民法 III
[第4版]
債権総論・担保物権
[第4版]
債権総論・担保物権
民法の抜本的な改正は、私たちの生活をどう変えるのか。
平成29年の改正作業に携わった著者が、
豊富な[設例]を用いて詳細かつわかりやすく解説する。
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債権総論・担保物権
A5判/728頁
本体3,900円+税
ISBN978-4-13-032353-6
2020年4月刊行
民法の基本書として好評を博した内田民法シリーズ、待望の改訂。2020年4月に施行される改正民法に完全対応した決定版。債権総論と担保物権をセットにし、豊富な図版やコラムでわかりやすく解説。最新判例、重要論点を網羅。学生、実務家必携の定番テキスト。
◎ 平成29(2017)年債権法改正に完全対応、最新判例、重要論点を網羅。
◎ 債権総論と担保物権をセットにし、よりわかりやすく解説。
◎ 判例をもとにした[設例]および図版と色で理解を助ける。
◎ コラム[社会はいま][もう一歩前へ]で時事的な話題や専門的なトピックを紹介。
◎ 論点相互および民法Ⅰ、Ⅱ、Ⅳとのクロス・レファレンスを徹底。
本書は,民法のなかの債権総論および担保物権と呼ばれる領域を対象とする教科書である.第3版を刊行したのが2005年9月だから,以来15年近くが経過した.
第3版刊行の翌年から,債権法を中心とする民法の抜本改正に向けての動きが始まり,2007年に私は大学を退職して法務省に移って改正作業に専念することになった.改正作業は平坦な道ではなかったが,2017年5月に改正法が成立し,2020年4月から施行された.このほか,この15年間に新しい判例も数多く出ている.第4版では,債権法改正を中心とするこの間の立法および判例の動きを盛り込んだ.
法務省の常勤職を終えたあと,私は,客員弁護士として大手弁護士事務所に籍を置き,その執務室を研究室代わりにして研究に従事する傍ら,事務所内外の案件を通じて実務に触れることとなった.立法実務や弁護士実務の世界に身を置いてみて,実務家の間でも本書を広く参照していただいていることを知った.本書は,当初,授業の予習者や独習者を想定して,記述の厳密さよりわかりやすさを重視して執筆したが,第4版では,実務に役に立つことをも視野に入れて執筆することを心がけた.このことは,教科書に徹するという本書のコンセプトを変化させたかもしれないが,法学教育のあり方が流動化する中で,本書のような書物の存在理由を考えたうえでの判断である.実践的性格の強い本書の領域において,この第4版が広く読者に受け入れられることを願っている.
* * *
本書の特色の第1は,シリーズの他の巻と同様,判例をもとにした設例の問いに沿って議論を展開していることである.多くの設例は,実務においても必須の判例がもとになっており,判例ルールがどのような事案を通じて形成されたのかを知るうえでも有益であろう.
第2に,本書の情報量は,初学者にとっては詳しすぎるともいえるが,とりわけ本書の後半で扱われる領域(「金融取引法」としてまとめた部分)は,哲学的な原理原則の問題というより,実務的要請を反映しつつ実践的な論理を精緻に組み立てていくという側面が強い.そのような議論に触れることが初学者にも有益だと確信している.
第3に,旧版の【社会はいま】や【もう一歩前へ】と題するコラムを一層拡充した.時事的な話題やより専門的なトピックを扱ったコラムで学習の幅を広げ,民法と社会との関わりを意識していただければ幸いである.
第4に,債権法を中心とした2017年の民法改正は,とりわけ債権総則の領域において重要な改正点が多い.本書は,改正内容を,その背景にまで立ち入って解説した書物としても読んでいただけると思う.なお,改正の全体像を概観するものとして,『改正民法のはなし』(民事法務協会,2020年)と題する小冊子を執筆したので,あわせて参照していただければ幸いである.
