ワークプレイス・パーソナリティ論
人的資源管理の新視角と実証
いま注目される、職場の「こころ」。
独自の実証研究により日本企業への提言を引き出す。
職場の「こころ」に注目が集まっている。ビッグファイブ、ダーク・トライアド、GRITなどの世界的に蓄積されたパーソナリティ研究の知見は、どのように職場のデザインと働き方に活かしていけるものなのだろうか。これまでは捉えどころがなかった職場におけるパーソナリティ理論の系譜と世界的潮流に研究者と実務家はどのように対峙して、理解を進めればよいのだろうか。採用、選抜、育成、評価、それぞれの人事活動に関連する世界中の膨大なパーソナリティ研究を体系的・包括的にレビューし、独自の実証研究によってこれからの日本企業への提言を引き出す。
【本書「はじめに」より】
昨今の経営活動の一大潮流は「人間心理への注目」であることは間違いない。これまでは経営成果や組織行動に注目が集まっていたが、その背景にある心理的安全性、エンゲージメント、1 on 1ミーティングなど、人間心理から企業活動を理解しようという試みがこれまでにない勢いでなされ始めている。そのような中で、「パーソナリティ」という幅広い人間心理を扱う研究分野をこれからは無視できなくなる。
例えば、ワークプレイスの心理的安全性を破壊するような社員がいる。組織内で他者からの高い評価を求めながら、他者との軋轢を自ら生むような組織行動をとる社員がいる。1 on1ミーティングによって部下の業務熟達を促進できる上司とできない上司がいる。入社後すぐに会社に馴染んで活躍する社員と馴染めずに伸び悩む社員がいる。これらの社員の心理を理解するためには、パーソナリティ理論が必要不可欠だ。……
パーソナリティ理論は経営学分野ではなく、学校教育・医療などを場面とした心理学分野で長年の研究の歴史を持ち、膨大な知識の蓄積がある。この蓄積された成果をワークプレイスに適用し、採用や評価などの人的資源管理の諸施策に展開することが国内外で求められており、そのための体系的な解説書が望まれるところである。
本書は、それに取り組むものである。主要なパーソナリティ理論に着目し、ワークプレイス・パーソナリティとしてとりまとめ、それを人的資源管理論に展開するのが本書の目指すところである。
第Ⅰ部 理論編
第1章 「ワークプレイス・パーソナリティ」の理論的布置
1.1 定義
1.2 人的資源の側面
1.3 非認知的側面としてのパーソナリティ
1.4 パーソナリティの基礎理論
1.5 本書の新たな試み
1.6 成果への展望
第2章 主要なパーソナリティ理論
2.1 ビッグファイブ研究
2.2 ダーク・トライアド研究
2.3 GRIT研究
2.4 HSP研究
2.5 自意識研究
第Ⅱ部 人的資源管理論の3過程
第3章 採用・選抜
3.1 採用研究
3.2 選抜研究
3.3 まとめ
第4章 育成
4.1 オン・ボーディング研究
4.2 組織社会化研究
4.3 経験学習研究
4.4 まとめ
第5章 評価
5.1 行動評価研究
5.2 業績評価研究
5.3 まとめ
第Ⅲ部 実証と展開
第6章 日本企業における実証分析
6.1 採用・選抜とパーソナリティ
6.2 育成・評価とパーソナリティ
6.3 職務成果とビッグファイブ
6.4 まとめ
第7章 理論発展と日本企業への提言
7.1 理論発展への新たな貢献
7.2 日本企業への提言
おわりに