シリーズ日本の政治【全11巻】

シリーズ著者
川人 貞史
シリーズの特徴
◆各分野の第一人者による一人一冊書き下ろし
◆基礎的な内容から応用的な内容まで平易に解説
◆変化・比較・実証をキーワードに


1 議院内閣制  川人 貞史 (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
議院内閣制は、大統領制とならぶ重要な民主政治の政治制度であり、一般に議会優位と権力の融合として特徴付けられ、政策プロセスにおいては委任と責任の連鎖によって成り立っている。本書では、イギリスに始まり、西欧諸国および日本で取り入れられた議院内閣制を理論的に捉え、各国の議院内閣制の特徴を比較するとともに、日本の議院内閣制に特に焦点を当てて理論的実証的に検討する。

序 章 現代民主政治と議院内閣制
第1章 議院内閣制の政治制度
第2章 議会と内閣
第3章 政党と内閣
第4章 首相・内閣・大臣
第5章 内閣と行政官僚制
終 章 議院内閣制と日本政治

【未刊】2 選挙制度  品田 裕 (神戸大学大学院法学研究科教授)
本書では、選挙制度をさまざまな側面から議論するとともに、そのメカニズムと影響について体系的な理解を深めることを目的とする。選挙の機能や選挙制度の分類、多数代表法、比例代表法、中選挙区制、一票の格差と定数是正、選挙制度が政治家や有権者に与える影響、選挙管理行政、選挙制度改革など、原理的な側面、技術的な解説、政治学的な含意、現代的な課題と幅広く論じていく。

序 章
第1章 制度としての選挙
第2章 多数代表法
第3章 比例代表法
第4章 中選挙区制――応用選挙制度論(1)
第5章 一票の格差と定数是正――応用選挙制度論(2)
第6章 選挙制度が政治家や有権者に与える影響
第7章 選挙管理行政
終 章 制度改革をめざして

【未刊】3 政治意識  竹中佳彦 (筑波大学人文社会系教授)
理性よりも情動によって政治が動かされる現代、日本人の政治意識はどのようになっており、現実の政治にどう影響され、どう影響を及ぼすのか。本書では、政治意識、すなわち、政治的関心・投票義務感・政治的有効性感覚、政治的価値観、政治的態度について、実態と時系列的変化、社会的属性との関係を、国際比較を交えながら実証的に明らかにし、政治意識のさまざまな要素がどのように結びついているか、その構造を示す。

序 章 なぜ政治意識を分析するのか
第1章 「意識」と「態度」――政治意識とは何か
第2章 政治意識論の発展
第3章 政治関与の意識
第4章 政治的価値観
第5章 政党・政治家・政策に対する態度
終 章 政治意識の構造と今後の行方

4 政治参加と民主政治  山田真裕 (関西学院大学法学部教授)
民主主義体制に正当性を与えるためには、選挙での投票などによる政治参加が不可欠であるが、有権者の政治的判断力には少なからぬ疑問も投げかけられる。過度の政治参加を憂慮する思想が古くからある一方で、投票にとどまらぬ政治参加を訴える考え方もある。本書はこのような政治参加と民主政治をめぐるジレンマをめぐる諸業績を紹介するとともに、国際比較データの分析などに基づいて日本における政治参加と民主政治を考察する。

序 章 民主政治における政治参加の重要性
第1章 国際比較で見る日本人の政治参加
第2章 政治参加を説明する要因
第3章 政治参加の効果
第4章 政治参加とジェンダー
終 章 政治参加から見える日本政治

【未刊】5 並立制と投票行動  西澤由隆 (同志社大学法学部教授)
ゲームのルールが変われば、プレイヤーの戦略が変わる。それは、選挙でも同様である。衆議院における1994年の小選挙区比例代表並立制の導入により、有権者の投票行動がどのように変化したのかを、世論調査データと最新の理論を紹介しながら平易に説明する。政党・政策・候補者の3要因モデルを基本に据えつつも、新しく注目を集めているその他の要因を考慮しながら、いずれの選挙にも応用のできる普遍モデルを紹介する。

