服部薫編『日本の鰭脚類』が『北海道新聞』(夕刊)で紹介
2020/08/21 書評・メディア掲載
服部薫編『日本の鰭脚類――海に生きるアシカとアザラシ』が、『北海道新聞』(夕刊)「科学欄」で紹介されました。評者は浅川満彦氏(酪農学園大学獣医学類教授)。
「海獣調査 過酷な条件で多角的に――本書は「進化と歴史」「生態と生理」「資源と管理」の3部構成で、互いに密接に連関している。たとえば、漁業問題は第3部が直截(ちょくせつ)的ではあるが、第1部の考古学・民族(民俗)学的論考により、鰭脚類が古来重要な海洋資源であったことを知る。第2部の回遊・定住の生態は、有害種が新旧入れ替わる現象の理解を助ける。他個体の鳴き声の学習能力があることなど音声コミュニケーションに関する研究は、海獣を漁場に寄り付かせないための工夫にも応用される。また海獣類の食性デーの詳細な情報には目を見張る。筆者らが、これらの入手にそれだけ過酷な条件で立ち向かったのか、想像を巡らせてほしい。
ところで、コロナ禍により、我々は以前に比べ感染症という語に鋭敏に反応するようになった。本書にはアザラシジステンパーによるゼニガタアザラシの大量死の例も記されている。そうなると、北海道のゼニガタにもその病原ウイルスがいないか、時々海岸にトドやアザラシの死体は大丈夫かなど疑問百出だろう。ご心配なく。日本でも鰭脚類の寄生虫病を含む感染症研究も進みつつあることを付記しておく」
「海獣調査 過酷な条件で多角的に――本書は「進化と歴史」「生態と生理」「資源と管理」の3部構成で、互いに密接に連関している。たとえば、漁業問題は第3部が直截(ちょくせつ)的ではあるが、第1部の考古学・民族(民俗)学的論考により、鰭脚類が古来重要な海洋資源であったことを知る。第2部の回遊・定住の生態は、有害種が新旧入れ替わる現象の理解を助ける。他個体の鳴き声の学習能力があることなど音声コミュニケーションに関する研究は、海獣を漁場に寄り付かせないための工夫にも応用される。また海獣類の食性デーの詳細な情報には目を見張る。筆者らが、これらの入手にそれだけ過酷な条件で立ち向かったのか、想像を巡らせてほしい。
ところで、コロナ禍により、我々は以前に比べ感染症という語に鋭敏に反応するようになった。本書にはアザラシジステンパーによるゼニガタアザラシの大量死の例も記されている。そうなると、北海道のゼニガタにもその病原ウイルスがいないか、時々海岸にトドやアザラシの死体は大丈夫かなど疑問百出だろう。ご心配なく。日本でも鰭脚類の寄生虫病を含む感染症研究も進みつつあることを付記しておく」