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国際社会【全7巻】

[シリーズ著者]

宮島 喬

小倉充夫

加納弘勝

梶田孝道

1 国際化する日本社会  梶田孝道・宮島 喬 編

1980年代以降本格化した日本社会の国際化のなか,「外国人問題」の現実,政策,運動を,労働,都市,地域社会,政治参加などの側面から分析する.日本の国際化が「外国人問題」に及ぼした影響,また逆に外国人や外国人支援組織が日本社会に与えたものを考察する.

 1 日本の外国人労働者政策 政策意図と現実の乖離という視点から   梶田孝道
 2 外国人労働市場の分岐の論理 エスニックな分水嶺の発生メカニズム   丹野清人
 3 日本の企業と外国人労働者・研修生   上林千恵子
 4 世界都市からグローバルシティへ 「世界都市」東京の二〇年   町村敬志
 5 グローバルシティの下層マイノリティ 間隙を縫う   西澤晃彦
 6 地域社会の変容とエスニシティ 外国人集住都市・浜松の事例   池上重弘
 7 日本の国際化とインドシナ難民 ベトナム系住民の視点を中心に   川上郁雄
 8 外国人の政治参加 外国人参政権・外国人会議・社会運動をめぐる行為戦略   樋口直人

2 変容する日本社会と文化  宮島 喬・加納弘勝 編

日本社会の国際化は,たしかに街頭,地域,教室の文化の光景を変え,農村の日常にも及んでいる.しかし果たして双方向的文化変容なのか.家族,学校教育,メディア,宗教生活等の現実に迫りながら,ホスト社会日本からの文化的同化,周辺化の圧力と,これに抗する新しいアクターの営みに光をあてる.

 1 ニューカマー外国人の増大と日本社会の文化変容 農村の外国人妻と地域社会の変容を中心に   渡辺雅子
 2 国際結婚にみる家族の問題 フィリピン人女性と日本人男性の結婚・離婚をめぐって   定松 文
 3 学校世界の多文化化 日本の学校はどう変わるか   志水 宏吉
 4 教育達成における日本語と母語 日本語至上主義の批判的検討   太田晴雄
 5 就学とその挫折における文化資本と動機づけの問題   宮島 喬
 6 イスラーム教徒における社会文化空間と教育問題   杉本 均
 7 エスニック・メディアとその役割 在日ブラジル人向けポルトガル語メディアの事例から   アンジェロ・イシ
 8 定住外国人における文化変容と文化生成   谷 富夫

3 国民国家はどう変わるか  梶田孝道・小倉充夫 編

今日の国家は,もはや従来の社会科学が前提としてきた「国民国家」ではない.地域統合によるトランスナショナルな空間が生まれているが,「国民国家」への固執と分離への志向も依然として強い.境界設定の変更を跡づけながら,人びとの意識の変化と市民権の変容を明らかにし,「国民国家」の行方を探る.

 1 地域の統合と民族の分離 ヨーロッパにおける「民族」をめぐる二つの文脈   梶田孝道
 2 人の自由移動と国家を越える市民権 ヨーロッパ統合のなかで   林 瑞枝
 3 言語からみた国民国家の変容 フランス・ブルターニュ地方の事例を中心に   原 聖
 4 トランスナショナル空間の成立と文化の分節化 アルザスを事例に   中力えり
 5 民族の定義と国際関係 「マケドニア人」をてがかりに   大庭千恵子
 6 NAFTA圏と国民国家のバウンダリー 経済統合の中での境界の再編成   小井土彰宏
 7 先住民と国民国家 カナダ・ケベック州を中心に   スチュアート ヘンリ
 8 外国人・移民政策と国民国家の論理 日本の場合   広渡清吾

4 マイノリティと社会構造  宮島 喬・梶田孝道 編

いわゆる先進社会と呼ばれる地域で,エスニック・マイノリティと称される人びとの社会的位置はどのようなものか.労働,エスニック・ビジネス,社会運動,レイシズム,多文化施策などに焦点を当てながら,先進社会の統合政策,政治過程と,マイノリティの人びとの戦略行動との相互関係を考察する.

