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コレクション認知科学[全12巻]認知科学の特長は「何をしてもいい」ということだ.しかし,おもしろい研究をするには,自らが拠って立つメタ理論を持たねばならない.研究を志す者たちを先導(扇動)してきた著者が,自身のメタ理論的研究法のあくなき探究の過程を示し,知的興奮を伝える.
「わかる」ことの原点を問い直す.科学哲学や教育実践の立場から文脈理解に迫る一方,理解における他者とのインターラクションやシンボルの文化的起源の重要性を説き,理解研究の流れをふりかえる.専門分野の異なる第一人者たちの熱い議論を収録.
人が何かをわかるとはどういうことか――認知科学の最重要課題に,視点の設定・移動というような視点活動から迫る.知覚から出発し,概念理解,文学の理解,他者理解などの諸領域での視点の働きの役割と構造を探り,「生態学的」に理論づける.
われわれは,自然言語を介して絶えず推論しながら生きている.語用論的な観点から,条件文を中心とする自然言語の論理と対話者間で共有される暗黙的知識の枠組の位置づけを図り,言語理解に関与する論理的知識と語用論的知識の限定とその相互関係を明確化する.
認知言語学の登場により,修辞学の領域からパラダイム変換を遂げたメタファー研究.積極的な認識のプロセスであり,外界の認知のフィルターである比喩について,語用論の側面から類似性・体系性・文脈との関係性などを分析し,人間の知のメカニズムを考察する.
「形」の完璧な模倣を超えて「型」の習得へ――日本の伝統芸道における「わざ」の伝承過程の神秘にメスを入れ,「状況のなかではじめて成立する理解の仕方」「身体全体でわかっていくわかり方」という学習者の認知プロセスに光をあて,教育実践への応用を図る.
医学・生理学的な無機物と現象学的な思索の対象とに二極化されて語られるばかりだった「からだ」が,見え,空間,イメージ,ノンバーバル・コミュニケーションの記号という認識世界について生き生きと語りだす.後のアフォーダンス研究へとつながる試み.
音楽がわかる,おもしろいと思う認知過程はいかなるものか,優れた作品はいかにデザインされているか,演奏が「構成的」「創造的」と言えるのはなぜか,よい聴き手の条件とは何か――人が日常を芸術に取り込み,また日常へと還元するしくみを追究する.
"怒り""恐れ""驚き""喜び""悲しみ""恋"など,従来,曖味で非合理的なものと考えられてきた感情について,進化・情報処理の側面から,外部状況に応じて適応的行動を選択するための「合理性」を持つ「アージ」システムとして,統一的にとらえようとする.
心は,自然が人間に与えた"記号の計算"の産物である.こうした"計算的人間観"の背景,特徴,可能性を心理学・言語学・人工知能学などとのかかわりから読み解き,その科学的実践法としての"計算アプローチ"の意義を,事例も交えて紹介する.
情報機械としての脳に着目し,単純化した"神経回路網モデル"の動作原理からその本質を探る.脳のなかでの同時並列処理的な情報表現や計算方式の可能性と限界を,その基礎となる原理から丁寧に解説.
進化の隣人であるチンパンジーを知ることは人間を知ること――図形文字による人工言語の学習を通じて,チンパンジーの知覚・認知機能の基本特性をヒトと比較する「AI(アイ)・プロジェクト」初期の記録.比較認知科学の発展に大きく寄与してきた著者の単著第一作.
本シリーズは,1985〜92年にかけて刊行された「認知科学選書」I期・II期計24巻から,現時点で読み返しても今日的な意義が十分高く,改めて読み返されることで,今日盛んに展開されている認知科学研究の源流を知り,新たな方向を探るヒントを与える12巻を,編集委員の合議を経て,新装版として刊行するものである.新装版化にあたっては,原文には筆を加えず,かつての自著を現時点で振り返った「解題」を新たに書き加えていただいた.
わが国の認知科学研究は,1980年前後から急激に広がり,日本認知科学会設立(1983年)当時は,心理学,言語学,計算機科学などにおける若手研究者たちは,「認知科学」という新しい学問領域の創出の意気に燃えていた.執筆者の選定にあたっては,特定の分野に固定することなく,何よりも執筆者自身が「おもしろい」と実感して研究しているかどうかを基準とし,"執筆者の情熱と誠実さと、ものごとを問いつめていく迫力"がビシビシと伝わるように,何度も書き直しや,ブラインド・レビュアーによる査読を依頼して刊行したのだが,今振り返っても,そのねらいはかなり実現したと言えよう.
しかし,どんな学問領域でも20年もたつとかなりの疲弊が出てくるものだ.心理学においても,1940年代にはまさに「総花的」に開花していた行動主義が60年ぐらいにはマンネリ化し,そこに登場した新しい潮流が形をなしたのが「認知心理学」であった.その動きが計算機科学や言語学などの他の学問領域と連合して,80年代の「認知科学」の潮流を生み出した.認知科学はその後,さらに社会学,人類学,脳科学などを巻き込んで非常に大きな研究領域になってきたが,それから20年以上が経過している.
こういうときに,改めて「認知科学」創設の頃の初心に触れることの意義は大きい.各著者の「解題」には,そのような初心に帰るとともに,これからの認知科学を切りひらく,あふれんばかりの探求心の持続とさらなる展開を見ることが出来る.もう一度,「ほんとうにおもしろい認知科学」が復興するきざしが窺われるであろう.
