アフターコロナ時代の米中関係と世界秩序
アフターコロナ時代に突入した世界はどのような時代になりうるのか。いまやG2と呼ばれるようになった中国とアメリカを中心に世界秩序の力学がどのように変化するのかを現在の世界状況を踏まえ、多角的な視点から気鋭の研究者がまとめる。
UP plus 創刊にあたって
現代社会は、20世紀末の情報革命とグローバル資本主義の深化によって大きく変貌を遂げてきました。情報革命はライフスタイルに大きな変革を及ぼし、わたしたちの生活に多大な影響を与え続け、いまなお変化の途中にあります。また、グローバル資本主義の進展もワークスタイルに大きな変革を及ぼし、世界の一体化を促進させてきました。しかし、同時に様々な次元で格差を生じさせ、分断を深めています。
しかし、2020年の初頭に発生したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックによって、より快適に、より便利に、より早く、ということを追求してきた現代社会は大きな影響を受けたのです。この出来事はわたしたちに大きな警鐘を与えるとともに、わたしたちが生きている社会のあり方、そして世界のあり方にも再考をうながしているのです。
このような状況下で、いま一度「知」というものを改めて考え直す時代が訪れているのではないでしょうか。いまの危機を乗り越え、格差や分断を乗り越えるには、人類が積み重ねてきた「知」の集積をたよりにして、あたらしい地平を拓くことこそが求められているのではないかと考えられるのです。まだ見ぬ世界への道しるべとして、「知」はやはりかけがえのないものなのです。
このたび、東京大学出版会は、「UP plus」と題し、「知」の集積地である、大学からひろく社会と共有する「知」を目指して、複雑化する時代の見取り図としての「知」、そして、未来を開く道しるべとしての「知」をコンセプトとしたシリーズを刊行いたします。
「UP plus」の一冊一冊が、読者の皆様にとって、「知」への導きの書となり、また、これまでの世界への認識を揺さぶるものになるでしょう。そうした刺激的な書物を生み出し続けること、それが大学出版の役割だと考えています。
一般財団法人 東京大学出版会
※シリーズ「UP plus」(既刊3冊)のパンフレットをダウンロードできます(クリックするとPDFが開きます)。
I 米中対立をどう捉えるか――両国の意図と地政学
米中関係と地政学(対談:高原明生×森 聡/司会:川島 真)
アメリカの対中アプローチはどこに向かうのか――その過去・現在・未来(森 聡)
対立への岐路に立つ中国の対米政策(増田雅之)
II 米中対立の諸相
断片化する国際秩序と国際協調体制の構築に向けて(秋山信将)
米中通商交渉とその課題――「ディカップリング」は現実的か(梶谷 懐)
技術革新とディカップリング――中国からの視点(津上俊哉)
米中ハイテク覇権競争と台湾半導体産業――「二つの磁場」のもとで(川上桃子)
米中サイバー戦争の様相とその行方(大澤 淳)
アフター・コロナ時代の宇宙開発(鈴木一人)
III 世界から見る米中関係
EU・イギリスから見る米中関係(遠藤 乾)
ドイツから見る米中関係――変容する国際環境にEUと臨むドイツ(森井裕一)
イタリアにおける救済者の国際政治――米欧から中国への移行?(伊藤 武)
ポーランド政治の表層に見える二分化と入れ替わる歴史解釈(宮崎 悠)
豪州から見た米中関係――「幸福な時代」の終焉(佐竹知彦)
韓国から見た米中関係――対米外交と対中外交との両立模索(木宮正史)
「まだら状」の流動的秩序空間へ――米中相克下の世界秩序(川島 真)
UP plus
U.S.-China Relations and the World Order After COVID-19
Shin KAWASHIMA and Satoru MORI,Editors