残響の中国哲学 増補新装版

言語と政治

著者
中島 隆博
ジャンル
人文科学  > 哲学・思想・倫理
書物復権
発売日
2022/05/25
ISBN
978-4-13-010154-7
判型・ページ数
A5 ・ 384ページ
定価
6,930円(本体6,300円+税)
在庫
在庫あり
内容紹介
目次
著者紹介
中国哲学と西洋哲学の交差から何が見えてくるか。荘子、朱子学、魯迅、ポーコック、アーレント、レヴィナス……言語と政治をめぐる古今の思考に分け入り、かき消されてきた声の響きを聞くことによって、他者たちのための哲学の可能性をひらく。中国哲学を脱構築する企て。
序 文字の誕生――夜哭く鬼

I 言語と支配

第1章 正しい言語の暴力――『荀子』
 1 正名とは何か
 2 記号の恣意性
 3 名を制定する――旧名、先王、後王
 4 礼儀を制作する
 5 歴史的な次元を設定する意義――正統性、政治権力
 6 名を捨てる 

第2章 どうすれば言語を抹消できるのか――言尽意/言不尽意論
 1 言は意を尽くす――欧陽建
 2 言は意を尽くさず、象も意を尽くさず――荀粲 
 3 尽意追求の論理――王弼(一)
 4 超越論的言語としての〈忘却された言語〉――王弼(二)
 5 志通舎言と忘象得意――王弼と『荀子』の出会い

第3章 オラリテの次元――『荘子』
 1 蹄筌の故事の読み方
 2 書き言葉への恐れ 
 3 伝達できない意と現前
 4 根源的なオラリテ――『荘子』と王弼の差異

第4章 言語の政治的支配は可能か――儒家・墨家・道家・法家
 1 J・G・A・ポーコックと古代中国哲学
 2 儀礼、法、正名――儒家
 3 上位者との同意――墨家
 4 言語と権力の拒否――道家
 5 不同意の維持――法家
 6 儀礼、言語、権力の総合――荀子

II 起源と伝達

第5章 文学言語としての隠喩――劉勰『文心雕龍』
 1 「はじまり」の詩――『詩経』
 2 『詩経』の反復――『楚辞』
 3 差異の原理としての『楚辞』
 4 「はじまり」の抹消と『詩経』の絶対的基礎づけ
 5 自然化の拡張――修飾の取り込み
 6 自然の限界と逆転――賦 
 7 声は楽器を模倣する――音楽
 8 興と比の分割――起と附、隠と顕
 9 隠喩の忘却――「はじまり」と自然の完成
 10 正しい文と諷喩の精神
 11 直叙としての賦
 12 「古い掟」に背くこと――法の禁止と法の後に

第6章 他者への透明な伝達――朱子学
 1 古文の独自さ――韓愈
 2 文の道への還元――朱熹
 3 誠意による自己充実――自―発の哲学
 4 独我論に陥らないために――格物致知
 5 理想的な他人――自新の民
 6 自己啓蒙の拡大――天地万物はわたしと一体である
 7 倫理・政治・歴史の可能性

第7章 古文、白話そして歴史――胡適
 1 宋代から清代までの古文
 2 古文と胡適
 3 「打鬼」のための古文
 4 換骨奪胎と古への参照
 5 無意/有意の白話
 6 道統という魔道――胡適と韓愈
 7 「中国」という伝達空間

III 他者の声

第8章 公共空間と語ること――ハンナ・アーレント
 1 「悪の陳腐さ」と判断の必要
 2 他者たちと言語を通じて関係する空間
 3 公共空間の喪失
  a 政治のもう一つの条件としての倫理――赦しと約束 
  b 他者を欠くこと――私的領域の侵入
 4 制限された複数性
  a ペルソナの現れる空間  
  b 友人の共同体  
  c 再現前=代理の空間
 5 複数性の還元
  a 代表的思考としての判断力  
  b  活動者の注視者への還元、狂人の排除
 6 先取りできない未来へ 

第9章 誰が他者なのか――エマニュエル・レヴィナス
 1 他者の区別という政治
 2 「全てに、全ての人に対する責任」と責任の限界
 3 もう一人の自己
  a 友愛の共同体  
  b 「わたしはわたしの息子である」
 4 他者のヒエラルキー
  a 女性の忘却あるいは貶視  
  b 享受される動物
 5 他者に正義を返すこと

第10章 速朽と老い――魯迅
 1 速朽の文
 2 死を返す
 3 魯迅の終末論
 4 メシアニズムなきメシア的なもの、あるいはメシア的平和の終末論
 5 語ること
 6 老いた主体
 7 つぶやく母の声

IV 救済の方位

第11章 中国哲学の現在地――マイケル・ピュエットの挑戦
 1 マイケル・ピュエットとマーシャル・サーリンズ
 2 ピュエットが読むサーリンズ――『神となる――古代中国における宇宙論、犠牲、自己神化』(二〇〇二年)
 3 気まぐれな世界に向かう
 4 〈かのように〉の礼
 5 中国哲学――哲学的な人類学、人類学的な哲学として 

第12章 尹東柱はわれらの同時代人
 1 遺言
 2 拒絶
 3 墜─星
 4 思想としての詩
 おわりに 

第13章 声の乱調――中国と女性
 1 キェルケゴールと女性
 2 女性、植物、言語――自然の精神もしくは大地の精神
 3 中国的モダニズムと女性の声――魯迅
 4 鬼を打つ速朽の文
 5 魯迅と女性の声
 6 子どもが登場するときに女性が消える――陳凱歌『子どもたちの王様』(一九八七年)
 7 弟としての女性――来娣
 8 救済がないことを示す子どもたち――反復する者としての王福
 9 道は屎尿にあり――牛飼いの少年
 おわりに 中国的モダニズムのゆくえ 

あとがき 

増補新装版へのあとがき
中島 隆博
東京大学東洋文化研究所教授
残響の中国哲学 増補新装版
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