2007年7月 編集委員を代表して 佐伯 胖
はしがき
1 おもしろい研究をするには
2 人間の合理性――規範的合理性の仮説をめぐって
3 人間の状況性――生態学的アプローチ
4 情報処理システムとしての人間
5 経験世界の認知科学
補稿 『認知科学の方法』について(戸田正直/故人・中京大学名誉教授)
*解題 わが国に「認知革命」は起こったのか(佐伯 胖)
プロローグ(佐伯 胖)
1 理解の文脈依存性(村上陽一郎/東京大学名誉教授)
2 算数・数学における理解(銀林 浩/明治大学名誉教授)
3 理解におけるインターラクションとは何か(三宅なほみ/中京大学教授)
4 リテラシーの文化的起源(マイケル・コール/カリフォルニア大学教授)
5 「理解」はどう研究されてきたか(佐伯 胖)
*解題 人はどのようにして「他人の心」を理解するのか(佐伯 胖)
はしがき
I 視点のしくみ
1 見ることと視点
2 見なすことと視点
3 視点を動かすことによる理解
4 視点を見つけること
II 視点の働き――より深い理解へ向けて
5 情景の理解と視点
6 "見る"視点と"なる"視点
7 心情の理解と視点
8 暗黙知としての視点
おわりに
*解題 「視点」から「声」へ――授業における理解研究の展開(宮崎清孝)
*解題 ハイブリッドな集合体としてのエージェンシー(上野直樹)
はしがき
記号一覧
プロローグ 認知科学研究者への案内(佐伯 胖/青山学院大学教授)
序論
1 推論事象の一般的考察
2 条件文の意味論
3 条件文の語用論
4 結論
補稿 自然論理と推論プロセス(山梨正明/京都大学教授)
*解題 条件文研究の現状(坂原 茂)
はしがき
1 序章
2 類似性の認識:隠喩と直喩
3 慣用化と比喩:意味の原型と転義
4 記号化と現実:換喩と提喩
5 比喩と認知のプロセス
6 終章
補稿 「比喩ル」の心――比喩の発達の観点から(岩田純一/京都教育大学教授)
*解題 認知科学とメタファー研究の新展開――認知言語学からのパラダイム変換(山梨正明)
序 型なし文化のなかで
1 「わざ」の習得
2 「形」より入りて、「形」より出る
3 「間」をとる
4 「わざ」世界への潜入
5 「わざ」言語の役割
6 「わざ」から見た知識
7 結び――学校、生活、知識
補稿 なぜ、いま「わざ」か(佐伯 胖/青山学院大学教授)
*解題 「わざ」から「ケア」へ――「知識」とは何かを問いつづけて(生田久美子)
はしがき
序 認識の場としての「からだ」
1 見ることと動くからだ
2 ひろがりを描きだすからだ
3 イメージとからだ
4 記号としてのからだ
終 「からだ」をとりもどすために
対談 『からだ:認識の原点』をめぐって(竹内敏晴/演出家・佐伯 胖/青山学院大学教授)
*解題 (佐々木正人)
はしがき(波多野誼余夫)
1 楽曲分析における認知(村尾忠廣/愛知教育大学教授)
2 旋律はいかに処理されるか(阿部純一/北海道大学教授)
3 演奏に含まれる認知過程――ピアノの場合(大浦容子/新潟大学教授)
4 音楽認知のための知識表現(平賀 譲/筑波大学教授)
補稿 音楽の認知的理論をめざして(波多野誼余夫)
*解題 逸脱を予知しながら生じる音楽の情動(村尾忠廣)
はしがき
1 感情とアージ
2 アージの働きの基本構造
3 アージの働きの意思決定論模型
4 アージと社会
5 連合体、そしてムード
補稿 効用と適応 (高田洋一郎/東京女子大学名誉教授)
*解題 感情システムと認知システム――アージ理論の立場から
*解説 (三宅なほみ/中京大学教授)
はしがき
序章
1 計算的人間観
2 心の科学をめぐって
3 記号の計算としての認知
4 コネクショニズムの計算観
5 心の理論としての計算プログラム
6 経験科学としての計算アプローチ
7 理論科学としての計算アプローチ
8 おわりに――心の科学と認知科学
補稿 生成文法と計算(郡司隆男/大阪大学教授)
補稿 認知科学文化論考――わざとこころ(齋藤洋典/名古屋大学教授)
*解題 (徃住彰文)
はしがき
1 脳とコンピュータ
2 ニューロン、基本素子、神経回路網
3 神経回路網による情報変換
4 対称結合の回路網のダイナミックス
5 連想記憶モデルのダイナミックス
6 ボルツマン機械
7 ニューロンの学習
8 多層の学習回路網
9 神経回路網の自己組織化
補稿 哲学における〈コネクショニズム〉(黒崎政男/東京女子大学教授)
*解題 脳科学がコネクショニズムに示唆するもの――20年の歳月を経て(甘利俊一)
道案内 比較認知科学への期待(波多野誼余夫/故人・元放送大学教授)
1 チンパンジーを被験者とした認知科学の成立
2 AIプロジェクト
3 物の命名
4 色の知覚
5 形の知覚
6 イメージの回転と対称性
7 個体認知
8 記憶
9 教の概念
10 言語の二重性
11 比較認知科学への展望
12 エピソード
*解題 (松沢哲郎)