 1 移民の社会的統合における「平等」と「エクイティ」 フランスにおける統合モデルの変容?   宮島 喬
 2 アメリカの人種エスニック編成とアジア系移民 「エスニック・ビジネス」再考   南川文里
 3 多文化,反差別の教育とその争点 イギリスの事例を中心に   佐久間孝正
 4 レイシズムとその社会的背景 ドイツにおける「外国人問題」と再帰的近代化   高橋秀寿
 5 ジェンダーからみた移民マイノリティの現在 ニューカマー外国人女性のカテゴリー化と象徴的支配   笠間千浪
 6 新しい貧困層と社会運動 フランスにおける「住宅への権利運動」のなかの移民たち   稲葉奈々子
 7 国家・企業・労働組合と移民労働者 欧米諸国における移民労働のポリティクス   久保山亮
 8 オーストラリアの多文化主義とマイノリティ   関根政美

5 グローバル化と社会変動  小倉充夫・梶田孝道 編

「グローバル化」とは単なる流行語ではなく,イデオロギーでもない.それは経済環境にとどまらず,文化や宗教,社会政策と福祉国家,国民の構成をも激変させている.「グローバル化」が進行する社会とはどんな社会か,階層や社会構造をどう変えつつあるのか,そこでの変革主体は誰で,どのような闘争が行われているのか,といった問題に正面から答える.

 1 コスモポリタン社会とその敵 世界市民主義宣言    ウルリッヒ・べック
 2 情報のグローバル化と国民文化・サブカルチャー   川崎賢一
 3 移民の定住化とイスラームの移植   フェリーチェ・ダセット
 4 グローバル化と福祉国家 コスコモリタリズムの社会政策のために   武川正吾
 5 NGOのグローバルな展開と国際社会の変動   遠藤 貢
 6 グローバリゼーションと世界諸地域の原理主義運動 「社会サービスの提供」に注目して   加納弘勝
 7 社会変動と変貌する国際社会 植民地支配・冷戦・グローバル化とザンビアの労働移動   小倉充夫

6 東アジアと日本社会  小倉充夫・加納弘勝 編

日本社会を東アジアというリージョンのなかに脈絡づけ,植民地支配の問題に始まり,現代の労働移動,メディア,大衆文化,環境問題などにいたるまで,近代の構造と持続的な特徴をくっきりと浮かび上がらせる.歴史分析と現状分析が重なりあい,複眼的な視角で日本社会の軌跡とその将来を示唆する.

 1 近代沖縄と日本 日清戦争後の義務教育と「同化」を中心に   水谷明子
 2 在日朝鮮人の「多様化」の一背景 「民族」・「祖国」・「生活」をめぐって   小林知子
 3 日本のマスコミとアジア   卓 南 生
 4 台湾における日本トレンディー・ドラマの受容と変容    キュウ・シュクブン
 5 日本「留学」「就労」の意味 滞日中国人における準拠集団とその変容   坪谷美欧子
 6 経済開放下の中国における人口・労働力移動   若林敬子
 7 かつお節と近代日本 沖縄・南進・消費社会   宮内泰介
 8 日韓企業経営の異同 社会学の視点から   服部民夫

7 変貌する「第三世界」と国際社会  加納弘勝・小倉充夫 編

第三世界の人びとは,植民地支配がさまざまな影響を色濃く残した「国民国家」のなかで生活し,エスニック問題,教育・言語問題,貧困・居住問題に直面している.「国境を越えた」リージョナルな場やグローバルな場で自分たちの願いを達成しようと第三世界の人びとが織りなす,さまざまな行為と関係に接近する.  1 植民地支配と国民国家   山口博一
 2 「国民国家」の矛盾とマイノリティの挑戦 三カ国におけるクルド運動の比較から   加納弘勝
 3 内戦の越境,レイシズムの拡散 ルワンダ,コンゴの紛争とツチ   武内進一
 4 「先住民」と移民政策 マレーシアのエスニック関係を例に   都丸潤子
 5 タイにおけるナショナリズム言説と華人 華人排外主義の維持と変容をめぐる考察   船津鶴代
 6 ラテンアメリカにおける国家と都市住民 交差するコミュニティ運動の組織化   幡谷則子
 7 国際移動と地域開発 ソニンケ移民に関する移動の主体性についての考察   三島禎子
 8 移民政策と国際社会 南アフリカにおける移民政策を事例として   小倉充夫



