丹羽美之『日本のテレビ・ドキュメンタリー』が8/8『日本経済新聞』で紹介

丹羽美之『日本のテレビ・ドキュメンタリー』が、8/8『日本経済新聞』で紹介されました。評者は石田佐恵子氏(大阪市立大学教授)。

「記録映画との分岐点を発見――本書は、1950年代から現在まで日本のテレビで放送されたドキュメンタリー番組を対象に、そのなかに描かれた戦後日本の姿を明らかにしようとする。本書は時系列的に番組詳細を列挙するだけの目録ではない。ドキュメンタリー番組の描き方や方法に着目して、それがどのように変わってきたのかを、戦後日本の変容と関連づけつつ論ずるものだ。(…)NHK・民放各社毎に丹念にまとめられた番組系譜図を見ると、現在に至るまで、実に多くのドキュメンタリー番組が放送されてきたことが分かる。一口にドキュメンタリーと言ってもきわめて多様であり、そのジャンルの幅は予想外に広いことも分かるだろう。このように網羅的な情報をまとめあげるのは並大抵な作業量ではない。(…)メディア研究における本書の重要なな貢献は、テレビのドキュメンタリー表現が、メディア史のなかで先行する記録映画とどのように訣別し、何人もの制作者の果敢な挑戦と試行錯誤の中で、いかにその方法を変容させてきたのかについて、明確な分岐点を発見したことである。それは、戦後日本の決定的な分岐点ともかかわりあっているようにも思える。ネット動画全盛時代となり、テレビメディアの終焉が叫ばれるようになって久しい。だからこそ、本書のような、テレビ表現・方法の変容の力学にまで踏み込んだ議論が必要なのではないだろうか」
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