秋草俊一郎『「世界文学」はつくられる』が8/22『日本経済新聞』で紹介

秋草俊一郎『「世界文学」はつくられる 1827-2020』が、8/22『日本経済新聞』で紹介されました。評者は加藤百合氏(比較文学者)。

「「カノン」の成立 精細に再現――世界中で書かれ続ける無数の文学作品から各国で独自の「世界文学」というカノン(正典)が形作られ、そして時代とともにその基準は変化しカノンの入れ替えが行われ「世界文学」の陣容を大きく変えてきた――ダイナミックな、この上なく大きな視界をもつ一書である。ネイビーブルーに金文字の、学位論文を洗練したような本書は期待通り爽快な満足感を与えてくれた。「世界文学」とは、世界の文学の総和ではなく、何らかの見地から遠近法に従って描き直す文学史である。各国文学の数だけそれはあり、各国文学の歩みはまたその国の「世界文学」書き直し過程に反映してきた――著者は20世紀を支配した「世界文学」概念をみごとに解析してみせる。(…)本書は、「世界文学」の正体を世界各地で幾度となく出版された『世界文学全集』と銘打つ数十冊~百冊の文学アンソロジーを精査して具体的に論じるユニークな学術書だ。翻訳史研究としても読みごたえががある。学術書としての完璧な厳密さをもちながら、簡明な説明により学術用語など知らなくともさくさくと読むことができる。各部において、明治以来の日本、革命後のソ連、そして大戦後の北米、それぞれ、誰がいかなる意思と時代の制約のもとに『世界文学全集」を編んだのか、その過程を証言を積み上げ精細に再現してゆく。この三国の内情の比較を本格的に行えるのはいま著者に措いていない。(…)目次たちを舐めるように熟読し虫眼鏡で仔細に点検したくなる、不思議な本である」
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