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言語と計算【全5巻】

[シリーズ著者]

辻井潤一

未刊 1 文法理論の形式化と計算  辻井潤一

未刊 2 モデル理論的意味論  金沢誠

3 談話と対話  石崎雅人・伝康晴

4 確率的言語モデル  北研二

5 情報検索と言語処理  徳永健伸



刊行にあたって

 人間の思考コミュニケーションにおいて,その中核の位置を占める言語は,人間探求の格好の素材として,ながく,人文社会系諸科学の研究対象であった.一方,言語を計算という切り口で見る立場は,20世紀中葉にはじまり,記号計算の基礎を与える数学理論として,計算機化学の基礎のひとつを形成している.そして,いま,計算機による言語処理は,ネットワーク社会を支えるもっとも重要な情報技術のひとつになりつつある.
 計算から言語を見る視座は,言語を取り巻く諸科学の結節点を提供するとともに,科学と技術の結節点にもなっている.
 計算能力の飛躍的な向上は,膨大な言語データからその規則性を帰納的に導くという.行動主義者の果たせなかった夢を実現する可能性を持つ.人工物としての計算機に言語使う能力の与える研究は,人間の言語処理過程の解明に貢献し,心理言語学,神経言語学との実り豊かな境界領域を形成しつつある.言語と意味,言語と文脈への計算的アプローチは,伝統的な学問分野の成果を統合し,この曖昧模糊とした領域に関する研究に確固とした方向性を与えることに成功しつつある.
 そして,これらの研究は,ネットワーク中に浮遊する,人間の処理能力をはるかに超えたテキスト情報から,必要な情報を取り出すテキスト・マイニングの技術へと広がっている.あるいは,情報機器という,もうひとつの知性体に,言語という人間知性に自然なメディアを使う能力を与える技術へとつながっている.
 本シリーズは,この刺激的な分野への正確で系統的な入門書を目指して,目先のトピックは追わず,分野の基礎を系統的に与えることを第一の目標に,編集されている.
 言語を取り巻く学問分野は,広大である.本シリーズは,この広大な学問分野をすべて覆うことはあえて目指さず,計算方法という切り口を中心にして,その技術的内容を系統的に提示することを目指した.しかし,内容の正確さを犠牲にしないことを編集方針とした.これは,科学・技術の真の発展には,対象の深い把握と技術の正確な理解が不可欠であると信じているためである.
 本シリーズが,この新しい科学・技術の体系化に寄与し,次への飛躍の準備となることを願っている(辻井潤一)

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