牧野雅彦『不戦条約』が5/9『日本経済新聞』で紹介
2020/05/11 書評・メディア掲載
牧野雅彦『不戦条約――戦後日本の原点』が5/9『日本経済新聞』で紹介されました。評者は吉田徹氏(北海道大学教授)。
戦後日本の起源をたずねて――「本書は、憲法9条に具現化された日本の戦後レジームを28年の不戦条約をめぐる駆け引きに遡り、日本の姿の起源を訪ねる。すなわち、第1次世界大戦後、ドイツに対する安全保障を求めて軍縮会議に反発したフランスが代わりに提案したのは、アメリカの欧州大陸への関与を求める不戦条約であった。(…)もっとも、国際連盟にも加盟せず、モンロー主義から旧大陸への関与を避けたいアメリカは、2カ国間同盟ではなく、より理念的な意味合いを持つ条約を、多国間で締結することを提案する。国際紛争解決の手段としての戦争放棄を謳うケロッグ・ブリアン条約は、かくして米欧間の妥協の産物として日の目を見たのだ。本は後半で、不戦条約を批准をめぐる日本における争点、とりわけ美濃部達吉ら憲法学者らと枢密院での議論に焦点を当てる。(…)「人民の名」によって宣言される条約は、米欧の共和主義的民主主義体制を前提としており、天皇大権のもとでは据わりが悪いためだ。(…)著者は、戦前の天皇大権と国際条約、戦後の天皇制と日米同盟という「ねじれ」は同根だと喝破する。欧州、米国、日本の何れの主権も、その根本は変わっていない。微細な外交交渉の記述から、時代を超えた世界政治のダイナミズムが見えてくる」
※著者・牧野雅彦先生による〈選書・コメント〉付『不戦条約』関連ブックガイド「国際協調の時代を読み解く 国際連盟設立100年と不戦条約――対立と分断を越えるために」がございます。是非ご覧ください。
戦後日本の起源をたずねて――「本書は、憲法9条に具現化された日本の戦後レジームを28年の不戦条約をめぐる駆け引きに遡り、日本の姿の起源を訪ねる。すなわち、第1次世界大戦後、ドイツに対する安全保障を求めて軍縮会議に反発したフランスが代わりに提案したのは、アメリカの欧州大陸への関与を求める不戦条約であった。(…)もっとも、国際連盟にも加盟せず、モンロー主義から旧大陸への関与を避けたいアメリカは、2カ国間同盟ではなく、より理念的な意味合いを持つ条約を、多国間で締結することを提案する。国際紛争解決の手段としての戦争放棄を謳うケロッグ・ブリアン条約は、かくして米欧間の妥協の産物として日の目を見たのだ。本は後半で、不戦条約を批准をめぐる日本における争点、とりわけ美濃部達吉ら憲法学者らと枢密院での議論に焦点を当てる。(…)「人民の名」によって宣言される条約は、米欧の共和主義的民主主義体制を前提としており、天皇大権のもとでは据わりが悪いためだ。(…)著者は、戦前の天皇大権と国際条約、戦後の天皇制と日米同盟という「ねじれ」は同根だと喝破する。欧州、米国、日本の何れの主権も、その根本は変わっていない。微細な外交交渉の記述から、時代を超えた世界政治のダイナミズムが見えてくる」
※著者・牧野雅彦先生による〈選書・コメント〉付『不戦条約』関連ブックガイド「国際協調の時代を読み解く 国際連盟設立100年と不戦条約――対立と分断を越えるために」がございます。是非ご覧ください。