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講座 日本美術史【全6巻】

[シリーズ著者]

佐藤康宏

板倉聖哲

長岡龍作

玉蟲敏子

木下直之

第1巻 物から言葉へ  佐藤康宏 編

[執筆者] 佐藤康宏/有賀祥隆/田邉三郎助/島尾 新/山本 勉/林 温/川本桂子/松原 茂/黒田泰三/塚原 晃

第2巻 形態の伝承  板倉聖哲 編

[執筆者] 板倉聖哲/井手誠之輔/根立研介/河野元昭/藤岡 穣/相澤正彦/武田光一/佐藤康宏/島尾 新/玉蟲敏子

第3巻 図像の意味  佐藤康宏 編

[執筆者] 佐藤康宏/長岡龍作/泉 武夫/相澤正彦/板倉聖哲/須藤弘敏/中島 博/浅野秀剛/奥平俊六/成澤勝嗣

第4巻 造形の場  長岡龍作 編

[執筆者] 長岡龍作/太田昌子/木下直之/海老根聰郎/高橋範子/榊原 悟/根立研介/加須屋 誠/奥 健夫/大久保純一

第5巻 〈かざり〉と〈つくり〉の領分  玉蟲敏子 編

[執筆者] 玉蟲敏子/藤井恵介/川本重雄/金行信輔/武笠 朗/日高 薫/荒川正明/泉 万里/丸山伸彦/木下直之/山崎 剛

第6巻 美術を支えるもの  木下直之 編

[執筆者] 木下直之/五十殿利治/佐藤康宏/蔵屋美香/平瀬礼太/岩切信一郎/北澤憲昭/武笠 朗/玉蟲敏子/三浦 篤



刊行にあたって

 日本美術史研究は何をどう考える学問なのか,わかりやすくかつ魅力的に伝えたい.美術史を学ぼうとする人にはよき手引きとなり,できれば日本美術に関心を寄せるどのような人にも,美術はただながめているだけでも快いがそれについて知り考えることもまたおもしろいのだと感じてもらえるような,そんな数冊の書物を講座の名のもとに編みたい.『講座』は,自ずからこの学問の現在の水準を示すシリーズにもなるだろう.――2001年4月,私たちはこの企画をそういう思いで出発させた.
 「ああ美しい」という詠嘆の言葉のその次に,人は何を美術について語り得るのだろうか.自分の心の中ではなく,あくまでも向こう側で現実に起きたことを知りたいと願い,対象から遊離した独白を紡ぐのでなく,検証可能な開かれた議論を目指して,美術史学は形作られてきた.美学と考古学の 異種交配 ハイブリッド ,哲学と歴史学の境界領域であったこの学問は,物そのものを精密に観察することから始めて,遺品と文字史料とを関連づけ,様式に基づく歴史を編み,主題の意味を発見し,造形が生成し機能していた〈場〉を復原し,ついには美術という概念そのものの歴史性・党派性を暴き,美術史学それ自体の制度を問題にするところにまで展開してきた.対象と方法は拡大し,ある時代や地域の視覚文化,イメージ状況を解明する学問へと向けてなお発展の可能性を秘めている.日本美術史に限っても,知的刺激に満ちた数々の研究が積み重ねられてきたのだが,専門家の常識は必ずしも一般に普及してはいない.その断絶は互いにとって不幸なことで,専門家が仲間内だけで通用する議論をいっそう洗練させ,非専門家が美術史学に不信の眼を向けながら自己流の解釈に固執する原因ともなっている.日本美術という親しみやすい対象をめぐってどのようなことが考えられているのか,研究者どうしでも,そうでない人とでもここで一度言葉を通じ合わせ,今世紀新たに描かれるであろう研究の軌跡の原点としたい.
 右に述べた美術史学の展開過程にいくらか対応して,この『講座』は全六巻で構成され,通常行なわれているように日本美術を時代順に並べるのでも分野で分けるのでもなく,以下に示す六つの角度から照射することを試みる.それぞれの巻が,その巻の視点を通して古代から近世・近代までの美術を論じた十篇の論考から成る.この構成が狙うのは,限られた分量の中で日本美術史の全体像を平均的に描くよりも,できるだけ美術史学にとっての本質的な問題を提示することであった.まず自身の姿を示すことで,私たちがまだよく知らないたくさんの読者との対話も始められるかもしれない.そんな期待をこめて六巻の『講座』をここに送り届ける.
2005年3月  編者一同

各巻詳細

第1巻 物から言葉へ

序(佐藤康宏)
第1章 ディスクリプション
仏画の記述――何のために記述をするのか(有賀祥隆・東京藝術大学)
仏像の記述(田邉三郎助・町田市立博物館)
第2章 物の内部へ
絵画史研究と光学的手法――「源氏物語絵巻」の調査から(島尾 新・多摩美術大学)
仏像の内部を見る――運慶作品を中心に(山本 勉・東京国立博物館)
国宝一遍上人絵伝(一遍聖絵)と修理――古画を修理するということ(林 温・慶應義塾大学)
障壁画の復元研究――その方法と問題点について(川本桂子・美術史家)
第3章 物の外部へ
詞書筆者と執筆分担――絵画作品への書からのアプローチ(松原 茂・東京国立博物館)
彦根屏風の画家――狩野長信の可能性(黒田泰三・出光美術館)
雅俗の都市像――与謝蕪村筆「夜色楼台図」(佐藤康宏・東京大学)
美術史研究者のデジタル・ソリューション――明治石版画調査研究への画像データベースの応用を事例として(塚原 晃・神戸市立博物館)

