残響の中国哲学 増補新装版
言語と政治
内容紹介
目次
著者紹介
中国哲学と西洋哲学の交差から何が見えてくるか。荘子、朱子学、魯迅、ポーコック、アーレント、レヴィナス……言語と政治をめぐる古今の思考に分け入り、かき消されてきた声の響きを聞くことによって、他者たちのための哲学の可能性をひらく。中国哲学を脱構築する企て。
序 文字の誕生――夜哭く鬼
I 言語と支配
第1章 正しい言語の暴力――『荀子』
1 正名とは何か
2 記号の恣意性
3 名を制定する――旧名、先王、後王
4 礼儀を制作する
5 歴史的な次元を設定する意義――正統性、政治権力
6 名を捨てる
第2章 どうすれば言語を抹消できるのか――言尽意/言不尽意論
1 言は意を尽くす――欧陽建
2 言は意を尽くさず、象も意を尽くさず――荀粲
3 尽意追求の論理――王弼(一)
4 超越論的言語としての〈忘却された言語〉――王弼(二)
5 志通舎言と忘象得意――王弼と『荀子』の出会い
第3章 オラリテの次元――『荘子』
1 蹄筌の故事の読み方
2 書き言葉への恐れ
3 伝達できない意と現前
4 根源的なオラリテ――『荘子』と王弼の差異
第4章 言語の政治的支配は可能か――儒家・墨家・道家・法家
1 J・G・A・ポーコックと古代中国哲学
2 儀礼、法、正名――儒家
3 上位者との同意――墨家
4 言語と権力の拒否――道家
5 不同意の維持――法家
6 儀礼、言語、権力の総合――荀子
II 起源と伝達
第5章 文学言語としての隠喩――劉勰『文心雕龍』
1 「はじまり」の詩――『詩経』
2 『詩経』の反復――『楚辞』
3 差異の原理としての『楚辞』
4 「はじまり」の抹消と『詩経』の絶対的基礎づけ
5 自然化の拡張――修飾の取り込み
6 自然の限界と逆転――賦
7 声は楽器を模倣する――音楽
8 興と比の分割――起と附、隠と顕
9 隠喩の忘却――「はじまり」と自然の完成
10 正しい文と諷喩の精神
11 直叙としての賦
12 「古い掟」に背くこと――法の禁止と法の後に
第6章 他者への透明な伝達――朱子学
1 古文の独自さ――韓愈
2 文の道への還元――朱熹
3 誠意による自己充実――自―発の哲学
4 独我論に陥らないために――格物致知
5 理想的な他人――自新の民
6 自己啓蒙の拡大――天地万物はわたしと一体である
7 倫理・政治・歴史の可能性
第7章 古文、白話そして歴史――胡適
1 宋代から清代までの古文
2 古文と胡適
3 「打鬼」のための古文
4 換骨奪胎と古への参照
5 無意/有意の白話
6 道統という魔道――胡適と韓愈
7 「中国」という伝達空間
III 他者の声
第8章 公共空間と語ること――ハンナ・アーレント
1 「悪の陳腐さ」と判断の必要
2 他者たちと言語を通じて関係する空間
3 公共空間の喪失
a 政治のもう一つの条件としての倫理――赦しと約束
b 他者を欠くこと――私的領域の侵入
4 制限された複数性
a ペルソナの現れる空間
b 友人の共同体
c 再現前=代理の空間
5 複数性の還元
a 代表的思考としての判断力
b 活動者の注視者への還元、狂人の排除
6 先取りできない未来へ
第9章 誰が他者なのか――エマニュエル・レヴィナス
1 他者の区別という政治
2 「全てに、全ての人に対する責任」と責任の限界
3 もう一人の自己
a 友愛の共同体
b 「わたしはわたしの息子である」
4 他者のヒエラルキー
a 女性の忘却あるいは貶視
b 享受される動物
5 他者に正義を返すこと
第10章 速朽と老い――魯迅
1 速朽の文
2 死を返す
3 魯迅の終末論
4 メシアニズムなきメシア的なもの、あるいはメシア的平和の終末論
5 語ること
6 老いた主体
7 つぶやく母の声
IV 救済の方位
第11章 中国哲学の現在地――マイケル・ピュエットの挑戦
1 マイケル・ピュエットとマーシャル・サーリンズ
2 ピュエットが読むサーリンズ――『神となる――古代中国における宇宙論、犠牲、自己神化』(二〇〇二年)
3 気まぐれな世界に向かう
4 〈かのように〉の礼
5 中国哲学――哲学的な人類学、人類学的な哲学として
第12章 尹東柱はわれらの同時代人
1 遺言
2 拒絶
3 墜─星
4 思想としての詩
おわりに
第13章 声の乱調――中国と女性
1 キェルケゴールと女性
2 女性、植物、言語――自然の精神もしくは大地の精神
3 中国的モダニズムと女性の声――魯迅
4 鬼を打つ速朽の文
5 魯迅と女性の声
6 子どもが登場するときに女性が消える――陳凱歌『子どもたちの王様』(一九八七年)
7 弟としての女性――来娣
