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現代の階層社会[全3巻]
シリーズの特色
●全国の社会階層研究者の協力を得て行なわれた一大調査プロジェクトの研究成果
●半世紀の長きにわたり継続されてきた大規模な全国調査の蓄積に,最新版の調査データを加えて実証的に分析
●格差や不平等などの社会問題を詳細なデータ分析と最先端の統計分析を用いて明らかにする
●教育や労働,世代や地域など,さまざまな視点から社会階層の姿を浮かび上がらせ,現代日本社会の諸問題を総合的にとらえる
ワーキングプア,非正規雇用の増大,結婚をめぐる格差,教育の不平等など,現代社会のさまざまな局面で多様な格差問題が噴き出している.これら格差の諸相を丹念なデータ分析によって解明し,私たちの社会がかかえている問題群,その根源を探究する.
格差問題がクローズアップされる現代社会.階層・階級の世代間継承性は強まっているのか,階層構造は揺らいでいるのか,学校から就職への移行過程は変化しているのか.日本の調査データだけでなく,韓国,台湾の調査データも駆使して,これらの疑問に答える.
グローバリゼーションの進行,ネオリベラリズムの席捲,労働市場の流動化によって人びとの社会意識と階層意識はどのように変化したのか.個人化した社会で人びとはどのように社会に関わろうとするのか.詳細なデータ分析により,人びとの意識の深層に迫る.
本シリーズは,2005年社会階層と社会移動全国調査(略称2005年SSM調査)プロジェクトの研究成果を一般読者向けにまとめたものである.SSM調査は1955年から10年ごとに実施されている.その主要なテーマは,調査名があらわすように,社会階層間の不平等・格差と階層間の社会移動である.社会階層研究が一時点の階層構造の断面図を描くことを目的としているのに対し,社会移動研究は世代間(親子間)や世代内(たとえば初職と現職)の移動機会を問題とする.
2005年SSM調査もこの主要テーマを踏襲している.しかし1990年代前半のバブル経済崩壊後,従来のSSM調査の枠組では捉えきれない現象が生じてきた.それは一言でいえば,階層構造の流動化である.流動化は階層構造のさまざまな側面で生じている.非正規雇用者の増加や終身雇用制の弱体化,学校から仕事への移行過程の変容など,多くの例をあげることができる.これらの現象はSSM調査の基本的理論枠組に対する挑戦であった.なぜなら,SSM調査では,暗黙のうちに,正規雇用と安定した職業経路(キャリア・パス)を前提としていたからである.しかし流動性の高まりは,これらの前提に基づいた分析の有効性に対する疑問を生み出した.この疑問に答えること,すなわち流動性の高まりを正面から捉えること,これが2005年SSM調査プロジェクトの眼目である.
しかしここで注意すべきことがある.それは,階層構造が流動化しているといっても,すべての部分で流動化しているわけではない,ということである.非正規雇用者が増加している一方で,労働市場の中核部分には安定した正規雇用者が存在する.そして,学歴が高い人ほどこの中核部分に入りやすいことが多くの研究によって指摘されている.また若年層や女性が非正規雇用部門に入りやすいことも明らかにされている.これらのことは,学歴階層や年齢階層,ジェンダーが,流動化する社会のなかで格差を生み出していることを示唆する.このように,流動化現象を均質的なものと扱わず,階層理論の視点から捉えることが本プロジェクトの第1の特色である.とりわけ,流動化の影響をもっとも強く受けている若年層のおかれた状況を的確に把握するため,従来のSSM調査の枠組に加えて,若年層を対象とした調査も行った.
第2の特色は韓国,台湾との国際比較を行っていることである.社会階層と社会移動の国際比較は日本と欧米社会との比較が多かった.それらは優れた知見をもたらしたが,東アジアにおける日本の位置づけについてはあまり行われてこなかった.東アジア社会として多くの共通性をもちながらも,日本,韓国,台湾では階層構造の流動化のありかたが異なっている.その一因は労働市場における制度や構造の違いである.これらの共通点と相違点を明らかにすることで,日本における階層構造の流動化をより的確に捉えることができる.
