岩の場合(高熙卓/韓国・延世大学)
4.石田梅岩の学のダイナミズム――海保青陵との比較から(徳盛誠/東京大学)
II 内向する自己を越え「他者」と通じる
5.石田梅岩の「心を知る」とは――実存的主体として生を共に活きる(喜田勲/上智大学)
6.日中通観で見た儒教の庶民化――石田梅岩と王心斎の公共領域の変動(バリー・ステベン/台湾・台湾大学)
7.石田梅岩の思想の公共性と言語観(ジョン・タッカー/米国・イーストカロライナ大学)
III 共に幸福になるための道徳的主体のあり方
8.石田梅岩の思想――共媒,共働,共福(韓立紅/南開大学)
9.町人の学問からみる公共哲学―――石田梅岩の「商人道」を中心に(于臣/横浜国立大学)
10.石田梅岩から考える「公共する」実践(片岡龍/東北大学)


3 横井小楠:公共の政を首唱した開国の志士

1.小楠の思想形成に関わる伝記的検討(松浦玲/文筆業)
2.横井小楠の「大学講義」――儒学理解の特質(田尻祐一郎/東海大学)
3.近世儒学における「公共」概念の歴史的検討(平石直昭/帝京大学)
4.小楠の経済認識と経済思想(川口浩/早稲田大学)
5.幕末小楠の世界認識と課題認識(源了圓/東北大学名誉教授)
6.藤田東湖における道の公共性――「弘道館記述義」私解(小島毅/東京大学)
7.肥後実学豪農党の教育事業――小楠思想の継承と展開(沖田行司/同志社大学)
8.「小楠問題」を語りなおす――「道義」・「道義国家」言説の系譜学(姜海守/国際基督教大学)
新資料 横井小楠「公私之説」――翻字と考証(平石直昭/帝京大学)


4 田中正造:生涯を公共に献げた行動する思想人

1.いま,なぜ田中正造か(小松裕/熊本大学)
2.足尾鉱毒問題と民衆環境運動(菅井益郎/國學院大學)
3.田中正造の利根川治水論(大熊孝/新潟大学名誉教授)
4.田中正造と石川三四郎(後藤彰信/宮城県農業高等学校教諭)
5.田中正造と木下尚江(清水靖久/九州大学)
6.新井奥邃と田中正造――その交友と「謙」の思想(コール ダニエル/福岡女学院大学)
7.田中正造と伝統思想(布川清司/神戸大学名誉教授)
8.田中正造の思想的可能性(花崎皋平/著述業)
9.民衆史のなかの田中正造(牧原憲夫/元東京経済大学教員)
10.石牟礼道子における文学と政治(岩岡中正/熊本大学)
11.水俣学と谷中学(原田正純/医師,元熊本学園大学教授)
資料 田中正造における「公共」の用例(小松裕/熊本大学) 田中正造略年表


5 新井奥邃:公快共楽の栄郷を志向した越境者

1.今,わたしに見える新井奥邃の魅力(コール ダニエル/福岡女学院大学)
2.新井奥邃と田中正造(小松裕/熊本大学)
3.『新井奥邃著作集』と出版人のこころざし(三浦衛/春風社代表取締役)
4.新井奥邃とスウェーデンボルグ(高橋和夫/文化女子大学名誉教授)
5.近代日本キリスト教思想と新井奥邃(鈴木範久/立教大学名誉教授)
6.新井奥邃を公共哲学する(金泰昌/公共哲学共働研究所長)
7.新井奥邃と野の教育(播本秀史/明治学院大学)
8.新井奥邃における「二而一,一而二」の発想―現代への問いかけ(阿部仲麻呂/上智大学)
新井奥邃語録抄
年表でみる新井奥邃の公共世界
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