序 章 有権者を取り巻く政治環境の変化
第1章 投票行動の分析モデル
第2章 投票行動分析の統計手法
第3章 投票行動の普遍モデルと2000年代の国政選挙
第4章 国際比較から見た日本人の投票行動
終 章 並立制における投票行動

6 政党システムと政党組織  待鳥聡史 (京都大学大学院法学研究科教授)
民主主義にとって、政策過程と社会を媒介する政党は不可欠の要素である。本書ではこのように政党を捉えた上で、政党の数と相互関係すなわち政党システムと、政党内部における構成員相互間の関係や政党と支持者との関係すなわち政党組織という二つの観点から、ヨーロッパやアメリカ、日本で行われてきた研究成果を検討しつつ、それらと共通した視点から日本の政党政治を説明する。

序 章 政党―民主主義の永遠の伴走者
第1章 政党システム論の展開
第2章 政党組織論の展開
第3章 日本の政党システム
第4章 日本の政党組織
終 章 政党はどこに向かうのか

7 立法と権力分立  増山幹高 (政策研究大学院大学教授
国会は何のためにあるのか。立法とはいかなる行為なのか。立法を集合行為のジレンマに対処する権力行為と捉えることにより、いかに民主主義的な権力行使が立法を通じて実現されるのかを検討し、日本の立法と権力分立に対する新たな視点を提示する。

序 章 立法と民主主義
第1章 国会の制度と機能
第2章 代議制民主主義と議会制度
第3章 立法の空間理論と議会制度
第4章 権力融合型の議会制度と立法
第5章 権力分散型の議会制度と立法
第6章 日本の選挙制度と権力分立
第7章 日本の議会制度と権力分立
終 章 日本の議院内閣制と権力分立

【未刊】8 政策過程と政権運営  飯尾 潤 (政策研究大学院大学教授)
本書では、政策課題の認識から政策決定、政策の実施に至る一連の過程に注目し、政策の各局面において日本の政策過程がどのようになっているのか、諸外国との比較も念頭に、具体的に検討することで、日本の政策過程の全体像を明らかにする。また、政策過程が集約される政権のあり方について検討し、異なる政策過程を総合的に統合する仕組みについても考える。

序 章 日本政治と政策過程
第1章 政策課題の浮上と提案
第2章 政策決定のさまざまな理解
第3章 政策実施と政策転換
第4章 政権運営と政策過程の統御
終 章 転換期日本における政策過程の変容

【未刊】9 公共政策と中央地方関係  北山俊哉 (関西学院大学法学部教授)
現代日本政治において、どのようにして、いつから地方政府が大きな役割を果たす政治行政体制が発展するようになったのか。このような体制は日本の政治にどのような帰結をもたらしてきたのか。日本の政治経済は「大蔵省・日銀王朝」、「土建国家」、「日本型福祉国家」、「発展志向国家」といった概念で特徴づけられてきたが、それらが見過ごしてきた、地方政府の重要性を主張し、政策や制度の発展をたどる。

序 章 地方政府の重要な政治行政体制とは
第1章 時間の中の政治と地方政府
第2章 大蔵省・日銀王朝と地方政府
第3章 土建国家と地方政府
第4章 日本型福祉国家と地方政府
第5章 発展志向国家と地方政府
第6章 逆機能?
終 章 日本の政治行政発展と地方政府

10 政治とマスメディア  谷口将紀 (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
「第四権力」とも呼ばれるマスメディアは権力といかなる関係に立ち、世論に対してどのような影響を与えているのか。衛星放送やケーブルテレビ、インターネットが普及し、多元化するメディアが政治に及ぼす効果は何か。アメリカをはじめとする諸外国の研究動向を紹介するとともに、日本と他の国々との比較のなかで、メディアが政治のあり方にもたらす変化を明らかにする。

