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日本の哺乳類学【全3巻】

[シリーズ著者]

大泰司紀之 監修

三浦慎悟 監修

第1巻 小型哺乳類   本川雅治(京都大学総合博物館助教) 編

第2巻 中大型哺乳類・霊長類   高槻成紀(麻布大学教授)・山極寿一(京都大学教授)編

第3巻 水生哺乳類   加藤秀弘(東京海洋大学教授)編



刊行にあたって

 海面に現れ巨大な水しぶきをあげてブリーチングするザトウクジラ,夜空を翔け超音波で昆虫を狩るキクガシラコウモリ,サバンナを埋め尽くすヌーの群れと疾走するチーター,どれもが馴染み深い光景だ.哺乳類は,温血性の獲得,多様な形態,高い適応能力,多彩な生活史,独自の繁殖様式によって,熱帯から極域,海洋から高山にいたるあらゆる地域と環境に適応放散している.現在,地球上には約5400種の哺乳類が生息しているが,その25%が,IUCN(国際自然保護連合)レッドリストの「危急種」以上にランクされ,絶滅の瀬戸際にある.
 私たちが取り組むべき哺乳類の保全の課題とは,保護活動を行い,保全計画を作成し,再生プログラムを実行するだけにとどまらない.哺乳類の魅力と面白さを存分に引き出し,人々へと伝える努力もまた不可欠である.巧妙で興味深い形態や生物学的特性を,そのメカニズムや機能とともに明らかにする.多様で複雑な生態や行動を,生息環境や進化とのかかわりで解明する.すなわち,哺乳類学を豊かに発展させること――そこに,哺乳類とその生息環境を保全する意義と重要性の源泉がある.
 「日本の哺乳類学[全3巻]」は,IMC9(第9回国際哺乳類学会議)の記念事業の一環として,日本哺乳類学会の支援を受けて刊行される.合計約40編の総説をまとめた本シリーズは,日本の哺乳類研究の現時点における1つの到達点を示すものである.陸域や水域に生息する日本の哺乳類の形態や遺伝,生態や行動に関する研究は,それ自体が魅力と面白さに満ち溢れている.存分に味わっていただきたい.と同時に,その研究や知識は保全のための力強い武器となるにちがいない.「日本の哺乳類学[全3巻]」は,これからの哺乳類研究を担う若い研究者,哺乳類研究を志す学生,さらには他分野の研究者や行政担当者にとって,きわめて意義深いものになるだろう.
日本哺乳類学会前会長 大泰司紀之  日本哺乳類学会会長  三浦慎悟



各巻詳細

第1巻 小型哺乳類

序章 日本の小型哺乳類―動物地理学の視点から   本川雅治(京都大学)
[第1部 進化]
第1章 多様性と系統進化―モグラ類   篠原明男(宮崎大学)
第2章 孤立個体群における種分化―ヤチネズミ類   岩佐真宏(日本大学)
第3章 系統地理学と遺伝構造―トガリネズミ類   大舘智氏(北海道大学)
第4章 咀嚼筋進化の機能的意義―齧歯類   佐藤和彦(朝日大学)
[第2部 生活史と生態]
第5章 飛翔の生活史と生態―オオコウモリ   船越公威(鹿児島国際大学)
第6章 温帯産洞窟性コウモリの生活史―キクガシラコウモリ   佐野 明(三重県科学技術振興センター)
第7章 小さなK戦略者の生態と生活史―ヤマネ   芝田史仁(和歌山信愛女子短期大学)
第8章 森林に依存する生活史―ニホンリス   田村典子(森林総合研究所)
[第3部 相互作用]
第9章 種間関係―アカネズミとヒメネズミ   関島恒夫(新潟大学)
第10章 野ネズミと堅果との関係―アカネズミのタンニン防御システム   島田卓哉(森林総合研究所)


第2巻 中大型哺乳類・霊長類

序章1 日本の中大型哺乳類―研究の足跡をたどる   高槻成紀(麻布大学)
序章2 日本の霊長類―ニホンザル研究の歴史と展望   山極寿一(京都大学)
[第I部 種と生態]
第1章 身体成長と加齢―ニホンザル   濱田謙(京都大学)
第2章 生活史と生態―ニホンアナグマ   金子弥生(ヤマザキ動物看護短期大学)
第3章 繁殖にかかわる生理と行動―ニホンザル   藤田志歩(山口大学)
第4章 個体史と繁殖成功―ニホンジカ   南正人(ピッキオ)
第5章 病気と生態―キタキツネ   浦口宏二(北海道立衛生研究所)
第6章 社会構造と密度変動―ニホンカモシカ   落合啓二(千葉県立中央博物館)
第7章 社会構造の系統的安定性―ニホンザルの順位と性から考える   鈴木滋(龍谷大学)
[第II部 適応と種分化]
第8章 遺伝的多様性と地理的分化―ニホンザル   川本芳(京都大学)
第9章 多様な植生帯への適応―ニホンザル   半谷吾郎(京都大学)
第10章 遺伝学と生態学―ニホンジカ   岡田あゆみ(北里大学)
[第III部 保全と生態]
第11章 絶滅危惧種の保全―イリオモテヤマネコ   岡村麻生(環境省西表野生生物保護センター)
第12章 里山の動物の生態―ホンドタヌキ   佐伯緑(中央農業総合研究センター)
第13章 個体群と管理―エゾヒグマ   間野勉(北海道環境科学研究センター)
第14章 外来種問題―アライグマを中心に   池田透(北海道大学)
第15章 農作物被害対策―イノシシの被害管理   江口祐輔(麻布大学)
第16章 里山保全と被害管理―ニホンザル   室山泰之(兵庫県立大学)


第3巻 水生哺乳類

序章 日本の水生哺乳類―鯨類・鰭脚類・海牛類   加藤秀弘(東京海洋大学)
[進化と生態]
第1章 起源と進化―最新技術で語る鯨類研究   岡田典弘(東京工業大学)
第2章 日本の沿岸性鯨類―沿岸に根付くニタリクジラ   木白俊哉(遠洋水産研究所)
第3章 世界遺産知床半島の海獣類―アザラシ類の実態   小林万里(東京農業大学)
[形態と生理]
第4章 形態変異―イシイルカ   天野雅男(帝京科学大学)
第5章 人工繁殖の現状と将来―飼育下の小型鯨類   吉岡基(三重大学)
第6章 なにを見ているか―鯨類の光覚能力   村山司(東海大学)
[資源と保全]
第7章 資源の動向を探る―鯨類目視調査   宮下富夫(遠洋水産研究所)
第8章 海洋生態系を探る―鯨類捕獲調査が目指すもの   藤瀬良弘(日本鯨類研究所)
第9章 絶滅危惧種の保全―沖縄のジュゴン   明田佳奈(自然環境研究センター)
第10章 漁業被害問題―トドの回遊と消長   服部薫(北海道大学)

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