これらの特色を持った2005年SSM調査では,2005年から2006年にかけて,日本,韓国,台湾で20歳から69歳までの人々を対象に,2007年に若年層を対象に調査を行った.調査データを用いた分析結果は全15巻の調査報告書にまとめられている.本シリーズ所収の論文は,この調査報告書を基にしつつ,日本の格差問題や流動化について関心のある一般読者向けに書き下ろしたものである.
本シリーズは3つの巻からなる.第1巻は,マスコミ等で頻繁に取り上げられる格差問題を階層理論と厳密なデータ分析によって解明している.第2巻は,SSM調査の本流ともいえる社会移動と階層構造の解明に取り組んでいる.第3巻は,流動性の高まる社会における社会意識の構造と変容を対象としている.
本シリーズが現代日本社会における社会階層や格差問題の現実に対する読者の理解をより深め,よりよい社会への模索に寄与することを,執筆者一同,心から希望している.
I 格差社会の実相
1章 現代日本の格差の諸相――転職とワーキングプアの問題を中心にして (佐藤嘉倫[東北大学]・林雄亮[立教大学])
2章 初期キャリアの流動化と所得への影響 (吉田崇[東京大学])
3章 ジョブホッパー――転職パターンの多様性と格差 (浦坂純子[同志社大学])
4章 分断化される若年労働市場 (中澤渉[東洋大学])
5章 学校から職業への移行とライフチャンス (佐藤香[東京大学])
6章 若年不安定就労層にみる地域格差 (栃澤健史[大阪大学]・太郎丸博[京都大学])
7章 長時間労働をもたらす「不平等」な条件 (長松奈美江[関西学院大学])
8章 妻の就業と所得格差 (尾嶋史章[同志社大学])
II 生活の多様性と格差
9章 若年非正規雇用と結婚 (太郎丸博)
10章 ライフイベントとジェンダー格差――性別役割分業型ライフコースの貧困リスク (中井美樹[立命館大学])
11章 女性のM字型ライフコースの日韓比較――出産後の再就職に注目して (大和礼子[関西大学])
12章 多様化する世帯構造における主観的な格差――生活満足度の散布指数による検討 (保田時男[大阪商業大学])
13章 高齢者の社会的地位と格差 (岩井八郎[京都大学])
14章 ワーク・ライフ・バランス――多様性と格差 (杉野勇[お茶の水女子大学])
15章 消費からみるライフスタイル格差の諸相 (中井美樹)
III 格差社会における教育
16章 ひとり親家庭における子どもの教育達成 (稲葉昭英[首都大学東京])
17章 教育達成過程における階層差の生成――「社会化効果」と「直接効果」に着目して (荒牧草平[九州大学])
18章 教育投資の規定要因と効果――学校外教育と私立中学進学を中心に (都村聞人[東京福祉大学]・西丸良一・織田輝哉[慶應義塾大学])
19章 高等教育の大衆化は何をもたらしたのか?――グレーゾーンとしての「専門学校」 (濱中義隆[大学評価・学位授与機構]・米澤彰純[名古屋大学])
20章 大学院をめぐる格差と階層――大学院進学の規定要因と地位達成における大学院の効果 (村澤昌崇[広島大学])
I 社会移動の諸相
1章 社会移動の趨勢と比較 (石田浩[東京大学]・三輪哲[東北大学])
2章 上層ホワイトカラーの再生産 (石田浩・三輪哲)
3章 労働市場の構造と自営業への移動に関する国際比較 (竹ノ下弘久[静岡大学])
4章 労働者階級はどこから来てどこへ行くのか (橋本健二[武蔵大学])
5章 世代間所得移動からみた機会の不平等 (吉田崇[東京大学])
II 教育と階層
6章 教育達成における階層差の長期的趨勢 (近藤博之[大阪大学]・古田和久[新潟大学])
7章 教育達成の日台韓比較 (鹿又伸夫[慶應義塾大学]・裵智恵)
8章 教育アスピレーションからみる現代日本の教育の格差――趨勢変化と国際比較を通じて (相澤真一[日本学術振興会])
9章 高校平準化と社会階層――日本と韓国にみる高校間格差解消政策の帰結 (中村高康[東京大学])
