保育学講座【全5巻】

著者
日本保育学会
シリーズ
保育学講座
内容紹介
著者紹介
シリーズ刊行にあたって

 一般社団法人日本保育学会は、1947年に発足しました。それ以来、保育にかかわる日本最大の学術団体として「乳幼児の健やかな成長のために、保育の実践者と研究者が協力する場」を設け、それぞれの時代に、保育にかかわる学術的知見にもとづく社会的な貢献をめざし、実践と研究の懸け橋としての努力を続けてきています。
 2015年4月1日から子ども・子育て支援新制度が始まりました。戦後最大の改革とも言われます。子ども・子育てにかかわる行財政制度が変わり、幼稚園・保育所の二元制度から、幼保連携型認定子ども園や小規模保育などを含む多様な施設のあり方へと向かっています。少子高齢化の進む日本において、日本保育学会として最も重要と考えられることの一つが、保育の質の確保・向上に寄与する学術的知見を生みだし、保育界や国・自治体、保育者と協働しながら、子どもの豊かな育ちを保障する質の高い保育実践を探究し、子どもや保育者、保護者のいま、そしてこれからの幸せをめざして社会に貢献していくことです。そのためには、保育学が「学」として新たな知見を発信することと、保育学という固有の学問分野をより広く社会に周知させ、学問的なエビデンスにもとづいた議論が、国や自治体でも行われるようにしていくことが必要ではないかと考えられます。
 「保育学の進歩」という講座を日本保育学会が創設30周年記念として刊行したのは1976年、今から40年前のことです。以後、保育学全体を俯瞰できる学術講座は刊行されていません。当時の編集企画意図として、「我が国の保育学もついにここまできたかと思われるような高い程度の系統的な内容をもつ研究書」「我が国の保育学の進歩について系統的な知識が概論的に理解できるもの」「執筆者自身の研究はもとより、従来の研究、文献の概況、将来の展望その他にふれられており、保育学の入門書としても役立つもの」という文言が記されています。本シリーズは、その先達の精神を受け継ぎ、保育学の発展を示す羅針盤となる講座をめざして企画しました。いわゆる保育者養成を主たる目的とするテキストではなく、保育学の「学」としての現在までの到達点やその発展の方向性を示すことを目的とした講座です。
 そのために、日本保育学会として、編集委員会を会長・副会長、執行部を含む9名の委員で組織し、保育学をとらえるための5本の柱を立てました。その柱である各巻の内容を検討して目次を作り、各章の内容を執筆するのにふさわしい人材を学会理事・評議員からご推薦いただき、その領域の業績等から適任の方を編集委員会で選定し、執筆を依頼しました。
 本シリーズは、学問分野としての「保育学」を社会の多くの方に理解していただくこととともに、これからの保育学を担う若手研究者にこれまでの研究発展の里程標を提供することを目的としています。子どもは私たちの社会の未来を築く宝です。いま、子どもたち一人ひとりの尊厳と、最善の利益をだいじにする保育が、国内外で求められています。これからの保育のあり方を共に考えていただくための智の集大成として、多くの方に読んでいただけましたら幸いです。

日本保育学会保育学講座編集委員
秋田喜代美 村山祐一 戸田雅美
小川清実 大豆生田啓友 柴崎正行
渡邉保博 小林紀子 太田光洋

 

 

シリーズの特長
保育は、教育と社会保障の鍵となる喫緊の最重要課題です。本シリーズは、「保育学とは」「保育を支えるしくみ」「保育のいとなみ」「保育者を生きる」「保育を支えるネットワーク」という5本の柱から、現在の保育の課題の背景を構造的に読み解くことをめざしています。保育者養成に携わる方、保育学研究を志す方はもちろん、子育て中の方や子どもを理解し子育て支援に関わろうとする方をはじめ、多くの方々にぜひお読みいただきたいシリーズです。
●学問分野としての保育学の知見を系統的にとらえる
●従来の研究・文献の概況を整理し将来の展望を示す
●最新の学問的成果にもとづき実践と研究をつなぐ

 

保育学講座1 保育学とは――問いと成り立ち


代表編者 秋田喜代美

 

