シリーズ図書館情報学[全3巻]

シリーズの特色
●日本における図書館情報学(library and information science)の理論,歴史,技術,実務の各側面を対象とし,その全体像を概説するシリーズ.
●図書館情報学の基礎から応用まで,必要なトピックをシリーズ3冊ですべて網羅.
●日本図書館情報学会が情報専門職養成を目的として,2007年度から試験的に実施している図書館情報学検定試験のためのテキスト.
●図書館情報学の基礎概念を考察する第1巻,情報資源を効率的に運営していくための組織化技術を解説する第2巻,図書館を中心とした情報資源を扱うセクターを運営や経営といった社会的観点から検討する第3巻でシリーズを構成.


1 図書館情報学基礎  根本 彰 編

 第1巻は,本シリーズ全体が採用している視点を明確にし,図書館情報学が何を対象にしてどのような方法でアプローチしているのかについて論じる.とくに,主要な概念である知識と資料,情報メディア,情報利用,学術コミュニケーションを理論的に位置づけ,図書館情報学において開発された方法である計量情報学を概観することで,現在の図書館情報学の学術的な取り組みについて述べる.
 第1章では,以降の巻で扱う「情報資源」について,「言語・情報・知識」,「知識メディアとしての図書」,「コレクションと図書館」という3つの観点から検討した上で,シリーズ全体を貫く「図書館情報学の視点」を提示する.さらに,図書館情報学を理解する上で踏まえておくべき,重要な柱である「メディア」(第2章),「情報利用者と利用行動」(第3章),「学術コミュニケーション」(第4章),「計量情報学」(第5章)の各論を章ごとに概観する.これらの各論を踏まえ,最後の第6章では,「図書館情報学」そのものの領域について,歴史,専門職の扱い,図書館情報学教育といった側面から検討を行う.

2 情報資源の組織化と提供  根本 彰・岸田和明 編

 第2巻は,情報資源の組織化という側面について,これまでの図書館情報学での知見や蓄積を反映しながらも,本シリーズが目的とする図書館情報学の最新の動向を踏まえ,組織化の技術について論じた後,これら組織化によって可能となるサービスについて論じる.
 第1章で情報資源を管理する上で必要な基礎概念である書誌記述や主題表現について述べ,それらを効果的,効率的に運営していくためのデータベース構築について説明する.第2章では,組織化を行う上で必要とされる規則について,概念モデルや実際の例を取り上げつつ,メタデータ記述規則であるダブリンコアの説明を行う.第3章では,情報資源をコレクションとして配置し検索可能にするために必要な分類,索引の方法についてふれた後,第4章では,これら情報資源をコンピュータで検索する際にはどのような仕組みが取られるのか数式を用いて記述していく.第5章では,ウェブの発達により可能となった情報資源の組織化とその動向についてふれ,第6章では,これらの組織化によって可能となる情報サービスについて実際の動向を踏まえながら説明を加える.

3 情報資源の社会制度と経営  根本 彰 編

 第3巻は,情報資源を扱う公的セクターおよび私的セクターについて,制度ならびに経営という観点から検討していく.
 第1章では,情報資源をめぐる理念と制度についてナレッジマネジメント,流通セクター,政府の役割といった観点から検討を加える.第2章では,制度を構築する上で考慮すべき法律について確認していく.第3章では,情報資源経営・管理の状況について,現在の制度を中心に記述する.第4章では,従来は別個に論じられることの多かった国立図書館,公共図書館,大学図書館,学校図書館について,情報資源経営という観点から同一の章でそれぞれ検討を加える.第5章では,これまで図書館情報学が中心的に扱ってきた公的セクターに属する図書館以外の関連領域として,専門図書館,公文書館やMLA(博物館,図書館,文書館)連携についても述べる.そして,従来印刷メディアをもっぱら扱ってきた図書館へ転換を迫る電子書籍の状況についてふれながら,図書館が扱うべき「情報資源」について検討する.



