講座 臨床心理学【全6巻】

内容紹介
著者紹介

1 臨床心理学とは何か

この巻では、学派の違いを超えた臨床心理学の基本的な方法論と専門性、また、学問としての臨床心理学の全体像を明らかにする。臨床心理学を社会に開かれた学問として位置づけ、社会的場における専門性の意味、および他の専門領域との連携の在り方を示す。

2 臨床心理学研究

臨床心理学の代表的な研究方法を紹介し、第一線の研究成果をまとめる。事例検討を中心とする日本の研究の現状を乗りこえ、“学”としての臨床心理学を活性化させるためのモデルを提供する。臨床実践のなかからいかに仮説を生成し、仮説をいかに実証的に検証していくかについて詳述する。

3 異常心理学I

臨床の場面で多くみられる異常心理学の問題について、研究の意義や臨床的役割を明確にし、最先端の研究動向を総説する。この巻では、不安と発達過程に関連した問題を扱い、その症状・アセスメント法・発生と持続のメカニズム・援助の方法について詳述する。

4 異常心理学II

人格障害・抑うつ・精神分裂病に関連した問題について、最先端の研究動向を総説し、将来への展望を提示する。生物-心理-社会という多次元のレベルで総合的に理解し、心理学的援助に生かす道を模索する。

5 発達臨床心理学

臨床心理学の活動を発達援助として位置づけ、これまで別々に発展してきた発達心理学と臨床心理学とを統合する道すじを提示する。生涯発達の観点から、各発達段階ごとにその段階における重要テーマをとりあげ、発達研究と臨床研究を統合する実践の在り方を示す。

6 社会臨床心理学

臨床心理学の活動を社会的な援助活動として位置づけ、その方法論と具体的なモデルを提示する。各社会領域において、さまざまな形態で行われている実践活動にもとづき、臨床現場の実態に即した活動モデルを具体的に提案し、臨床心理学を社会システムに定着させる道すじを示す。



刊行にあたって

 スクールカウンセリングの制度が導入されるなど、臨床心理学の社会的需要は日増しに高まっています。ところが、日本の臨床心理学は、個々の心理療法の学派の集合体にとどまっており、学問としての独自な存在意義を提示できていません。
 しかし、目を世界に転じると、英米の臨床心理学は、1990年代に入って臨床心理学をひとつの統合体として見る立場が明確となり、さらにポストモダンの学問として更なる発展の段階に向かっています。日本においても、臨床心理士の社会的な責任が強まっている今こそ、臨床心理学の新たな枠組みや体制を整えていく必要があるのではないでしょうか。こうした危機感から本講座は生まれました。
 キーワードは「実証性」と「実践性」、そして両者の統合です。まず方法論として、心理学としての実証性、つまりデータにもとづく推論という方法論を重視しました。データにはナラティヴなどの質的データも含まれます。次に実践性として、単に外国で作られた既成の理論を援用するだけではなく、日本の臨床現場での実践活動にもとづくことを重視しました。臨床現場での実践から理論モデルを形成していくことができれば、実証性と実践性の統合が可能となります。本講座では、このような姿勢を重視しました。
 もちろん、こうした大きな目標が一朝一夕にできあがるはずもなく、本講座が完成するまでの道のりには険しいものがあり、構想から脱稿まで4年を費しました。各執筆者には、担当分野の文献レビューを行ったうえで、執筆者自身の実践や研究を紹介し、臨床心理学のあるべき姿を論じていただくようにお願いしました。こうした困難な作業によって、単なる学派の集合体を脱して、臨床心理学を統合された全体としてとらえるという目標の一端は達成できたと思っています。新しい世紀の臨床心理学を創っていくために、多くの臨床心理士・関連する臨床家・大学院生・学部学生・研究者に読んでいただきたいと願っています。

下山晴彦・丹野義彦

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