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シリーズ物語り論【全3巻】

[シリーズ著者]

宮本久雄

金 泰昌

第1巻 他者との出会い

病や科学や宗教において《他者》がいかに描かれ語られてきたのか,さらにアイヌや沖縄という《他者》に焦点を当てることによって照射される自他関係とはどのようなものか.そこから公共世界の共創に向けて物語り論の可能性・パースペクティヴを開示する.

第2巻 原初のことば

初めにこと(言・事)ありき.――他者の物語りはいかにして創生されたのか.西洋古典古代世界から旧約新約の聖書世界,そして初期近代世界,さらに近代日本に至るさまざまなパラダイム的物語を取り上げて,そこにはたらく物語り的想像力を汲み取ることによって公共世界を探索する.

第3巻 彼方からの声

歴史の闇に葬られたり,心の故郷を喪った他者に関わる物語りを発掘し,そこから聴き取れる呼びかけを「彼方からの声」として受けとめる.そこから物語る行為を通して,民族・文化・心の自閉の壁を超える公共世界の開けを待望する.



シリーズ刊行にあたって


自己と他者と世界の物語りを通して公共世界を開く

 「シリーズ物語り論」全3巻は,公共哲学京都フォーラム(京都フォーラム・公共哲学共働研究所主催)で開かれてきた会議において物語論として活発に行われてきた発題-質疑-討論-発展協議の成果を踏まえて,新たに公共する視座と世界を開示しようとするものである.その目的は,「自己と他者と世界の物語りの創生」を通して,グローナカル(グローバル×ナショナル×ローカル)な公共世界を切り開こうとすることにある.
 「物語り」という表現は,動詞的な言語行為「物語る」およびその行為の産物としての「物語」に準じたものであり,「物語る‐物語り‐物語」の地平に位置する.そこで本シリーズの「物語り」は,「物語る」と「物語」との狭間,あわいにあって,「物語る」と「物語」とを横断的に媒介することを目指す.すなわち,その媒介を通して,新たな「自己と他者と世界の交響的物語り」としての公共世界構築の契機たろうとする.
 以上のような動機や目的をかかえながらも,日本における他者不在もしくは他者認識の未成熟という物語り的状況判断に基づいて,他者の物語りに重点を置く立場から多様な対話を展開する.第1巻では,総論的議論を含み他者の物語り誕生のパースペクティヴを示し,第2巻では,物語りの原初的パラダイムとして古典古代から現代に至るまで働き続けてきた他者の物語りを考究し,第3巻では,辺境の,見棄てられ沈黙の闇に沈んだ他者に関わる小さな物語りをとり上げ,それらの小さな物語を彼方からの声として聞き,その声を通して凝集するエネルギーを,新たな物語り誕生の将来的エネルギーを,眼差し,体現し,世に放ち問わんとする.
 そして, それらすべてが他者に関わる創造的物語りの誕生・開花・横溢・散種,にまで満ちるように.
 放てば満てり.

                               宮本久雄・金 泰昌

各巻詳細

第1巻 他者との出会い

 はじめに──落語(はなし)・他者創生の機微 宮本久雄(東京大学)
 発題I 物語り論の可能性 野家啓一(東北大学)
 発題II 病いが語る生の姿 森岡正芳(奈良女子大学)
 発題III 記述すること・語ること 村上陽一郎(国際基督教大学)
 発題IV キリスト教美術における俗と聖との境界線の曖昧さ──古代末期の教会堂モザイク壁画を諸事例として 名取四郎(立教大学名誉教授)
 総合討論I コーディネーター: 金泰昌(公共哲学共働研究所)
 発題V 『あいぬ』物語の躍動 藤井貞和(立正大学)
 発題VI 私の詩・表現と琉球弧の文化 高良勉(沖縄県史料編集室)
 総合討論II コーディネーター: 金泰昌
 発題VII 他者とことば──根源への回帰 岩田靖夫(仙台白百合女子大学)
 発展協議 コーディネーター: 金泰昌
 特論I 苦難と他者の物語地平――「ヨブ記」の生成・転法的物語論的解釈から 宮本久雄
 特論II ベートーヴェン・その愛と運命のロンド 丘山万里子(日本大学)
 特論III 羽を交わす蝶たち――李良枝の物語における異邦人感覚が向かうところ 郭基煥(愛知大学)
 特論IV 小さき物語の群れから 小菅信子(山梨学院大学)
 おわりに 金泰昌

第2巻 原初のことば

 はじめに 宮本久雄(東京大学)
 発題I〈クセニア〉と〈ノストス〉の叙事詩『オデュッセイア』 川島重成(大妻女子大学)
 発題II「アブラハム物語」の現代的地平──自同性の超克・脱在(ハーヤー)と自他論の物語へ 宮本久雄
 発題III 喪のための場 あるいは 物語への抵抗──教父ニュッサのグレゴリオス著『モーセの生涯』を中心に 柳澤田実(日本学術振興会・南山大学)
 総合討論I コーディネーター: 金泰昌(公共哲学共働研究所)
 発題IV 物語論から見た黙示文学 大貫隆(東京大学)
 発題V 「ユートピア論」再考――エンゲルス、モア、カンパネッラ 山脇直司(東京大学)
 発題VI ダンテ『神曲』の物語 村松真理子(東京大学)
 総合討論II コーディネーター: 金泰昌
 発題VII ヨブ記の四つのアイロニー 竹内裕(熊本大学)
 発題VIII 「悪人」の物語──南北朝正閏問題と足利尊氏「逆臣」論の帰趨 中村生雄(学習院大学)
 発題IX 物語としての科学――"Science as a Story-Telling" 小柳義夫(工学院大学)
 発展協議 コーディネーター: 金泰昌
 おわりに 金泰昌

第3巻 彼方からの声

 はじめに 宮本久雄(東京大学)
 自己論から他者論へ  坂部恵先生(東京大学名誉教授)
 発題I 「イアーゴーの庭」──物語と世俗的時空の産出 高田康成(東京大学)
 発題II 『ドン・キホーテ』の語り手たち 斎藤 文子(東京大学)
 発題III 復生の文学──ハンセン病療養所の文藝作品を手引きとして 田中裕(上智大学)
 発題IV 「もう一つのこの世」に向かって──石牟礼文学におけるポロシオ(隣人)の玄郷と近代 宮本久雄
 総合討論I コーディネーター: 金泰昌(公共哲学共働研究所)
 発題V 英雄──知とその逸脱 三浦佑之(千葉大学)
 発題VI 物語享受の可能性──生命論的妄想論に依拠して 渡辺哲夫(いずみ病院)
 発題VII カンブリア紀の爆発──生物進化の物語 遠藤一佳(筑波大学)
 総合討論II コーディネーター: 金泰昌
 発題VIII 物語と儀礼―─李清俊の『白衣』に描かれる朝鮮戦争の記憶と和解への試み 具正謨(上智大学)
 発展協議 コーディネーター: 金泰昌
 特論I 語り直す力――星野道夫の物語に呼応して 吉田敦彦(大阪府立大学)
 特論II 女たちの場所から語るということ 北川東子(東京大学)
 おわりに 金泰昌

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