臨床心理学をまなぶ【全7巻】

シリーズ著者
下山 晴彦

1 これからの臨床心理学  下山晴彦

いざ、臨床心理学をまなぶ航海へ! 「臨床心理学」とは何か、ストーリー仕立てで、わかりやすく解説。何を目指してまなぶのか、そのためにはどのような選択をすべきかを確認しながら、学習の正しい道筋をガイドする。

 2 実践の基本  下山晴彦

コミュニケーション技能を臨床心理活動の基本と位置づけ、その訓練方法や実習プログラムを具体的に示す。特に「生物―心理―社会」モデルにおいて臨床心理士が担うべき役割との関連で解説する。

未刊 3 アセスメントから介入へ  松見淳子

アセスメントと介入を連携した専門活動として扱い、問題を明確化し、そのメカニズムについて作業仮説を立て、介入計画を作成するまでの実際を示す。エビデンスベイストな介入方法を選択するための基礎を養う。

4 統合的介入法  平木典子

実践においては必然的に、アセスメントをもとに、背景や周囲の人間関係もトータルに見たうえで、クライエントその人に合わせた介入法を考えることが必要になる。現在、主流となっている統合的アプローチを身につける。

5 コミュニティ・アプローチ  高畠克子

実践の場は、学校、行政機関、医療機関などコミュニティの中であることが多い。何が要請されているのかを現場で把握し、他の専門職、当事者やボランティアと協働して介入法をデザインする技法を、事例も含めて解説する。

6 質的研究法  能智正博

エピソード(事例)を記述したり、語り(ナラティヴ)を分析したりする質的研究法は、よりよい実践を促進する手がかりにもなる。インタビュー、(参与)観察を中心に、実践に根ざす質的研究の意義や実際を解説する。

7 量的研究法  南風原朝和

臨床心理学においても、効果研究など客観的な評価が求められてきている。どういう時にどの方法が必要になるのか、臨床心理学における量的研究法の代表的なタイプを解説し、基本的な原理や考え方を紹介する。

 

 

刊行にあたって

 

 

 皆さんは、臨床心理学をカウンセリングや心理療法と同一のものと思っていませんか。残念ながら、それは、既に時代遅れの考え方です。
 近年、世界の臨床心理学は、一貫した学問体系を備えた実践科学として、医師をはじめとする他の専門職と協働して心理援助の専門活動を展開しています。医療、福祉、産業、教育、司法・矯正といった多様な領域において、研究によって有効性が実証的に認められた方法を用いて、メンタルヘルスの問題解決に取り組んでいます。これは、エビデンスベイスト・アプローチと呼ばれ、従来の臨床心理学が対処できなかった問題に対しても有効な介入法を開発しており、社会的ニーズもますます高まっています。また、ポストモダンと呼ばれる、高度の情報化が進んだ現代社会に対応して、一人ひとりの利用者の語り(ナラティヴ)を尊重することを通して人々の生活を支援するサポートネットワークを、他職種と協働してコミュニティに形成していく実践活動も展開しています。
 日本の臨床心理学は長い間、このような世界の動きから取り残され、古いタイプのカウンセリングや心理療法の学派の集合体に甘んじていました。しかし、それでは社会的ニーズに応えられないとの反省も生まれつつあり、最近になってようやく新たな段階に向けての転換期を迎えるようになりました。
 本シリーズは、新たな段階の臨床心理学を先取りし、その実践と研究を体系的に、しかもバランスよくまなべるように構成されています。第1巻では臨床心理学の全体像を概説し、第2巻で実践の基本を押さえた上で、第3~5巻では介入までの流れと主要な介入方法について、第6・7巻では実証性を確認するための質的・量的研究法について、具体的に解説します。最新の情報も満載されているので、学生さんだけでなく、すでに現場で働いている心理職の皆さんにも、ぜひ読んでいただきたいと思っています。

 2010年2月
                         シリーズ編者 下山晴彦

各巻詳細

1 これからの臨床心理学

はじめに
序章
第I部 臨床心理学を知る
 第1章 臨床心理学のガイドマップ
 第2章 カウンセリング、心理療法、臨床心理学
第II部 進化する臨床心理学
 第3章 臨床心理学の近代化
 第4章 ポストモダンの臨床心理学
 第5章 進化する臨床心理学のまなび方
第III部 臨床心理学の基本構造
 第6章 実践活動
 第7章 研究活動
 第8章 専門活動
第IV部 欧米文化と臨床心理学の発展
 第9章 臨床心理学の来し方
 第10章 臨床心理学の行く末
第V部 日本における臨床心理学の発展
 第11章 物語:日本の臨床心理学(前編)
 第12章 物語:日本の臨床心理学(後編)
 終章

2 実践の基

第I部 実践としての臨床心理学
第II部 臨床心理活動の技能と実習
第III部 臨床心理面接の実習方法 他

3 アセスメントから介入へ

第I部 臨床心理のアセスメント
第II部 アセスメントから臨床実践へ
第III部 アセスメントと介入の実際 他

4 統合的介入法

第I部 心理療法の統合とは
第II部 家族療法のモデルと実際
第III部 統合的アプローチのトレーニング 他

5 コミュニティ・アプローチ

第I部 コミュニティ・アプローチとは何か
第II部 研究法
第III部 コミュニティ・アプローチの臨床実践 他

6 質的研究法

第I部 質的研究を始める前に
第II部 研究計画とデータ収集
第III部 データの分析と結果の提示 他

7 量的研究法

第I部 量的研究を始めるために
第II部 研究立案のためのガイド
第III部 データの分析と解釈 他