人文知【全3巻】

内容紹介
著者紹介

シリーズの特色
*東大文学部発 全編書き下ろしによる、贅沢な知的エンターテインメント!
*自らの研究を出発点に、領域を踏み越えて、多面的な人文学の魅力を発信
*「人」の蓄積してきた、「文」の力、「知」の豊潤さを味わいたいすべての人へ

1 心と言葉の迷宮   唐沢かおり・林 徹 [編]

〈今、ここにいる私から〉ヒト特有の属性でもあり、人文知を形成する基本でもある「心」と「言葉」。「私」と外部、現在と未来は、言葉によってどう結ばれ、つながれるのか。その中で心はどのように自らを表現し、また自らをつくり直していくのか――今、世界はどう構築されるのかをめぐる知的冒険の端緒が開かれる。

2 死者との対話  秋山 聰・野崎 歓 [編]

〈過去と未来をつなぐ〉取り返しのつかない喪失を超えて、記憶を引きつぎ、死者をして語らしめる試みこそ人間の文化にほかならない。時間を超え、様々な遺物に刻まれた死者の声に真摯に向き合い、過去を読むという人文知の根本的務めに立ち戻り、未来への中継者としての意義を問い直す。

3 境界と交流  熊野純彦・佐藤健二 [編]

〈他者との出会いの中で〉空間を超え、他者との交流と越境の動きのうちで自らを豊かにし、更新していく文化のダイナミズムが論じられる。自己の内実とはいかに異境に、他者に委ねられ、開かれたものであるのかが浮き彫りにされ、「外へ」と踏み出していく人文知の魅力と可能性が示される。



 

「人文知」刊行にあたって

 人文知とは何か。だれにでも開かれた悦ばしい知、自由に伸び広がっていく知である。なぜならそれは「人」と「文」、すなわちわれわれの存在と言語に深く関わってつむがれる知なのだから。豊かな伝統を支えとしながら、もっともアクチュアルな問題に直面してこそその価値が輝きだす。そうした人文知のフロンティアをここにお届けする。
 ひょっとすると現在、「文」の力に対する軽視が、われわれの周囲に広まっているのではないか。はるかな時間をかけて「文」のうちに蓄積されてきた英知は、インターネットの時代において新たなアクセス可能性を獲得しているにもかかわらず、むしろ忘却にさらされているかのようだ。昨今、人々はグローバリズムの動きになすすべもなく流されている。実用英語至上主義や、ネット上の情報とさえつながっていれば安心というパソコン・スマホ依存症によって、自らがいかなる貧しさを強いられているかを自覚すべきだろう。
 人文諸学によって開かれる領域は、それらの現代的な症候群と鋭いコントラストをなす。過去の扉を押し開き、山なす資料体をたえず再発見することに賭ける点で、われわれはアルシヴィスト(古文書学者)にしてアルケオロジスト(考古学者)である。そこには専門化した知の現場があり、対象を局限することで研ぎ澄まされる読解の深まりがある。
 しかし同時に、われわれは決して閉域に孤立しているのではない。ミクロコスモスへの注視は、マクロコスモスを思い描くための想像力を鍛え、領域を横断していくための知性を磨くことにつながる。言語学と心理学、社会学と考古学、哲学と美術史、倫理学と歴史学、さらには文学研究。各ディシプリンは互いにまったく異なるスタイルをもち、研究対象もまちまちだ。だが、そこで追求されている主題には驚くほど共通性があり、一貫性がある。
 文学部的な知は、「私」のいま・ここに根ざしながら、ときに遠く迂回しつつ、その立脚点を問い直す運動を描き出す。それは「個」に発しながら「全体」に達しようと希求する知なのだ。あるいは「同一性」に発しながらつねに「他者」を見出そうとする知だといってもいい。
 そうした試みが言語の違いや方法論の相違を超えて、断固、複数的に展開されてきた場所。それが文学部にほかならない。専門を徹底的に掘り下げつつ、敢然と「外」へ踏み出していこうとする。そんな人文知の脈動をぜひ共有していただきたい。



各巻詳細

1 心と言葉の迷宮

序 心と言葉への問い――言葉を心につなぐもの(林 徹)
I 問題の原型
1 心はいかに自己と他者をつなぐのか(唐沢かおり)
2 心・言語・文法――認知言語学の視点(西村義樹)
3 心が先か言葉が先かの対立を終わらせる一つのやり方について(戸田山和久)
II 問題の展開
4 こと・こころ・ことば――現実をことばにする「視点」(木村英樹)
5 言葉によってどのように「心」が表現されるのか (渡部泰明)
6 ことばは社会と文化をどのようにつくり変えるのか――社会問題の構築(赤川 学)
III 問題の拡大
7 イメージ/絵画は「心」の交感の場 (小佐野重利)
8 音楽はどのように言葉や図像とかかわるのか――ベートーヴェン《月光》をめぐるマルチメディア的想像力(渡辺 裕)
9 古代中国人の言語風景――空間と存在の関わり(大西克也)
あとがき(唐沢かおり)


2 死者との対話

序 「死者との対話」とは何か――バルトからシャトーブリアンへ(野崎 歓)
I 思考の根源
1 「死者」とはだれのことか――古代中国における死者の記憶を中心に(池澤 優/宗教学)
2 思考の「痕跡」としてのテクスト(下田正弘/インド哲学仏教学)
3 ヨーロッパ中世に響く死者の声 (小池寿子/美術史学 *国学院大学)
II 問題の現場
4 考古学から見た死と儀礼 (佐藤宏之/考古学)
5 聖なる宝物――天と地をつなぐモノ(秋山 聰)
6 死者をめぐる歴史と物語(鈴木 淳/日本史学)
III 前線の拡大
7 死者がよみがえる現場 (木下直之/文化資源学)
8 辺境の死者たちが語りだす (沼野充義/現代文芸論・スラヴ文学)
9 喪と再生の物語をめぐって (小野正嗣/作家・フランス文学 *立教大学)
あとがき(秋山 聰)


3 境界と交流

序 境界をめぐる思考 (熊野純彦)
I 問題の原型
1 「自己と他者」という問題をめぐって (村本由紀子)
2 紙とデジタルの間で――人文学の物質的な側面と知的分業について(中村雄祐/文化資源学)
3 越境する知と生の作法――フロムにおける「無意識」と知の生成をめぐって(出口剛司/社会学)
II 交流の諸相
4 東北アジアという交流圏――王権論の視角から(小島 毅/中国思想文化学)
5 「長崎」再考――海域アジアと近世日本(島田竜登/東洋史学)
6 ゴシックにおける境界と交流 (木俣元一/美術史学 *名古屋大学)
III 日本近代という問題
7 「近代日本文学」という制度の成立 (安藤 宏/国文学)
8 裏切り者にならないために――翻訳について語るときに我々の語ること(柴田元幸/現代文芸論 *元東京大学)
9 演説とあいさつの公共圏――声の力の原点から考える(佐藤健二)
あとがき(佐藤健二)

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