TOP > がん研究のいま【全4巻】

がん研究のいま【全4巻】

[シリーズ著者]

鶴尾 隆 編集代表

谷口維紹 編集代表

秋山 徹 編集幹事

宮園浩平 編集幹事

第1巻 発がんの分子機構と防御  笹月健彦・野田哲生 編

ゲノム維持機構の破綻や遺伝子群の変異と細胞のがん化との関連,分子や細胞の相互作用による免疫応答のしくみなど,発がんと発がん防御の分子細胞生物学的機構を解き明かす.

第2巻 がん細胞の生物学  高井義美・秋山 徹 編

正常細胞の基本的原理をひもときつつ,細胞増殖におけるがん遺伝子とがん抑制遺伝子産物の作用機構や,がん細胞と正常細胞および細胞外マトリックスとの密接な相互作用を,遺伝子・分子・細胞・組織のそれぞれのレベルで明らかにする.

第3巻 がんの診断と治療  中村祐輔・稲澤譲治 編

遺伝子解析で可能になった,個人やがんの「特性」を生かした診断・治療の最前線を紹介する.遺伝子,免疫,放射線,分子標的の各治療法から,テーラーメード抗がん剤開発,薬剤耐性の克服まで,がん治療の最新情報を満載.

第4巻 がんの疫学  田島和雄・古野純典 編

疫学的アプローチからみえてきた,個人や民族による遺伝子・分子の相違と発がん抵抗性,生活習慣と部位別がん罹患,ピロリ菌やウイルス感染による発がん機構などを中心に,がん予防にむけた方策を論じる.



刊行のことば

 1981年,がんは日本人の死亡原因の第1位を占め,現在では約3人に1人ががんで亡くなる.その要因として,平均寿命の延長にともなう高齢者人口の増大,感染性疾患による死亡率の減少,環境や生活習慣の変化,診断精度の向上などが考えられる.その対策としてのがん研究は,研究内容の生命科学における基礎的重要性と,そして疾病克服の必要性などの理由から,わが国において科学研究費により厚く支援されてきた.1984年度より1993年度までの10年にわたり,がん対策関係閣僚会議の下で,旧文部省,旧厚生省,旧科学技術庁の3省庁の共同事業として「対がん10ヵ年総合戦略」が推進された.1980年代初頭はヒトがん細胞におけるがん遺伝子の異常がつぎつぎに発見され,がん研究が遺伝子の時代に突入したときであり,「対がん10ヵ年総合戦略」では遺伝子レベルでの「がんの本態解明」を目指し研究が推進された.
 1994年度からも引き続いて3省庁の共同事業として「がん克服新10カ年戦略」が継続され,「がんの本態解明からがん克服へ」という戦略の目標達成に向けて研究が進められた.本シリーズは,この「新10カ年戦略」の後半5年間の,主に文部科学省関係の研究者が世界に向けて発信した研究成果と展望について,4巻にまとめたものである.文科省のがん研究組織が推進してきたがん研究の全体像と展望が明らかにできたものと思っている.
 この5年間を含めわが国の研究を振り返ると,国際的にもきわめて貢献度の大きい研究成果が数多く得られ,発がんの分子機構に関する理解が急速に進み,がんの病態も細胞内の遺伝子変異との対応でとらえられるようになってきた.現在「がんは遺伝子の異常によって起こる病気である」という概念が確立している.がんの診断・治療に関する研究では,基礎研究の成果を活用して,分子レベルでのがん診断や分子標的療法などの開発研究が進展してきている.がんの疫学研究では,過去数十年における日本人の生活習慣の激変によるがん罹患率の変動状況を明らかにし,がん予防における環境要因の重要性を示してきている.
 このように,日本におけるがんの基礎研究および臨床研究は,国際的にみても目覚ましい進歩を遂げることができた.しかしながら一方で,がんはきわめて複雑性に富んでおり,その本態の全容解明にはほど遠いとともに,日本人のがん罹患率は依然として増加を続けており,治癒率の向上が困難な「難治がん」というものが依然として存在するのも事実である.2004年から,新たな「第3次対がん10ヵ年戦略」が開始されている.この第3次戦略のキャッチフレーズは「がんの罹患率と死亡率の激減を目指して」である.そのためにがんのさらなる本態解明と克服に向けた新しい研究戦略を構築し,文科省と厚労省の一層の強い連携のもと,個々人に最適の高水準のがんの予防と医療を国民全体に提供できる社会を実現することを目標としている.
 この目標達成には,次代を担う多くの学生,若手研究者ががん研究に興味を持ち,理解し,参加することが必要であるとともに,よりいっそうの社会の理解と支援を得るための努力も必要である.「がん研究のいま」を述べた本シリーズを,がんに関心を持つ読者に広く読んでいただき,これからのがん研究に対する興味や理解を深めるお役に立てば幸いである.
鶴尾 隆・谷口維紹