保育学は、社会の中の保育のいとなみや制度の歴史変化を問い、保育が包含する課題群を各時代状況の中で探究解明してきました。保育学は日本においてどのように成立し、何を問い、そしてこれからどこに向かおうとしているのでしょうか。第1巻では、保育の基本的な考え方と保育を問う学問の視点とは何かを論じます。

 序 …秋田喜代美 (東京大学)
第I部 保育学とは
 第1章 子育てと保育 …汐見稔幸 (白梅学園大学)
 第2章 保育という語の成立と展開 …湯川嘉津美 (上智大学)
 第3章 保育を支えてきた理論と思想 …小川博久 (東京学芸大学名誉教授)
 第4章 保育学としての問いと研究方法 …秋田喜代美
第II部 保育学のあゆみ
 第5章 保育実践と保育方法の展開 …福元真由美 (東京学芸大学)
 第6章 保育内容とカリキュラムの変遷 …柴崎正行 (東京家政大学)
 第7章 保育環境と施設・設備の変遷 …笠間浩幸 (同志社女子大学)
 第8章 専門家としての保育者の歴史 …浜口順子 (お茶の水女子大学)
 第9章 世界に一人しかいない「この子」の保育 …堀 智晴 (元・大阪市立大学)
第III部 グローバル化の中での保育学のこれから
 第10章 保育の質と卓越性 …無藤 隆 (白梅学園大学)
 第11章 保育制度の変化と保育政策 …網野武博 (東京家政大学)
 第12章 保育学研究者の役割とネットワーク …小川清実 (東京都市大学)

保育学講座2 保育を支えるしくみ――制度と行政


代表編者 村山祐一

 

今日、少子化対策、子育て支援施策が進められる中で、保育のいとなみや子育てを支えるしくみやそのあり方がきわめて重要になっています。第2巻では、保育・子育て支援にかかわる制度・政策、行政の歩みを踏まえ、新制度の特徴やあり方、今後の課題について検討します。

 序 …村山祐一 (元・帝京大学)
第I部 保育制度・政策の動向
 第1章 保育所と幼稚園制度の現状と課題 …岡 健 (大妻女子大学)
 第2章 少子化対策と保育施策 …近藤幹生 (白梅学園大学)
 第3章 一体化・一元化の動向と課題 …村山祐一
 第4章 学童保育、障害児保育、子育て支援事業等の施策の動向 …望月 彰 (愛知県立大学)
 第5章 OECD 諸国の保育政策の特徴 …一見真理子 (国立教育政策研究所)
第II部 保育所・幼稚園の役割と保育所最低基準・幼稚園施設基準
 第6章 保育所最低基準と規制緩和政策 …逆井直紀 (保育研究所)
 第7章 幼稚園設置基準と幼稚園運営 …神長美津子 (國學院大學)
第III部 保育所・幼稚園経営と財政
 第8章 国・自治体の保育所・幼稚園の行財政のしくみと課題 …伊藤良高 (熊本学園大学)
 第9章 保育所の園・クラス経営と行政の課題 …天野珠路 (日本女子体育大学)
 第10章 幼稚園の園・クラス経営と財政の課題 …田中雅道 (光明学園光明幼稚園)
 第11章 認定こども園の園・クラス経営と課題 …渡辺英則 (渡辺学園ゆうゆうのもり幼保園)
 第12章 認可外保育施設の運営をめぐって …福川須美 (NPO法人子ども家庭リソースセンター)

保育学講座3 保育のいとなみ――子ども理解と内容・方法


代表編者 戸田雅美

 

保育のいとなみは、保育者が多面的な「知」をもってそれを一人ひとりの子どもたちとの相互性の中に創造していくものです。ところが、このいとなみに対する社会的な認識は、高いとはいえない現状があります。第3巻では、保育のいとなみを形成する多面的な「知」のあり方を、理論と実践事例から検討し、解明していきます。

