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シリーズ 言語科学【全5巻】

1 文法理論:レキシコンと統語  伊藤たかね 編

言語理論では統語研究に加えて,レキシコン(語彙)研究が大きな成果をあげている.話者の記憶装置であるレキシコンと,自然言語に特有な演算処理を行う統語とはどのような関係にあるのか.計算機言語学,神経言語学などの視点から幅広い研究を示す.

2 認知言語学I:事象構造  西村義樹 編

認知言語学では,語は物や行為についてのある種の概念化であり,統語構造も人間の主体的な事態把握の反映であると捉える.事象構造(event structure)をカバー・タームとして,事象の把握や輪郭づけ,知覚のメカニズムと言語の関係を明らかにする.

3 認知言語学II:カテゴリー化  大堀壽夫 編

カテゴリー化は人間の認知能力を映し出し,プロトタイプやメタファーといった概念装置をはたらかせる.時間・空間といった根元的な概念,トートロジーのような言語の創造的使用,文法カテゴリーの歴史的変容――カテゴリー化の諸相について体系的なパースペクティブを示す.

4 対照言語学  生越直樹 編

対象研究を行うさい,既成のカテゴリー(「主語」「ヴォイス」「モダリティ」など)の枠に捕らわれず,同一の事象がそれぞれの言語でどのように語彙化,構造化されるかという観点から,言語化の過程に見出される言語間の共通性と個別性を探りだす.

5 日本語学と言語教育  上田博人 編

言語学は語学教育に対してどのように貢献できるか.日本人に対する外国語教育,外国人に対する日本語教育,こうした場の外国語学習における母語知識の干渉や誤用の問題などをとりあげ,言語学の応用を通して語学教育の有効な方法論を探る.



刊行にあたって

 言語研究の歴史は非常に古い.インドでは紀元前5世紀頃パーニニによる精緻なサンスクリット文法が現れ,ギリシャでもほぼ同じ時期にアリストテレスらの萌芽的研究を経て,紀元前1世紀頃にアレクサンドリアで整然としたギリシャ語文法体系が成立している.こうした文法は,綿密な観察を含みながらも,解釈のための補助学問としての実用的性格が強かった.これに対し,言語を自然現象と同じように,そのありのままの現実において記述,説明しようとする研究態度は比較的新しく,20世紀初頭になってはじめて明確な形で現れてくる.
 こうした研究態度が現れてくる背景には,その当時の学問全体を取りまく認識論的基礎づけの要請と,特に言語研究それ自体の発展があった.具体的には, 18世紀末からの印欧比較文法によるさまざまな音韻変化の法則の発見や言語の系統的親近性の確定や祖語の再構などの成果があげられる.ところが,そうした研究成果の集積が,逆に学問的基盤の不確かさを明らかにし,より確固とした説明概念の上に,学問を基礎づける必要性を感じさせた.こうして,言語学を科学として成立させるための概念の整理や研究対象の確定の努力がなされ,20世紀を代表する学問的成果としての言語学が誕生することになる.
 その後も,言語学は20世紀を通じ,たえまなく大きな変革を経験してきている.世紀前半は音韻論主導の言語学であり,世紀半ばからは生成文法を中心とする統語論主導の言語学であった.60年代から始まった本格的な意味研究は,80年代にいたり明確な問題意識に裏うちされた認知言語学を生んだ.また,外的には人工知能における知識表現や計算機科学の工学的言語処理などからも大きな影響を受け,現在,言語についての考え方,研究方法が大きく変わろうとしている.この時期にあたり,言語研究をもう一度じっくり見直してみることはまことに意義深いことと思われる.
 『シリーズ言語科学』は,言語学の立場から,現在の言語研究で特に重要と思われるいくつかの領域にしぼり,最新の知見を提供する.各巻は統一テーマをもち,それぞれの分野で進行中の研究を中心に構成されている.各巻の論文を通読することで,それぞれの分野の研究動向を知り,かつ近未来の研究動向も予測できるであろう.個々の論文は,専門的でありながらも,狭い専門性に閉じこもることなく,さまざまな工夫を凝らして知的好奇心を刺激し,創造的議論が広がるきっかけになるように書かれている.本シリーズが,これからの言語研究を切り開き,新たな発展に寄与することを願っている.

『シリーズ言語科学』編集委員会
坂原茂(編集代表)・伊藤たかね・西村義樹・大堀壽夫・生越直樹・上田博人

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