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文化政策の現在【全3巻】

文化政策の現在【全3巻】

[シリーズ著者]

小林 真理

文化政策の現在
全3巻
シリーズ編者
小林真理
[東京大学大学院人文社会系研究科教授]

第1巻 文化政策の思想
第I部 国家との相克
第II部 権利概念の創出
第III部 制度規範と文化

第2巻 拡張する文化政策
第I部 領域
第II部 政策概念
第III部 担い手の多様化

第3巻 文化政策の展望
第I部 価値の転換
第II部 実践の深化
第III部 文化政策の再定義

東京大学出版会

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シリーズ刊行にあたって
 文化芸術,アート・プロジェクト,フェスティバル,創造都市,おもてなし,クール・ジャパン,観光立国,文化外交,知的財産立国,オリンピックの文化プログラム,明治150年を記念する行事の展開等々,文化という名称を直接的に冠していなくとも文化的事象に関係する政策,施策,事業が様々なレベルで展開されてきている.戦後の日本において,文化政策という言葉が国家レベルで正式に使われるようになったのは2000年代に入ってからであった.2001年に制定された文化芸術振興基本法に則って,行政改革の一環としての中央省庁再編によって設置された文化審議会が文化振興の基本方針を文部科学大臣に答申をし,それに基づいて政策が事業化され,実施されるという仕組みがようやく構築されたことがその契機となっている.国による文化を対象とした政策の始まりである.戦前には,文化政策論などが積極的に論じられていたことを考えると,戦後の空白が何を意味したかについては慎重に検討する必要があるだろう.また,文化の概念は多様であり,その含意をどの範囲まで拡大して捉えるかという問題もよく考えなくてはならない.
… 中略 …
 文化を対象とした政策は,ある文化を,どのような方向性へ,いかに誘導するのかという問題を含んでいる.しかし,そうした問題について十分考察されないまま,中央省庁においても,地方自治体や公立文化施設においても文化に関連する具体的な施策が展開されてきている.確かに,モデルケースとなる事例も現れてきているものの,そうした事例は一部にとどまり,結局のところ停滞している状況も多く見受けられる.

 この状況を改善するために,2017年度においては,文化芸術振興基本法を文化芸術基本法として改正し,障害者の文化芸術活動の推進に関する法案や文化財保護法の改正も議論されており,実践的課題に対応するための動きが加速している.
 一方,現在だけではなく,過去の実践も見ると,文化それ自体の諸相は各国において多様であるにもかかわらず,それぞれの文化政策の現象や実践,文化政策論には共通点が見られる.第二次世界大戦時の各国における文化統制の事例は歴史的によく知られているが,近代国家をはじめとして共同体の多くにおいて,文化に関する何らかの政策がとられないことはない.それではそこに共通する原理とは一体何か.文化政策における文化とは何であるのか,文化を何らかの形で政策として扱うことにはどのような意味があるのか.こうした問いは歴史的に繰り返されてきたにもかかわらず,その論点も整理されないまま,個人や集団・共同体の教養・娯楽,生活の充実,国際交流,都市や国家のアイデンティティ,産業振興,福祉,社会的包摂など文化はその含意や領域を果てしなく広げ,時に国内外で政治的・経済的摩擦も生んでしまっている.
 そこで,過去および現在の具体的な諸現象に徹底的に注目しながら,「文化政策」と冠された政策に含まれる課題と可能性を抽出し,改めて基礎づけることで現在の多様な状況に対応し,さらにこれからの文化政策の目指すべき方向性や方法論を構想し,理論化する一助となること,それが本シリーズ刊行の目的である.
小林真理

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文化政策の現在 全3巻  A5判・上製・平均300頁/各巻本体3,800~4,200円+税

本シリーズの特色
◎さまざまなセクターによって実践されている文化政策について学術的に基礎づけ,その可能性を総合的に展望するシリーズ.
◎文化芸術基本法の施行や2020東京オリンピック・パラリンピックの開催を背景にますます重要な役割を担う文化政策の主要なトピックを取り上げ,文化政策の全体像を示す.
◎大学,研究機関,NPO,地方公共団体,外郭団体などさまざまな組織に所属する執筆者がそれぞれの視点から文化政策の核心について記述する.
◎文化政策の基本概念を基礎づける第1巻,横断的に拡大と深化を続ける文化政策の諸相を確認する第2巻,文化政策の研究的・実践的な課題と展望を示す第3巻でシリーズを構成.

