越境する知[全6巻]

1 身体:よみがえる

[執筆者] 栗原彬/佐藤学/宇野邦一/如月小春/安積遊歩/若桑みどり/千野香織/鎌田慧/甲野善紀/前田英樹/宇佐美圭司/佐々木正人/荒川修作

2 語り:つむぎだす

[執筆者] 栗原彬/小森陽一/テツオ・ナジタ/篠原資明/寺戸淳子/野辺明子/港千尋/高橋哲哉/冨山一郎/好井裕明/山田富秋/鵜飼哲/安克昌/緒方正人

3 言説:切り裂く

[執筆者] 小森陽一/吉見俊哉/菅野盾樹/宇井純/吉岡斉/金子勝/佐藤健二/小畑清剛/成田龍一/太田好信/中村和恵

4 装置:壊し築く

[執筆者] 佐藤学/吉見俊哉/大澤真幸/水内俊雄/若林幹夫/市野川容孝/原田正純/早瀬昇/イ・ヨンスク/塩崎紀子/佐藤学/北田暁大

5 文化の市場:交通する

[執筆者] 栗原彬/吉見俊哉/キャロル・グラック/森下みさ子/紅野謙介/田口久美子/森まゆみ/大越愛子/清水諭/キース・ヴィンセント/岩渕功一/立岩真也/間宮陽介

6 知の植民地:越境する

[執筆者] 小森陽一/佐藤学/酒井直樹/川村湊/村井紀/川村邦光/姜尚中/タイモン・スクリーチ/テッサ・モーリス-鈴木/西成彦/古谷嘉章/岡真理



刊行の言葉

 私たちは誰もが近代知の囚われ人である.「シリーズ越境する知」は,この囚われをつき破り,編者と執筆者が自らを変える知的実践として企画され編集された.このシリーズは,したがって,専門家が学問の技法を超越的・啓蒙的に提示しようとするものではない.知が作動する現場に身を投企し,神話化されていた知を非神話化し,脱神話化されてきた知を身体化する格闘をとおして,近代の知を〈内破する〉主体の闘争を遂行する試みである.企画,編集,執筆の作業それ自体が身体と言葉と権力を編みなおす実践であり,シリーズの刊行はどこまでも〈始まり〉を準備する未完の挑戦なのである.
 本シリーズにおける知の越境とは,学問分野の越境であるだけでなく,文化や芸術の境界の越境であり,国と国との境界の越境であり,階級,人種,性,世代の境界の越境であり,精神と身体の越境であり,言葉と権力が作動するあらゆる境界の越境を意味している.私たちは,知の越境を,ポストモダンの哲学のように超越的な思考や,場と身体を持たない思考によって遂行しているのではない.1人ひとりが当事者として生の現場に参入し,受苦し引き裂かれる身体の狭間にざわめき胎動する知を,ダイアローグの言語によって掬い上げる実践を試みている.国家や家族や企業や市場や学校や大学という装置に体制化された近代の知の編制を内側から突き崩す挑戦である.
 シリーズの編集においては「知の身体」「知の語り」「知の言説」「知の装置」「知の市場」「知の植民地」という問題群を設定し,それぞれにおいて今もっとも発言していただきたい方々に執筆を依頼した.執筆に先立って中間シンポジウムを開き,編者と執筆者が一堂に会して,問題の構制をめぐって対話と批判を交した.本シリーズに寄せられた論文はいずれも著者の息遣いと意思が溢れ出す渾身の探求の軌跡であり,大学と学問のあり方はもとより,市民社会の知のあり方を根源から問い直し,現場性と身体性と批評性をそなえた知の胎動を生み出している.「越境する知」の実践は,いたるところでますます切実なものとなっている.本シリーズが幅広い読者との対話を準備し,新たな知を創出する闘いの発火点になることを期待している.

栗原彬・小森陽一・佐藤学・吉見俊哉