序 章 政治とマスメディアへのアプローチ
第1章 「第四権力」の現在
第2章 マスメディアと世論
第3章 多元化するメディア
第4章 メディアが変える政治
終 章 危機とマスメディア

【未刊】11 ジェンダーと政治  岩本美砂子 (三重大学人文学部教授)
ジェンダーと政治に関する研究は、女性議員の少なさを問うリクルートメント研究から始まり、ジェンダー平等に関わる政策変更の過程を問うた。女性運動は一層体系的に女性議員を増やすクオータ制を唱え、研究者はその多様な形態の有効性を問うている。本書では、女性の政治参加、クオータ制、ジェンダー平等政策について、フランスやEUと比較しながら、日本の現状を明らかにする。

序 章 女性の政治参加とジェンダー平等政策
第1章 女性の政治参加1
第2章 女性の政治参加2
第3章 女性の政治参加3
第4章 クオータ制
第5章 ジェンダー平等政策1
第6章 ジェンダー平等政策2
終 章 国家フェミニズム
刊行にあたって
 現代日本は、かつてない政治変容の時期を経験している。1993年に自民党長期単独政権に代わって非自民の細川護煕連立政権が登場してから今日までの20年あまりの期間において、政治改革、国会改革、行政改革、経済改革など広範な領域にわたる改革が推し進められた。こうした状況の中で、現代日本政治の研究はますます重要性を増し、一層の充実が今こそ期待されている。
 ともすれば、政治といえば、政治家や官僚たちが行う特殊な活動であると考えられやすいが、現代の民主的政治過程においては、われわれ国民も政治の第1起動力である有権者としての役割を賢明に果たすことが求められている。したがって、政治学研究の知識・知見は、政治学に関心のある関連分野の研究者・学生にとどまらず、広く、国民・市民にとっても、有益なものでなければならない。
 こうした立場に立って、われわれは、本シリーズを編纂するにあたって、現代日本の政治に関する現段階における研究水準と蓄積された知見を総合的・包括的に提示するだけでなく、幅広い読者の方にとってわかりやすい形で提示することをめざす。講義のテキストとして使っていただくことはもとより、ビジネスマンや公務員を始めさまざまな分野の方々にとっても、日々のニュース報道から少し距離を置いて、日本の政治を考えてみたい時に手に取っていただける単独の著作としても十分読み応えがあるように配慮している。政治を専門職業とする方々およびマス・メディアやジャーナリズムの方々にも、各国と比較して日本の政治がいかなる異なる特徴を持つかという基本的知識を整理するために、読んでいただければ幸いである。
 本シリーズを編纂するにあたって、3つのキーワード〈変化、比較、実証〉を掲げたい。
 変化とは、政治的現実および政治学の通説的見解の双方についてあてはまることであり、臨床的な経験科学としての政治学研究には、つねに新しい政治的現実を的確に捉えるとともに、新しい理論の可能性を探究し、より説明力の高いモデルを構築することによって、通説を書き替えていくことが求められているといえよう。
 比較とは、現代日本政治の研究を日本だけの特異性や文化にもとづいて説明することに頼らずに、人間行動および政治制度の一般的理論化をめざす比較政治学的視座の中に位置づけることである。そうすることで、より開かれた学問的可能性と学術知識の国際的発信をめざす。
 実証とは、論理的で整合性の高い理論やモデルを考案し、それにもとづいて研究の具体的仮説を設定し、データや文献資料を分析することによってその仮説を検証する作業である。理論や仮説の構築には、研究者の優れた洞察力やオリジナリティが必要とされるが、実証の手順においては公開の再現可能な検証方法を用いることになる。
 このシリーズは、日本における日本政治研究の水準を示すものであり、読者が日本政治についての理解を深めることに資するのみならず、外国における日本政治研究のレベルを高める上でも役に立つことを願ってやまない。

編者 川人貞史