第1巻 文化政策の思想  2018年2月刊行予定
ISBN978-4-13-003495-1 本体4,200円+税
第2巻 拡張する文化政策  2018年3月刊行予定
ISBN978-4-13-003496-8 本体3,800円+税
第3巻 文化政策の展望  2018年4月刊行予定
ISBN978-4-13-003497-5 本体4,000円+税

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第1巻 文化政策の思想

 文化政策が実践される際にその底流に流れていた思想や主義,原理原則について,主要な基本概念を解説することよって文化政策の原点を明らかにする.特定の国の文化政策の歴史ではなく,過去の文化政策全般を俯瞰したときにみられる複数の概念に注目をし,それらの概念が文化政策の実践に際して,どのように導入され,具体的な実践成果にどういった影響を及ぼしたのかを検証する.
 文化政策は他の政策領域に比して,その導入や実践が遅れてきた分野である.そのために現在,文化政策を語るときに用いられる原理や原則が独り歩きしている傾向が多々ある.
 そのような現状に対して,文化政策の基本的な論点や概念に再度立ち戻り検討することによって,その歴史的な射程を確かめ,文化政策という思想の根源的な姿を浮かび上がらせる.

はじめに
 第I部 国家との相克
第1章 文化と政治 …武田康孝 [独立行政法人職員]
第2章 検閲 …李知映 [東京大学政策ビジョン研究センター特任研究員]
第3章 文化国家 …中村美帆 [静岡文化芸術大学]
第4章 文明の思想 :帝国主義・植民地主義の胎動 …山内文登 [国立台湾大学]
第5章 文化の思想:帝国主義・植民地主義の転生 …山内文登
第6章 文化政策論 …新藤浩伸 [東京大学]
 第II部 権利概念の創出
第7章 文化権 …中村美帆
第8章 芸術の自由 …小林真理
第9章 アーツカウンシル …菅野幸子 [昭和音楽大学舞台芸術政策研究所リサーチ・フェロー]
第10章 分権 …長嶋由紀子 [東京大学大学院人文社会系研究科研究員]
第11章 文化の民主化,文化デモクラシー …土屋正臣 [藤岡市役所]
 第III部 制度規範と文化
第12章 社会教育 …新藤浩伸
第13章 文化的発展 …長嶋由紀子
第14章 文化と経済 …阪本崇 [京都橘大学]
第15章 地域・コミュニティ …友岡邦之 [高崎経済大学]
第16章 文化多様性 …河野俊行 [九州大学]
第17章 文化資源 …小林真理
第18章 仲介者 …佐藤李青 [東京都歴史文化財団]
第19章 アーツアドミニストレーション …鬼木和浩 [横浜市役所]

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第2巻 拡張する文化政策

 文化政策の中心的な課題であった国民国家形成や市民社会形成における芸術振興・芸術普及という狭義の文化政策の範囲を超え,政策形成や実践の現場が横断的に拡大と深化を続ける現在の文化政策の諸相を検討する.そして,文化政策の範囲(ジャンル,分野),制度・施設の形態などが拡張してきた推移や現状を論じ,文化政策が対象とする領域が多様化してきていることを示す.
 たとえば,国レベルで文化政策という政策用語が使用されるのは2000年代に入ってからだが,先進的地方自治体においてはすでに1970年代後半から,文化政策という言葉を批判的に捉えながら「文化行政」論が展開された.そこで展開されたのは,上からの啓蒙的な「文化の民主化」を目指した文化政策のあり方ではなく,文化を個人の教養や感性の滋養といった領域から解き放ち,経済効果や地域振興といった新たな機能を見いだすことであった.
 それはその後の地方自治体の文化行政のあり方に大きな影響を与え,成果をあげた反面,混乱も生じさせた. このような日本の自治体文化行政の展開をふまえつつ,文化政策が諸領域へと展開している実態を描く.