シリーズ刊行にあたって

 本シリーズは,21世紀になってからの社会的,技術的動向を踏まえて,日本の図書館情報学(library and information science)の全体像を示す概説書である.これは,同時に高等教育機関における図書館情報学専門教育のための標準的な教科書となることも目指している.(中略)
 本シリーズは,図書館情報学について2000年以降の社会的,技術的動向を踏まえた記述を行っている.既存の司書養成について教科書が各社より出版されているものの,司書資格が公共図書館司書を前提としているために,図書館情報学の立場からすると限界が指摘されやすかった.本シリーズは,国際的な状況を含めて図書館情報学の全体像を示し,研究に関する最新の知見を反映することを目的としている.
 また,これまでの教科書は,図書館が公的施設であるためもっぱら公共セクターにおける知識情報基盤の構築を前提にしていたが,本シリーズは,近年の政治経済の動向を踏まえて公共セクターと民間セクターが補完し合う状況を想定している.加えて,デジタル情報ネットワーク技術の進展,とくにインターネットが図書館情報学の重要な基盤となってきた状況を強く意識し,メディアの態様がパッケージメディアとネットワークメディアの双方を扱う必要性を持ってきたことや,情報行動や利用者ニーズへの変化や研究の進展についても触れている.
 本シリーズのねらいは,図書館情報学を専攻する研究者や学生,専門分野の実務家に対して,この分野で学ぶことの意味を理解してもらい,基本的な知識を得るための概説書となることである.その際,内容的に3つに分けて,第1巻を『図書館情報学基礎』として総論・方法を扱う巻,第2巻を『情報資源の組織化と提供』として情報技術とツールおよび提供の方法を扱う巻,第3巻を『情報資源の社会制度と経営』として法律,行政制度,経営と具体的な図書館の種別を扱う巻とした.この分け方は伝統的なものに基づいているが,それはデジタルメディアへの移行においてもこの領域の構造そのものに変化はないことを意味している.(中略)
 図書館情報学はここ20年ほど足踏みしているように見えたかもしれない.それはデジタル情報システムとネットワークの技術的動きがこの分野のもっとも基本的なところに揺さぶりをかけたからである.しかしながら,本シリーズはその動きが一段落したとの認識のもとに,この動向の全容を踏まえて,図書館情報学はさまざまな貢献が可能であるとの提案も含んだ出版物として世に問うものである.本シリーズの刊行によって,今後の図書館情報学が21世紀の新たな展開に向けて動き出す一歩を踏み出すきっかけとなることができれば幸いである.

シリーズ編者 根本 彰        


各巻詳細

第1巻 図書館情報学基礎

第1章 知識と図書館情報学(影浦 峡/海野 敏/三浦太郎/根本 彰)
第2章 メディアと知識資源(海野 敏)
第3章 情報利用者と利用行動(三輪眞木子/河西由美子)
第4章 学術コミュニケーション(倉田敬子)
第5章 計量情報学(芳鐘冬樹/鈴木崇史)
第6章 図書館情報学をつくる(根本 彰)

第1巻執筆者一覧
根本 彰(東京大学)[担当箇所:第1章,第6章]
影浦 峡(東京大学)[担当箇所:第1章]
海野 敏(東洋大学)[担当箇所:第1章,第2章]
三浦太郎(明治大学)[担当箇所:第1章]
三輪眞木子(放送大学)[担当箇所:第3章]
河西由美子(玉川大学)[担当箇所:第3章]
倉田敬子(慶應義塾大学)[担当箇所:第4章]
芳鐘冬樹(筑波大学)[担当箇所:第5章]
鈴木崇史(東洋大学)[担当箇所:第5章]


第2巻 情報資源の組織化と提供

第1章 情報資源の管理とアクセス(岸田和明)
第2章 情報資源組織論I:資源組織化(谷口祥一)
第3章 情報資源組織論II:分類・索引(岸田和明)
第4章 情報検索(岸田和明)
第5章 ウェブ情報資源の管理とアクセス(岸田和明/常川真央)
第6章 情報資源と情報資源サービス(小田光宏/野末俊比古)

第2巻執筆者一覧
岸田和明(慶應義塾大学)[担当箇所:第1章,第3章,第4章,第5章]
谷口祥一(慶應義塾大学)[担当箇所:第2章]
常川真央(筑波大学)[担当箇所:第5章]
小田光宏(青山学院大学)[担当箇所:第6章]
野末俊比古(青山学院大学)[担当箇所:第6章]


第3巻 情報資源の社会制度と経営

第1章 情報資源制度論の構造(根本 彰)
第2章 情報資源管理の法的関係(南 亮一)
第3章 情報資源経営の基礎(松本直樹)
第4章 情報資源経営各論I(根本 彰/松本直樹/竹内比呂也/中村百合子)
第5章 情報資源経営各論II(根本 彰/古賀 崇/研谷紀夫)

第3巻執筆者一覧
根本 彰(東京大学)[担当箇所:第1章,第4章,第5章]
南 亮一(国立国会図書館)[担当箇所:第2章]
松本直樹(大妻女子大学)[担当箇所:第3章,第4章]
竹内比呂也(千葉大学)[担当箇所:第4章]
中村百合子(立教大学)[担当箇所:第4章]
古賀 崇(天理大学)[担当箇所:第5章]
研谷紀夫(関西大学)[担当箇所:第5章]