日韓関係史 1965-2015【全3巻】
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日韓関係史 1965-2015
2015年は1965年日韓国交正常化から50年の記念すべき画期となる年である。この50年間、日韓両社会の変化には顕著なものがあり、その間、日韓関係は、変化しつつも実に多くの実績を積み上げてきた。日韓は顕著な経済発展を達成しただけでなく、民主主義という価値を共有するまでになった。また、南北朝鮮の関係も韓国優位へと劇的に変容した。
ところが、日韓関係の現状はそれを祝う雰囲気では決してない。首脳間の「シャトル外交」が、ここ3年余り実施されていないことに象徴的に現れるように、良好とは言い難い状況にある。
シリーズ『日韓関係史 1965-2015』全3巻は、日韓国交正常化50年を記念して、政治、経済、社会・文化の3領域に渡り、日韓合わせて51名の研究者が集まり、何度かの執筆者会議を開催したうえで編集されたものである。
日韓関係は、国交正常化以後50年の間に密接になったにもかかわらず、その現状は、一言で言うと、日韓が相互に相手は変わらないと「諦めて」しまい、そしてお互いの欠点を探して「貶め合い」をしているかのようにも見える。
こうした現状に直面して、日韓関係を研究対象とする日韓の研究者たちは、①日韓関係の現状をどのように理解するのか、②日韓関係の現状を帰結させた、この50年の歴史をどのように評価するのか、③日韓関係の現状をどのように打開するのか、以上の3つの課題に取り組んできた。本シリーズは、こうした研究者たちによる知的な取り組みの成果である。
シリーズの特色
○学問的検証を経て、真に思考した概説で構成する〈最も信頼できる通史〉
○日韓双方の一線の研究者が、異なる視点からテーマを共有して論じ合う
○テーマごとの歴史に重点を置き、論争的な話題にも向き合って忌憚なく挑戦し合う
○これまで充分に知られざるテーマも積極的にとり上げ、掘り下げる日韓同時出版(韓国語版は「歴史空間」社より刊行)
I 政治
国交正常化50年の日韓協力が積み上げてきた実績とはなにか。日韓双方の目で、その関係史の展開を振り返り、国際政治の力学の中に位置づける。さらに、日韓双方を揺るがす歴史認識問題・領土問題への取り組みを評価する。
序 論 構造変容に直面し漂流する日韓関係 木宮正史(東京大学)
I 日韓協力の軌跡とその諸相
第1章 日韓関係1965年体制の軌跡――過去と現在の照明 李元徳(国民大学)
第2章 日韓外交協力の軌跡とその現在的含意 木宮正史
第3章 国家戦略と市民受容の整合性から見る日韓関係50年 朴喆熙(ソウル大学)
第4章 日韓自治体間協力の展開――姉妹都市提携の戦略 大西裕(神戸大学)
第5章 日韓政策コミュニティの生成と変化 崔喜植(国民大学)
II 国際政治の中での日韓関係
第6章 戦後日韓関係と米国――日米韓トライアングルの変容と持続 李鍾元(早稲田大学)
第7章 韓国の外交と日韓安保関係の変容 1965-2015 朴栄濬(国防大学)
第8章 中朝関係の変化と日朝関係――「二つの朝鮮」、日韓基本条約の解釈をめぐって 朴正鎮(津田塾大学)
第9章 独島問題と日韓関係 1965-2015 玄大松(海洋水産開発院)
第10章 日韓関係における「境界問題」――「竹島・独島問題」の「現状」をめぐるダイナミズム 浅羽祐樹(新潟県立大学)
第11章 海洋をめぐる日韓関係50年 趙胤修(東北アジア歴史財団)
III 歴史問題への取り組み
第12章 日韓諸条約の評価をめぐる日韓関係――基本条約第二条、請求権協定第二条一を中心に 吉澤文寿(新潟国際情報大学)
第13章 歴史問題と日韓関係 南相九(東北アジア歴史財団)
第14章 民主化の代償――「国民感情」の衝突・封印・解除の軌跡 浅野豊美(早稲田大学)
第15章 個人請求権問題をめぐる日韓関係――葛藤の過程と原因 張博珍(韓国外国語大学)
第16章 日韓条約以後の「在日朝鮮人問題」の展開 外村大(東京大学)
II 経済
日韓両国の太い絆である経済関係は、政策面では援助・被援助関係から相互協力へ、また産業面では垂直的分業から水平的分業・競合へと激変してきた。グローバリゼーションが進行する今日、新しい経済協力のあり方を探る。
