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融ける境 超える法【全5巻】

[シリーズ著者]

渡辺 浩 編集代表

江頭憲治郎 編集代表

第1巻 個を支えるもの 岩村正彦/大村敦志 編

すべての基本となる「個人」に視座を据え,人権問題や社会保障政策,新しい家族のあり方など,個人とその生活を支える法システムの変貌を解き明かす.

第2巻 安全保障と国際犯罪 山口厚/中谷和弘 編

テロ犯罪や人道に対する罪など国際犯罪が多発する現状を踏まえ,グローバル化のなかで噴出する安全保障と刑事法の交錯局面を重層的に抉り出す.

第3巻 市場と組織 江頭憲治郎/増井良啓 編

政府や企業が新たな手法で市場を統御することが求められるなか,官と民,国と国の境界を再審に付し,ボーダレス化する経済活動の公正・透明化に向けて新しい法の枠組みを提示する.

第4巻 メディアと制度 ダニエル・フット/長谷部恭男 編

放送と通信の融合,多メディア化,大容量化など情報産業・技術の発展が惹起する従来の法制度との摩擦を克服するために,多分野の専門家の知見を総合し新たな方向性を示す.

第5巻 環境と生命 城山英明/山本隆司 編

国の内外を超えて深刻化し,生命をも脅かす環境問題の解決に向けて,科学的知識を踏まえ国内・国際の両次元から多角的に分析,具体的事例に則して実践レベルの提言を試みる.



刊行にあたって

 古代ローマ以来,ヨーロッパのさまざまな思想潮流の中で鍛えあげられてきた「法」的な関係の特徴は,無限の多様性を包含する具体的人間関係・社会関係を人為的に細分化・分節化し,それぞれ独自の構造原則を有する「法的関係」として構成する点にある.法律家の活動は,「ナマの」現実との矛盾・緊張関係を鋭く感じながら,たゆまぬ法的分節化を進めるという営為であった.
 非西欧諸国にも導入されたこの法の思考の中核には,「峻別」・「境界づけ」がある.「公法」と「私法」の峻別,諸「契約」類型の峻別,「主権国家」内部関係と「国際関係」の峻別など,無数の「境界(ボーダ)」が引かれ,社会関係が法的に分節化された.
 しかし,現代は,既存のさまざまな「境界」の急速な相対化・流動化が,各変化が相互に原因となり結果となるかたちで生じている.たとえば経済の国際化は,「国境」という境界を流動化させるだけでなく,国内のさまざまな境界(「官」と「民」の境界など)の相対化をもたらした.安全保障における非国家主体の重要性や人・情報の移動の活発化,それに伴う基盤的システムの脆弱性の拡大は,国際的な安全保障と国内刑事法システムとの部分的融合を生んでいる.科学的知識の持つ本質的不確実性や急速な技術発展は,境界の明確さを求める法システムへの根本的な挑戦となり,生命科学の発展は,「ヒト」とは何かといった基本的「境界」問題を再度提起しつつある.
 既存の「境界」が流動化し「融ける」現象を直視し,その相互の関連性を把握し,それらが全体として持つ意味を明らかにすることが,現代の法律学の基礎的作業として求められている.その作業を行う上では,法制度をより広い文脈に位置づけて考察する政治学の寄与しうる役割も大きい.その次のステップとしては,「(既存の)境が融ける」状況に対し小手先の対処をするのではなく,変化した現実との矛盾・緊張関係を意識しつつ,現代的な条件の下で新たな法的関係・形式(新たな「境界づけ」)を構想し,それに基づく法システムを再構築することが,現代の法律学に要請されている.
 本シリーズは,こうした視点に立ち,政治学をも巻き込んだ法学研究の成果の第一弾として,「境が融ける」現象の多方面な分析を試みる.人権・家族・労働などの状況を取り扱う「個を支えるもの」(第1巻),安全保障と刑事法を取り扱う「安全保障と国際犯罪」(第2巻),経済・金融・財政問題の変化を取り扱う「市場と組織」(第3巻),情報の領域を取り扱う「メディアと制度」(第4巻),科学技術が人間・環境に及ぼす影響を取り扱う「環境と生命」(第5巻)の五冊のシリーズである.
 本シリーズは,学術振興会・学術創成プロジェクトの一つである「ボーダレス化時代における法システムの再構築」の中間的な成果公表でもある.各執筆者は,本シリーズに続き,最終的成果すなわち「新たな境界づけ」の構築を目指し,目下研究に取り組んでいる.
編集代表 渡辺浩/江頭憲治郎

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