第2巻 形態の伝承

序(板倉聖哲) 第1章 文化圏の境界
影響伝播論から異文化受容論へ――鎌倉仏画における中国の受容(井手誠之輔・九州大学)
東寺旧蔵「山水屏風」が示す「唐」の位相(板倉聖哲・東京大学)
南都再興造仏における慶派仏師の「中国」美術の受容をめぐって(根立研介・京都大学)
肖像画の生成と流通――頂相をめぐって(海老根聰郎・東京藝術大学)
第2章 模倣をめぐる現象
粉本と模写(河野元昭・東京大学)
仏像と本様――鎌倉時代前期の如来立像における宋仏画の受容を中心に(藤岡 穣・大阪大学)
芸阿弥画本の幻影――室町水墨画の型(相澤正彦・成城大学)
南画における木版画譜の利用――谷文晁の場合を中心に(武田光一・新潟大学)
第3章 継承と変容の位相
形態の増殖――「一遍聖絵」・「彦根屏風」・「動植綵絵」(佐藤康宏)
連歌的世界の図像学(島尾 新)
「形態の伝承」と伝説化をめぐる考察――「琳派」を中心に(玉蟲敏子・武蔵野美術大学)

第3巻 図像の意味

序(佐藤康宏)
第1章 テクスト/コンテクスト
仏像の意味と上代の世界観――内と外の意識を中心に(長岡龍作・東北大学)
青不動――画像と行法をめぐる形と意味(泉 武夫・京都国立博物館)
付喪神絵巻(佐野みどり・学習院大学)
大原御幸図の源流(相澤正彦)
探幽縮図から見た東アジア絵画史――瀟湘八景を例に(板倉聖哲)
第2章 ダブル・イメージ
荘厳と寓意――流水片輪車蒔絵螺鈿経箱をめぐって(須藤弘敏・弘前大学)
隠棲の風景――神護寺所蔵「山水屏風」とその周辺(中島 博・奈良国立博物館)
風流の造形,なぞらえる操作――「見立」と「やつし」とその周辺(浅野秀剛・千葉市美術館)
第3章 現実と図像との交渉
不思議な聖者たち――布袋・蜆子・陳搏(奥平俊六・大阪大学)
王権への追憶――太閤秀吉と風俗画のあやしい関係(成澤勝嗣・神戸市立博物館)
都市とその辺境――岸田劉生筆「道路と土手と塀(切通之写生)」(佐藤康宏)

第4巻 造形の場

序(長岡龍作)
第1章 造形の居場所
仏像をめぐるいとなみ――上代法隆寺を場として考える(長岡龍作)
花鳥画の居場所――西本願寺障壁画のイメージ・システムを中心に(太田昌子・金沢美術工芸大学)
殿様の銅像(木下直之・東京大学)
第2章 造形と個別の磁場
平家納経の制作(梶谷亮治・奈良国立博物館)
詩画軸の構造と場――杜甫の詩意図をめぐって(高橋範子・正木美術館)
屏風――儀礼の場の調度――葬送と出産を例に(榊原 悟・群馬県立女子大学)
第3章 造形の生きる社会
院政期の僧綱仏師をめぐる仏像制作の場――仏師賢円を中心にして(根立研介)
ジェンダー論――地獄に墜ちた女たち(加須屋 誠・奈良女子大学)
生身仏像論  奥 健夫(文化庁)
錦絵の制作と流通(大久保純一・国立歴史民俗博物館)

第5巻 〈かざり〉と〈つくり〉の領分

序(玉蟲敏子)
第1章 かざる空間の意味と機能
構造から意匠へ――平等院鳳凰堂を解析する(藤井恵介・東京大学)
住まいの系譜と飾りの系譜(川本重雄・京都女子大学)
武家庭園の近代――江戸から東京へ(金行信輔・広島大学)
第2章 かざりとつくりの方法
つくり絵論――日本絵画にみる金銀と彩色(玉蟲敏子)
仏像における<工芸的>なもの――仏像の金属製荘厳具をめぐって(武笠 朗・実践女子大学)
蒔絵の「色」――絵画と工芸のはざまで(日高 薫・国立歴史民俗博物館)
陶磁の装飾――宴の器を中心に(荒川正明・出光美術館)
第3章 かざりとつくりの諸相
外への視線――標の山・南蛮人・唐物(泉 万里・神戸市看護大学)
友禅の虚像と実像(丸山伸彦・武蔵大学)
屋根の上の作り物(木下直之)
時空を超えた日本漆器(山崎 剛・金沢美術工芸大学)

第6巻 美術を支えるもの熟

序(木下直之)
第1章 美術を生み出す
明治維新と名古屋城――金鯱・御殿障壁画・天守の行方(木下直之)
美術の「近代」と美術家の「行為」(五十殿利治・筑波大学)
都の事件――「年中行事絵巻」・「伴大納言絵巻」・「病草紙」(佐藤康宏)
第2章 美術を扱う
壁画とタブロー――1900―1940年代(蔵屋美香・東京国立近代美術館)
戦争と美術コレクション――そこにあってはならないもの(平瀬礼太・姫路市立美術館)
メディアとしての版画――近代版画揺籃期の考察(岩切信一郎・東京文化短期大学)
美術における政治表現と性表現の限界(北澤憲昭・跡見学園女子大学)
第3章 美術を語る
平等院鳳凰堂阿弥陀如来像の近代(武笠 朗)
江戸の古画趣味と日本の美術史学――宗達「平家納経」補修説と牧谿伝根本資料『松斎梅譜』の出現をめぐって(玉蟲敏子)
黒田清輝と西洋美術教育(三浦 篤・東京大学)

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