各巻詳細

第1巻 発がんの分子機構と防御

1.総論
  発がんの分子機構および発がん防御の分子機構 笹月健彦(国立国際医療センター)
2.発がんと予防
1)がん原物質と発がんリスク 鎌滝哲也(北海道大学)
2)ウイルス発がん 下遠野邦忠(京都大学)
3)感染・炎症と発がん 畠山昌則(北海道大学)
3.発がんの分子機構
4)DNA損傷修復と発がん 花岡文雄(大阪大学)
5)染色体機能異常と発がん 石川冬木(京都大学)
6)発がんとエピジェネティックス 牛島俊和(国立がんセンター研究所)ほか
7)細胞周期ブレーキp27の分解と発がん 中山敬一(九州大学)
8)発がんモデルマウスとがん関連遺伝子の機能解析  野田哲生(東北大学)ほか
4.発がん防御機構
9)ヒトキラーT細胞および抗体により認識されるがん関連抗原 伊東恭悟(久留米大学)ほか
10)NK細胞による発がん防御 八木田秀雄(順天堂大学)

第2巻 がん細胞の生物学

1.総論
  がん細胞の生物学 高井義美(大阪大学),秋山 徹(東京大学)
2.がん細胞の増殖と死
1)がん遺伝子の異常とがん化 山本 雅(東京大学)
2)がん抑制遺伝子の異常とがん化 秋山 徹(東京大学)
3)細胞増殖のシグナル伝達 西田栄介(京都大学)ほか
4)細胞死の分子機構と生理作用 長田重一(大阪大学)
5)細胞の増殖・分化・死の制御破綻によるがん 金倉譲(大阪大学)
6)p53とインターフェロン:免疫系と発がん制御の新しいつながり 谷口維紹(東京大学)ほか
3.がん細胞の接着と運動
7)細胞運動と細胞がん化 竹縄忠臣(東京大学)ほか
8)細胞の接着と極性形成の分子機構  月田承一郎(京都大学)、高井義美(大阪大学)ほか
4.がん細胞と間質,血管
9)膜型マトリックスメタプロテアーゼによるがん細胞の増殖と浸潤の制御 清木元治(東京大学)
10)血管新生とがん 渋谷正史(東京大学)

第3巻 がんの診断と治療

1.総論
  がんのオーダーメード医療を目指して 中村祐輔(東京大学)
2.がんの診断と治療
1)がんのゲノム異常 稲澤譲治(東京医科歯科大学)
2)がんの網羅的遺伝子発現解析 油谷浩幸(東京大学)
3)WT1アッセイによるがんの診断 杉山治夫(大阪大学)
3.がんの免疫治療法
4)がんの免疫治療法 田原秀晃(東京大学)
5)メラノーマに対する免疫療法の開発 河上 裕(慶應義塾大学)
6)がん遺伝子産物由来ペプチド抗原によるがん治療 珠玖 洋(三重大学)
7)がんの免疫療法モデルの開発 高橋利忠(愛知県がんセンター研究所)ほか
4.遺伝子治療の研究開発
8)遺伝子治療の現状とアデノウイルスベクターの開発 斎藤 泉(東京大学)
9)アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの開発 小澤敬也(自治医科大学)
10)RNA干渉とがん治療 宮岸真(東京大学)
11)GST-πを標的にした分子標的治療の開発 新津洋司郎(札幌医科大学)ほか
5.がんの放射線治療の基盤研究
12)放射線治療抵抗性克服にむけた腫瘍低酸素分画の予知と新規治療戦略開発 平岡眞寛(京都大学)
13)放射線抵抗性シグナル伝達機構 三浦雅彦(東京医科歯科大学)
6.新規抗がん剤の探索と分子標的治療
14)新規抗がん剤の探索と分子標的治療 上田龍三(名古屋市立大学)ほか
15)抗がん剤耐性とその治療 鶴尾 隆(東京大学)
16)細胞がん化のシグナル伝達と新規リード探索 上原至雅(国立感染症研究所)ほか
17)DNA塩基配列を認識するテーラーメード抗がん剤 杉山 弘(京都大学)
18)TGF-βシグナル伝達とがん治療 宮園浩平(東京大学)

第4巻 がんの疫学

1.総論
  がんの民族疫学研究 田島和雄(愛知県がんセンター研究所)
2.国際比較研究
1)ブラジル在住日系人の胃がん 津金昌一郎(国立がんセンター)
2)東南アジア3国における消化器がんの宿主・環境要因の研究 徳留信寛(名古屋市立大学)
3.増加がんの疫学・予防
3)大腸がんのゲノム疫学研究 古野純典(九州大学)
4)乳がんの疫学と予防 永田知里(岐阜大学)
5)前立腺がんの疫学と予防 赤座英之(筑波大学)
4.感染とがん
6)ATLの疫学 山口一成(国立感染症研究所)
7)子宮頸部HPV感染症の疫学研究とワクチンによる予防 吉川裕之(筑波大学授)
8)ピロリ菌感染と胃がん予防 浜島信之(名古屋大学)
5.がんの分子疫学
9)発がんの免疫的防御 中地 敬(放射線影響研究所)
10)遺伝子多型と発がんリスク 椙村春彦(浜松医科大学)
11)DNAメチル化と発がんリスク-エピジェネティック疫学 湯浅保仁(東京医科歯科大学)
6.がんの臨床疫学
12)臨床研究からみたがん進展のメカニズム 今井浩三(札幌医科大学)ほか
13)疫学研究からみた消化器がんの進展と予後 米澤 傑(鹿児島大学)
14)疫学研究からみた肝がんの化学予防と進展抑制 森脇久隆(岐阜大学)

●書籍検索

●ジャンル

シリーズ・講座

●最新情報