序 論 日韓経済関係の歴史と未来 金都亨(翰林大学)・安倍誠(アジア経済研究所)
I 日韓経済関係50年の軌跡
第1章 韓国の経済発展と日韓経済関係の展開 金都亨
第2章 日本の対韓経済協力――一方的援助から相互協力への模索 安倍誠
第3章 対日請求権資金と韓国の経済開発 曺晟源(高麗大学)
II 貿易・投資からみた日韓関係
第4章 日韓貿易関係の発展 奥田聡(亜細亜大学)
第5章 日本企業の対韓直接投資 百本和弘(日本貿易振興機構)
第6章 対日貿易不均衡と日本の対韓直接投資の産業組織的特性 李基東(啓明大学)
第7章 日韓外交・通商政策の対立と協力の構造 金暎根(高麗大学)
III 金融からみた日韓協力
第8章 IMFによる金融支援の限界と日韓金融協力 高安雄一(大東文化大学)
第9章 韓国通貨危機以降の日韓金融通貨協力 朴盛彬(亜洲大学)
IV 産業からみた日韓の競争と協力
第10章 韓国の対日キャッチアップの成果と要因 金龍烈(弘益大学)
第11章 半導体産業における日韓企業の興亡 吉岡英美(熊本大学)
第12章 日本の対韓国技術移転と部品素材産業の技術協力 李鴻培(東義大学)
第13章 日韓自治体間の産業技術交流と協力 金仁中(江原発展研究院)
V 企業・ヒトからみた日韓協力
第14章 浦項製鉄所建設における日韓エンジニアの交流 深川博史(九州大学)
第15章 在日韓国人の日韓における経済活動とその役割 朴一(大阪市立大学)
第16章 韓国財閥の競争力強化と「日本」要素――三星の事例を中心に 柳町功(慶應義塾大学)
第17章 日本の総合商社の韓国ビジネスの変遷 藤田徹(元・日本商社)
第18章 韓日企業間協力の諸相 李亨五(淑明女子大学)
むすび 安倍誠・金都亨
III 社会・文化
国交正常化50年のなかで市民社会、地域社会のあり方や交流は、時に異なるもの同士の葛藤を経つつもどのように成熟をみせたのか。民族・社会階層・宗教・地域などの切り口から日韓両国社会の多様性・重層性を描き出す。
序 論 社会・文化領域における日韓関係の五〇年 李鍾久(聖公会大学)・磯崎典世(学習院大学)
I 社会レベルの日韓関係の軌跡と断面
第1章 日韓関係と社会文化的な相互作用 李鍾久
第2章 日韓市民社会における相互認識 磯崎典世
第3章 在日朝鮮人からみる日韓関係――〈国民〉を超えて 文京洙(立命館大学)
第4章 日本の日韓階段反対運動とその内在的批判――社会党、総評、共産党を中心に 大畑裕嗣(明治大学)
第5章 歴史認識問題の展開に見る日韓関係 木村幹(神戸大学)
II 文化・知識の交流と日韓社会のダイナミズム
第6章 日韓文化交流と「反日」論理の変容――「倭色文化」批判言説の弱化 李志遠(翰林大学)
第7章 大衆文化を通して見た日韓交流――オタク文化の事例を中心に 金孝眞(高麗大学)
第8章 韓国と日本の環境運動と知識の交流 具度完(環境社会研究所)
III 日韓社会文化の諸問題と相互作用
第9章 ジェンダーで日韓を見るということ――少子化、女性、超高齢社会 瀬地山角(東京大学)
第10章 非正規雇用の日韓関係史と日韓比較――被雇用者の分類枠組みの伝播、土着化、そしてブーメラン化 有田伸(東京大学)
第11章 授業を通じた日韓教育交流――「一人の子どもも切り捨てない教育」を目指して 崔圭承(韓日合同教育研究会)
第12章 韓国における日本系宗教と日本における統一教会――文化現象としての両国間の宗教文化の相互受容 林慶澤(全北大学)
IV 地域社会・フィールドワークからの視点
第13章 最前線・九州における日韓の地方間交流 加峯隆義(九州経済調査協会)
第14章 観光交流からみた日韓関係――対馬の韓国人観光を中心に 中村八重(啓明大学)
第15章 自治体交流と市民交流――富川市と川崎市の交流事例を中心に 李時載(聖公会大学)
第16章 日韓間の人類学交流と韓国人類学の日本研究 朴東誠(順天郷大学)
第17章 日本の人類学者の韓国認識――1970年代初頭以降のフィールドワークと民族誌的知識の蓄積 本田洋(東京大学)
むすび 磯崎典世・李鍾久