刊行のことば

 「国際社会」,このコンセプトが十分成り立つかどうか,私たちにも強い確信があるわけではない.だが,今や日本には約170万人におよぶ外国籍の人びとが外なる国々と何らかの社会的・文化的絆を保ちつつ住み,また,80万人余におよぶ日本人が同様の絆を日本との間に保ちながら国境の彼方に生活している.国境をまたぐ人びとのコミュニティが世界の多くの地点に生まれているのも見逃せない.EU(ヨーロッパ連合)域内で自由に移動し,働き,居住する構成国の市民たち,このヨーロッパをアラブやトルコの社会へとつなぐ多数のイスラーム移民コミュニティ,アメリカ南西部からメキシコにかけて展開する巨大なラティーノ(ヒスパニック)の帯状世界.また日本に30万人近く住む中国人たちも母国とその他の在外中国人の間に種々の絆を維持している.こうした国境を越えて成立する関係,相互行為,文化共有などに注目すると,いくぶんかメタファー性を残すが,「国際社会」という語もリアリティをもってくる.
 この点,日本では過去20年ほどの間の変化が重要だ.ボートピープル,エアピープルとしてのインドシナ難民の入国,アジアと南米からの就労目的の多数の人びとの来日,留学生,さらには「国際結婚」による外国人配偶者の驚くべき増大,等々.航空機によるスピーディな行き来と地球をネットする情報化のため,「定住」のイメージはさほど強くないが,これらの人びとで地域社会と深くかかわる者は確実に増え,医療,福祉,教育などあらゆる面で日本の制度に参入している.「われわれは労働者を呼び寄せた.が,やって来たのはまぎれもなく人間だった」という現代スイスの作家,マックス・フリッシュの言葉が日本でもまざまざと実感される.「国際化」,これは大都市や幾つかの地方自治体の否定しがたい現状だ.
 だが,わずか二〇年前からすべてが始まったと見るのは皮相である.一社会が他の諸社会との関係(交易,文化伝播だけではなく侵略や支配も含めて)なしに在ったことはない.日本の過去を振り返っても,古代以来,中国,朝鮮からの人と文物の受け入れは決定的意味をもったし,近代日本は西欧からの貪欲な文化吸収,他方ではアジアへの侵略・植民地支配へ,という二面的国際関係をつくりあげた.こうした関係は今の日本社会の中にも埋め込まれ,いわば日本の国際的関係性の基層をなしている.このことにも改めて目を向けたい.
 一方,国家や市民社会という人びとの生活枠組みも変わろうとしている.「国民国家」(ネーション・ステート)を典型的に現出したかにみえる西欧でいま,EUが国家主権の相対化,超国民的アイデンティティの形成を促している.国民国家への希求のかたわら,アジア,アフリカなど第三世界の国々も移民の送り出し,難民の流出・流入,多国籍企業の支配の浸透など「グローバル化」の下で国際化,世界化の中に巻き込まれている.国民国家の変容,これも現代のキーワードのひとつで,その変容のなかで新たな市民のあり方も浮かび上がってきた.国籍からある程度自由になった「ヨーロッパ市民」がその最たる例だが,近年の日本でも,人―国籍―居住の関係には揺らぎが生じている.
 こうした「国際社会」化の実態に接近するために,社会学の役割が増している.国境を越えて展開する人びとの生活を法的・政治的レベルのみではなく,移動行動,婚姻,地域生活,家族生活,福祉,教育などの社会的レベルで明らかにすることが必要になっているからだ.社会学が重視するのは,社会構造―社会関係 ―行為―生活世界の相互関係の把握であるが,この視点は従来国際政治学や国際関係論が必ずしも触れてこなかったリアリティに迫り,解明しようとする.といって,特定の社会学理論を下敷きにするものではなく,本シリーズは隣接諸科学にも開かれている.実際,世界システム論,文化的再生産論,カルチュラル・スタディーズ,相互行為分析,文化変容論,移民過程分析,民族関係分析,民族境界論,労働市場論,環境社会学,ジェンダー論など,種々のアプローチが執筆者によってとられている.「国際社会」のリアリティに迫る理論や概念装置は多様なのだ.
 かつて社会学も「一国主義」アプローチを自明視し,無反省に「国民社会」をその研究対象とした時期があったが,ここ10年ほどの間に急速にその限界が気づかれるようになった.地域,労働,家族,メディア等の研究にもエスニシティ,国際的関係性,「多文化」などの視点が導入され,まさにパラダイムの革新の進行を感じる.事実,学界の状況をみても,若手中心に最近もっとも成長いちじるしいのがこの国際化パラダイムに立つ研究である.そして大学内に目を転じると,「国際社会学」などの科目名を冠し,学生たちの関心を惹きつける講義が増えている.しかしその成長・活況に比し,まとまった適切な刊行が行なわれているとはいえない.本シリーズ『国際社会』全七巻は,こうした現実への初めての挑戦なのである.
 「国際社会」現象への接近法のスタンダードを示すのは時期尚早としても,その問題群,論点,可能な解明視点を具体的に提示することで,この分野の研究の魅力と可能性を力強く開示できているものと私たちは自負する.本シリーズは研究者や学生ばかりではなく,ジャーナリスト,NGO関係者,社会人等にも,問題の認識への基本的指針を与えうるものと信じ,かつ念じるものである.

宮島 喬・小倉充夫・加納弘勝・梶田孝道

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