8 救済がないことを示す子どもたち――反復する者としての王福
9 道は屎尿にあり――牛飼いの少年
おわりに 中国的モダニズムのゆくえ
あとがき
増補新装版へのあとがき
I 言語と支配
第1章 正しい言語の暴力――『荀子』
1 正名とは何か
2 記号の恣意性
3 名を制定する――旧名、先王、後王
4 礼儀を制作する
5 歴史的な次元を設定する意義――正統性、政治権力
6 名を捨てる
第2章 どうすれば言語を抹消できるのか――言尽意/言不尽意論
1 言は意を尽くす――欧陽建
2 言は意を尽くさず、象も意を尽くさず――荀粲
3 尽意追求の論理――王弼(一)
4 超越論的言語としての〈忘却された言語〉――王弼(二)
5 志通舎言と忘象得意――王弼と『荀子』の出会い
第3章 オラリテの次元――『荘子』
1 蹄筌の故事の読み方
2 書き言葉への恐れ
3 伝達できない意と現前
4 根源的なオラリテ――『荘子』と王弼の差異
第4章 言語の政治的支配は可能か――儒家・墨家・道家・法家
1 J・G・A・ポーコックと古代中国哲学
2 儀礼、法、正名――儒家
3 上位者との同意――墨家
4 言語と権力の拒否――道家
5 不同意の維持――法家
6 儀礼、言語、権力の総合――荀子
II 起源と伝達
第5章 文学言語としての隠喩――劉勰『文心雕龍』
1 「はじまり」の詩――『詩経』
2 『詩経』の反復――『楚辞』
3 差異の原理としての『楚辞』
4 「はじまり」の抹消と『詩経』の絶対的基礎づけ
5 自然化の拡張――修飾の取り込み
6 自然の限界と逆転――賦
7 声は楽器を模倣する――音楽
8 興と比の分割――起と附、隠と顕
9 隠喩の忘却――「はじまり」と自然の完成
10 正しい文と諷喩の精神
11 直叙としての賦
12 「古い掟」に背くこと――法の禁止と法の後に
第6章 他者への透明な伝達――朱子学
1 古文の独自さ――韓愈
2 文の道への還元――朱熹
3 誠意による自己充実――自―発の哲学
4 独我論に陥らないために――格物致知
5 理想的な他人――自新の民
6 自己啓蒙の拡大――天地万物はわたしと一体である
7 倫理・政治・歴史の可能性
第7章 古文、白話そして歴史――胡適
1 宋代から清代までの古文
2 古文と胡適
3 「打鬼」のための古文
4 換骨奪胎と古への参照
5 無意/有意の白話
6 道統という魔道――胡適と韓愈
7 「中国」という伝達空間
III 他者の声
第8章 公共空間と語ること――ハンナ・アーレント
1 「悪の陳腐さ」と判断の必要
2 他者たちと言語を通じて関係する空間
3 公共空間の喪失
a 政治のもう一つの条件としての倫理――赦しと約束
b 他者を欠くこと――私的領域の侵入
4 制限された複数性
a ペルソナの現れる空間
b 友人の共同体
c 再現前=代理の空間
5 複数性の還元
a 代表的思考としての判断力
b 活動者の注視者への還元、狂人の排除
6 先取りできない未来へ
第9章 誰が他者なのか――エマニュエル・レヴィナス
1 他者の区別という政治
2 「全てに、全ての人に対する責任」と責任の限界
3 もう一人の自己
a 友愛の共同体
b 「わたしはわたしの息子である」
4 他者のヒエラルキー
a 女性の忘却あるいは貶視
b 享受される動物
5 他者に正義を返すこと
第10章 速朽と老い――魯迅
1 速朽の文
2 死を返す
3 魯迅の終末論
4 メシアニズムなきメシア的なもの、あるいはメシア的平和の終末論
5 語ること
6 老いた主体
7 つぶやく母の声
IV 救済の方位
第11章 中国哲学の現在地――マイケル・ピュエットの挑戦
1 マイケル・ピュエットとマーシャル・サーリンズ
2 ピュエットが読むサーリンズ――『神となる――古代中国における宇宙論、犠牲、自己神化』(二〇〇二年)
3 気まぐれな世界に向かう
4 〈かのように〉の礼
5 中国哲学――哲学的な人類学、人類学的な哲学として
第12章 尹東柱はわれらの同時代人
1 遺言
2 拒絶
3 墜─星
4 思想としての詩
おわりに
第13章 声の乱調――中国と女性
1 キェルケゴールと女性
2 女性、植物、言語――自然の精神もしくは大地の精神
3 中国的モダニズムと女性の声――魯迅
4 鬼を打つ速朽の文
5 魯迅と女性の声
6 子どもが登場するときに女性が消える――陳凱歌『子どもたちの王様』(一九八七年)
7 弟としての女性――来娣
8 救済がないことを示す子どもたち――反復する者としての王福
9 道は屎尿にあり――牛飼いの少年
おわりに 中国的モダニズムのゆくえ
あとがき
増補新装版へのあとがき