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[総監修]
田中智志 (東京大学)
[監 修]
佐藤 学(学習院大学)
藤井千春(早稲田大学)
小玉重夫 (東京大学)
松浦良充 (慶應義塾大学)
松下良平 (金沢大学)
森田尚人 (中央大学)
[編集委員会]
田中智志
岡部美香 (大阪大学)
古屋恵太(東京学芸大学)
高柳充利(信州大学)
A5判・上製・横組・240~320頁
各巻定価(本体4,500~5,200円+税)〈予価〉
●20世紀を代表する思想家であり、生前からこんにちまで哲学・教育学・政治学においてひろく不断の再解釈が試みられ、展開を触発しつづけるジョン・デューイ。その主要著作を厳選し、現代的な水準で新訳する著作集。
●各分野で定評ある研究者が、訳者解説、解題を執筆、デューイ思想の核心とそれぞれの著作の位置付けをあきらかにする。
『デューイ著作集』の刊行に寄せて
アメリカの教育学者・哲学者として広く知られているデューイ(John Dewey, 1859-1952)は、ほぼ同時代を生きたドイツの哲学者、ハイデガー(Martin Heidegger, 1889-1976)と、好対照をなしているように見えるだろう。デューイはハイデガーよりも 30歳年長であるが、二人は 60年以上にわたり、同時代を生きている。どちらも、世界に広く知られているが、どちらも、相手に言及したことが一度もない。「プラグマティズム」と「存在論」という、水と油のような二人の思想の違いを考えれば、得心しそうになるが、おそらく、ことはそう単純ではないのだろう。
ともあれ、日本の教育学において、デューイの思想は、ハイデガーの思想に比べれば、はるかに大きな理論的主柱をなしていた。あの「大正新教育」を理論的に支えてきた思想の主柱の一つは、デューイのそれであったし、第二次大戦後から現代にいたるまで、日本の教育の大きな転換期においては、さまざまな人が、デューイの思想に触発されつつ、説得力あふれる教育論を展開してきた。有名な『デモクラシーと教育』『学校と社会』などは、今も教育学の基本文献である。
にもかかわらず、デューイの教育思想は、「問題解決に向かう学習」「民主主義を実現する教育」といわれるような、わかりやすいものではないし、その哲学思想も、「プラグマティズム」という言葉に収まるような、一意的なものではない。そこには、たとえば、ハイデガーが批判しながらも、迎え入れた形而上学的思考がふくまれている。デューイの教育思想も哲学思想も、いまだにその全貌がわからない、そして私たちを大切なものに向けて触発しつづける、豊かさそのものである。
さかのぼれば、『デューイ著作集』を企画し東京大学出版会に提案したのは、 2011年の晩秋のころである。あれほど著名な人物でありながら、そして教育思想と哲学思想の両方にまたがる思想家でありながら、その主要な著作が読みやすいものとして、またまとまったかたちで翻訳されていなかったからである。本国のアメリカで南イリノイ大学出版局(Southern Illinois University Press)から全 37巻の著作集(.e Collected Works of John Dewey, 1882-1953)が刊行され、すでに 20年前に完結していたことも、後押しとなっていた。ちなみに、ハイデガーの全集については、ドイツのクロスターマン社(Vittorio Klostermann)から全 102巻の全集(Heidegger Gesamtausgabe)が刊行されるとすぐに、日本でも、翻訳全集の刊行が開始された。
なるほど、デューイの翻訳書は、すでに大正期から刊行されてきたが、どれも単発的なものであった。私は、過去のそうした翻訳書の成果を踏まえつつも、多岐にわたるデューイの思想に一通りのまとまりをもたせた、かつ読みやすさを意識した訳文の著作集、とりわけ後期の充実した著作をふくむそれを刊行できるなら、新たなデューイ思想を描く確かな足場になるのではないか、と考えた。
幸いにも、この企画について、多くの方々から賛同をいただき、 2013年から著作の選定・調整、訳業の分担・依頼の作業に入った。ただ、思いのほか訳業・調整に手間取り、最初の配本にこぎつけるまでに多くの時間を要することとなった。この企画に参画してくださった方々のご尽力に、衷心から敬意を表する。また、ワーキング・グループとして、本著作集に組み込むデューイの著作の選定・配列をはじめ、具体的な作業を一手に引き受けてくれた「デューイ翻訳著作集編集委員会」の方々にも、深甚の感謝を申しあげる。なお、本著作集は、当面、第Ⅰ期として全 8巻が刊行されるが、第Ⅱ期についても、同じ巻数の翻訳を考え、準備を行っている。この著作集が、今後のデューイ研究、また哲学思想・教育思想の研究の礎にならんことを、心より祈念する。
総監修 田中智志(東京大学大学院教授)
第I期刊行予定
[第1回配本/ 2018年9月]
(通巻 4)哲学4『確実性の探求』 加賀裕郎(同志社女子大学)訳・田中智志(東京大学)解題
[第2回配本/ 2019年3月]
(通巻 6)教育1『学校と社会』ほか 上野正道(上智大学)訳者代表・藤井千春(早稲田大学)解題
[第3回配本/ 2019年10月]
(通巻 7)教育2『明日の学校』ほか 上野正道(上智大学)訳者代表・佐藤学(学習院大学)解題
[第4回配本/2022年12月]
(通巻 2)哲学2『論理学的理論の研究,ほか』古屋恵太(東京学芸大学)訳者代表
[第5回配本予定]
(通巻 5)哲学5『共同の信仰』ほか 小玉重夫(東京大学)訳者代表・解題
[以下続刊]
(通巻 1)哲学1『人間の自然本性と行為』ほか 岡部美香(大阪大学)訳者代表
(通巻 3)哲学3『経験と自然』 松下晴彦(名古屋大学)訳
(通巻 8)政治1『公衆とその問題』ほか 生澤繁樹(上越教育大学)訳者代表
第Ⅱ期刊行予定
教育3『デモクラシーと教育』(1916年)
教育4「経験と教育」(1938年)ほか
教育5「思考の方法」(1933年)ほか
哲学6「倫理学の批判理論の概要」(1891年)ほか
哲学7『倫理学』(1932年)
哲学8『経験としての芸術』(1934年)
哲学9『論理学』(1938年)
哲学10「知ることと知られるもの」(1949年)