10章 大学の学校歴を加味した教育・職業達成分析 (平沢和司[北海道大学])
III 流動性と職歴・転職
11章 職歴からみる雇用の流動化と固定化――職業経歴の多様性 (渡邊勉[関西学院大学])
12章 日本型就職システムの変容と初期キャリア――「包摂」から「選抜」へ? (香川めい[立教大学])
13章 学歴と初期キャリアの動態――戦後日本型ライフコースの変容 (岩井八郎[京都大学])
14章 女性のライフコースと就業――M字型カーブの行方 (平田周一[労働政策研究・研修機構])
15章 就職におけるネットワークの役割――戦略的資源かサポート資源か (石田光規[大妻女子大学]・小林盾[成蹊大学])
16章 転職時の収入変化――高度経済成長期から2000年代までの構造と変容 (林雄亮[立教大学])
IV 階層構造
17章 東アジアの社会階層構造比較――報酬・地位の違いを生み出す変数は何か? (有田伸[東京大学])
18章 地位達成モデルの東アジア国際比較 (中尾啓子[首都大学東京])
19章 職業評定の国際比較――日本・韓国・アメリカの3国間比較 (元治恵子[明星大学])
20章 少子化社会の階層構造――階層結合としての結婚に着目して (白波瀬佐和子[東京大学])
21章 社会空間アプローチによる階層の分析 (近藤博之)
I 階層意識の変容
1章 転態する階層帰属――階層化社会の「見え姿」をめぐって (佐藤俊樹[東京大学])
2章 高学歴化と階層帰属意識の変容 (数土直紀[学習院大学])
3章 「中」であること・「下」であることの意味――心理・行動パターン分析の試み (神林博史[東北学院大学]・星敦士[甲南大学])
4章 「政党」支持の時代変遷――階層は政党といかに関わってきたか? (田辺俊介[東京大学])
5章 階層意識の現在とゆくえ (吉川徹[大阪大学])
6章 階層意識の分析枠組――価値意識を中心として (轟亮[金沢大学])
II 働き方意識の動態
7章 雇用流動化社会における働き方と階層帰属意識 (小林大祐[仁愛大学])
8章 格差社会のなかの仕事の価値志向――脱物質主義化仮説の再検討 (米田幸弘[和光大学])
9章 労働時間の多様化と生活満足――就労意識の媒介メカニズム (本田由紀[東京大学])
10章 職場の人間関係と仕事満足――職場承認感を手がかりに (筒井美紀[法政大学])
11章 中高年の労働条件とストレス (片瀬一男[東北学院大学])
12章 女性の働き方と性別役割分業意識 (裵智恵)
III 格差の評価と分配の理想
13章 「新自由主義の受容」は何により促されたか――市場化と価値意識 (斎藤友里子[法政大学])
14章 格差と政治的価値――メリトクラシー社会の理念と市民社会の理念 (土場学)
15章 不公平感の構造――格差拡大と階層性 (斎藤友里子・大槻茂実[首都大学東京])
16章 望ましい収入はどう決まるか?――収入アスピレーション・レベルの最適化モデル (浜田宏[東北大学]・石田淳[関西学院大学])
17章 ソーシャル・セーフティネットと社会階層――公的年金制度への依存に着目して (木村好美[早稲田大学]・三隅一人[九州大学])
IV 共同と連帯の階層的構成
18章 中間集団による連帯の可能性 (三隅一人・岩渕亜希子[追手門学院大学])
19章 パーソナル・ネットワークの保障機能 (菅野剛[日本大学])
20章 格差・信頼とライフチャンス――日本の自殺率をめぐって (与謝野有紀[関西大学])
21章 階層化/保守化のなかの「参加型市民社会」――ネオリベラリズムとの関係をめぐって (仁平典宏[法政大学])
22章 ジェンダーと社会参加 (岩間暁子[立教大学])
23章 政党好感度・政党支持・投票行動――政権交代の基礎にあるもの (小林久高[同志社大学])
24章 サービス業化社会における社会参加と投票態度 (高田洋[札幌学院大学])