はじめに
 第・部 領域
第1章 文化政策のパラダイム変化 :創作者中心から享受者中心へ …李知映
第2章 文化施設とは何か :建物と人の距離 …新藤浩伸
第3章 英国のアーツ・センターと参加型アートの関わり …菅野幸子
第4章 芸術祭とアートプロジェクトは,新たな制度となりうるか? :プロジェクトからインスティテューションへ …佐藤李青
 第II部 政策概念
第5章 地域アイデンティティ再構築:フランス都市文化政策の戦略 …長嶋由紀子
第6章 文化政策とソーシャル・インクルージョン :社会的包摂あるいは社会包摂 …中村美帆
第7章 国際文化交流と文化外交 :「アジア」の文化理解を一例として …武田康孝
第8章 創造都市と創造産業論の隆盛 …菅野幸子
 第III部 担い手の多様化
第9章 メセナ(企業の文化支援)論 …伊藤裕夫 [元富山大学]
第10章 指定管理者制度時代の文化振興財団の課題と展望 …小林真理
第11章 中間支援の可能性と課題 :築港ARCとアーツコミッション・ヨコハマ …佐藤李青
第12章 アートNPOの展開と実態 :公共の新たな担い手として …吉澤弥生 [共立女子大学]
第13章 参加と協働の具現化 :市民参加型フィールドワークから博物館建設へ …土屋正臣

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第3巻 文化政策の展望

 文化政策の実践/研究の課題と可能性の今後の展望を示す.とくに2000年代以降,文化施設を建設してサービスを提供することを文化行政としてきた現場が,施設を基本としない活動へと変化するとともに,政策を行政が囲い込むのではなく,現状では市民やNPOが主体となって公共的な活動を実践するようになってきている.そこで,ガバナンス論にもみられるような,多様な主体による政策の立案や実践が,文化政策の領域においても展開している状況を描き出す.
 そして,多様な主体による政策実践が注目される事例として論じられながらも,その傾向がさらに拡大していくには現在の制度運用においては限界がある状況を明らかにしつつ,今後に実現が望まれる政策や制度設計について論じる.
 とくに,東日本大震災以降の日本において再認識された,文化の紐帯的機能,歴史・記憶の継承といった機能に着目し,芸術振興を核にしながら拡張されてきた文化政策の再定義および制度の再構築を批判的に検討する.理論的・実践的な考察を重ねてきた本シリーズの全体を総括しつつ,文化政策に関心を持ち,増加をみせている研究や実務に携わる人に向けて,共有されることが望ましい提言をする.

はじめに
 第I部 価値の転換
第1章 文化政策と法 …中村美帆
第2章 保存と活用の二元論を超えて :文化財の価値の体系を考える …松田陽 [東京大学]
第3章 進化を迫られる芸術文化助成 :可能性と諸課題 …若林朋子 [プロジェクト・コーディネーター]
第4章 自治体文化政策策定プロセスにおける文化デモクラシー :共治の実現に向かって …長嶋由紀子
第5章 自治体文化行政論再考 :文化行政が目指すもの …小林真理
第6章 参加と協働のゆくえ :草の根市民参加型発掘調査の文化財保護行政化 …土屋正臣
 第II部 実践の深化
第7章 予測不可能性のなかに眠る可能性を :小金井アートフル・アクション!のこころみ …宮下美穂 [NPO法人小金井アートフル・アクション]
第8章 芸術家の福祉政策 :韓国の事例を中心に …李知映
第9章 カルチュラル・リーダーシップ :文化政策を担う人材の育成 英国の事例から …菅野幸子
第10章 市民文化活動の拠点とその支援 :EU諸国の事例から …新藤浩伸
 第III部 文化政策の再定義
第11章 地域の文化拠点としての文化施設 :東日本大震災後のミッションの再定義を目指して …佐藤李青
第12章 都市の記憶,生活の記憶の場所 :公共ホールにおけるアーカイブ活動の可能性から …新藤浩伸
第13章 デジタル化時代の文化政策 …松永しのぶ [国立国会図書館]
第14章 二つの震災を節目とした文化と社会の関係性の変化 …大澤寅雄 [ニッセイ基礎研究所]

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