 序 …戸田雅美 (東京家政大学)
第I部 実践における子ども理解
 第1章 子どもの発達 …中澤 潤 (千葉大学)
 第2章 子ども理解 …砂上史子 (千葉大学)
 第3章 特別な配慮を要する子ども …七木田敦 (広島大学)
第II部 保育内容
 第4章 遊び …戸田雅美
 第5章 生活 …増田まゆみ (東京家政大学)
 第6章 表現 …髙橋敏之 (岡山大学)
 第7章 養護と教育(5領域) …渡邉保博 (佛教大学)
 第8章 子どもを取り巻く文化 …内藤知美 (東京都市大学)
第III部 保育の方法
 第9章 環境を通しての保育 …河邉貴子 (聖心女子大学)
 第10章 保育における援助 …久富陽子 (大妻女子大学)/梅田優子 (新潟県立大学)
 第11章 保育における形態 …小林紀子 (青山学院大学)
第IV部 計画と省察
 第12章 保育における計画論 …磯部裕子 (宮城学院女子大学)
 第13章 計画と実践の関係の実際 …前原 寛 (至宝福祉会安良保育園)
 第14章 計画に基づく省察と評価 …高辻千恵 (東京家政大学)

保育学講座4 保育者を生きる――専門性と養成


編者代表 小川清実

 

保育者不足と言われ、より多くの保育者の養成が求められる今だからこそ、専門家としての保育者のあり方や生き方が追求されます。第4巻では、保育者としての先人のあゆみを知り、保育者の専門性と課題を論じ、子どもや保護者にとって、よりよい保育者養成のあり方を検討します。

 序 …小川清実 (東京都市大学)
第I部 保育者の専門性と研修
 第1章 保育者の専門性 …榎沢良彦 (東京家政大学)
 第2章 保育実践と省察 …中坪史典 (広島大学)
 第3章 園内研修 …岸井慶子 (青山学院女子短期大学)
 第4章 子ども・家庭支援 …金子恵美 (日本社会事業大学)
 第5章 保育者の倫理 …名須川知子 (兵庫教育大学)
第II部 保育者とは
 第6章 保育者のライフコース …田甫綾野 (玉川大学)
 第7章 保育者の処遇 …杉山隆一 (佛教大学)
 第8章 保育者の研修制度 …矢藤誠慈郎 (岡崎女子大学)
第III部 保育者養成
 第9章 わが国における保育者養成制度の歴史 …立浪澄子 (故人、元・長野県短期大学)
 第10章 保育士養成 保育者養成の現状とこれから① …高橋貴志 (白百合女子大学)
 第11章 幼稚園教員養成 保育者養成の現状とこれから② …岩立京子 (東京学芸大学)
 第12章 実習 保育者養成の現状とこれから③ …阿部和子 (大妻女子大学)
 第13章 海外の保育者養成制度 …門田理世 (西南学院大学)

保育学講座5 保育を支えるネットワーク――支援と連携


代表編者 大豆生田啓友

 

子どもを取り巻く社会的状況が大きく変化する中で、家庭・地域あるいは様々な関係機関等とのネットワークを通して保育を行うことが重要な課題になっています。そうした状況を踏まえ、第5巻では、「支援」や「連携」など、保育を支えるネットワークに関する研究および実践の取り組みに焦点化し、多角的に論じることを目的としています。

 序 …大豆生田啓友 (玉川大学)
第I部 子育て支援と保育
 第1章 子育て支援と保育 …太田光洋 (和洋女子大学)
 第2章 家庭との連携 …大豆生田啓友
 第3章 子育てと仕事の両立支援 …諏訪きぬ (NPO法人さやま保育サポートの会)
 第4章 保育所における家庭支援 …橋本真紀 (関西学院大学)
 第5章 地域子育て支援における保育のあり方と保育技術 …山縣文治 (関西大学)
第II部 保育臨床相談
 第6章 保育臨床相談の位置づけ …秦野悦子 (白百合女子大学)
 第7章 子ども虐待防止の理解と対応並びに保育 …柏女霊峰 (淑徳大学)
 第8章 地域の他の専門職や関係機関との協働 …土谷みち子 (関東学院大学)
 第9章 保育臨床相談の新たな動向 …大方美香 (大阪総合保育大学)
第III部 地域における連携・交流
 第10章 小学校との連携・接続 …佐々木晃 (鳴門教育大学附属幼稚園)
 第11章 多文化共生と保育 …日浦直美 (関西学院大学)
 第12章 放課後の子どもの生活と保育 …池本美香 (日本総合研究所)
 第13章 安全と危機管理 …関川芳孝 (大阪府立大学)

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