〔抜粋〕
第1部 総 説
第1章 序 説
1 債権総則について
2 担保物権について
3 本書の構成及び2017年改正への対応
第2章 債権入門
1 何が問題か
2 債権の種類
(1)発生原因による分類
(2)契約上の義務と債権/債務
(3)内容による分類
(4)種類債権と「特定」
(5)金銭債権
3 債権の対象
4 債権と請求権・物権
第2部 債権の効力
第3章 弁済による債権の実現
一 弁済
1 正常な経過による債権の実現
2 誰が弁済すべきか(弁済者)
3 誰に対して弁済すべきか(弁済の相手方)
(1)原則
(2)受領権者としての外観を有する者(新478条)
(3)受領権限のない者への弁済
4 いつ・どこで弁済すべきか(弁済の時期・場所)
5 何を弁済すべきか
(1)債権の類型に応じた履行の態様
(2)弁済の費用
6 弁済の効果
(1)弁済の充当
(2)弁済受領者の義務
(3)弁済による代位
7 弁済の提供・債権者遅滞(受領遅滞)
(1)弁済のプロセス
(2)弁済の提供の効果
(3)弁済の提供の方法
(4)受領遅滞(債権者遅滞)
8 弁済の法的性質
9 供託
(1)供託とは何か
(2)手続
(3)要件
(4)効果
二 その他の債権消滅原因
1 更改
2 免除
3 混同
4 その他
第4章 債務不履行
一 債務不履行と債権の効力
1 債権の効力
2 債務不履行の類型
二 現実的履行の強制(強制履行)
1 債権の効力の諸段階
2 現実的履行の強制
(1)引渡債務
(2)行為債務
(3)意思表示をする債務
(4)不作為債務
(5)強制履行のできない債務
(6)損害賠償
3 要件
三 損害賠償・追完
1 序
2 損害賠償の要件
(1)債務不履行の事実
(2)契約責任の新たな展開
(3)主観的要件
(4)損害の発生
(5)因果関係
(6)損害賠償の具体例
(7)要件に関する例外
3 損害賠償の効果
(1)損害賠償の方法
(2)損害賠償の範囲
(3)損害賠償額の減額調整
(4)損害賠償に関する特則
(5)賠償者の代位
(6)代償請求権
第5章 第三者による債権侵害
1 序
2 不法行為
(1)伝統的通説の類型論
(2)伝統的通説の問題点
(3)新たな要件論
(4)債権の帰属侵害型
(5)債権の給付侵害型
(6)責任財産を減少させる行為
(7)まとめ
3 妨害排除請求権
第3部 金融取引法――金銭債権の履行確保
第6章 金銭債権の履行確保に関する諸制度
(1)正攻法による債権回収
(2)債権者平等の原則に対する対応
(3)責任財産の保全
第7章 代物弁済
1 序
2 要件
3 効果
第8章 債権譲渡
1 民法制定時の債権譲渡
2 現代の債権譲渡
(1)債権回収手段としての債権譲渡
(2)資金調達のための債権譲渡――換価
(3)資金調達のための債権譲渡――譲渡担保
(4)資金調達のための債権譲渡――証券化等
3 譲渡可能性をめぐる問題
(1)譲渡性の承認
(2)譲渡制限特約の効力
(3)将来債権・集合債権の譲渡
(4)集合債権特有の問題
4 対抗要件をめぐる問題
(1)優先劣後の決定
(2)債務者対抗要件
5 証券的債権・有価証券
第9章 債務引受・契約上の地位の移転
1 債務引受
(1)債務引受とは何か
(2)債務引受の類型
(3)併存的債務引受
(4)免責的債務引受
2 契約上の地位の移転
第10章 相殺
1 相殺とは何か
2 効果
3 要件
(1)一般的要件
(2)相殺の禁止事由
4 相殺の方法
5 相殺の充当
6 相殺の担保的効力
(1)判例の展開
(2)改正法
(3)債権譲渡への適用
(4)転付命令の場合
7 特殊な相殺契約
(1)ネッティング
(2)三者間の相殺
8 相殺の制限
第11章 責任財産の保全
一 一般財産への執行の準備
二 債権者代位権
1 債権者代位権の特色
2 要件
(1)被保全債権に関する要件
(2)債務者に関する要件
(3)代位される権利(被代位権利)に関する要件
3 行使方法・内容
4 効果
5 債権者代位権制度の評価
6 債権者代位権の「転用」
(1)登記請求権
(2)賃借権に基づく妨害排除
(3)その他の転用事例
三 詐害行為取消権
1 制度の位置づけ
2 要件
(1)債権者側の要件
(2)債務者側の要件
(3)詐害行為の類型
3 行使方法
4 効果
(1)債権者は誰に何を請求できるか
(2)債権者が取り消しうる範囲
(3)取消し後の返還の相手方
(4)取消し後の後始末
第12章 保証――人的担保
一 序
1 保証の位置づけ
2 現代における保証
二 債権者と保証人との関係
1 保証契約
2 保証契約の成立
3 保証契約継続中の問題
三 保証債務と主たる債務の関係
1 付従性
(1)成立における付従性
(2)主たる債務の存在時期
(3)内容における付従性
(4)消滅段階の付従性
2 随伴性
3 補充性
四 保証人と主たる債務者との関係
1 求償権
2 通知義務
五 個人保証の規律
1 個人保証一般
2 個人根保証
3 事業債務の保証
4 一般法理による保証人保護
六 保証の特殊形態
1 連帯保証
2 共同保証
3 根保証
(1)身元保証
(2)信用保証
(3)不動産賃貸借の保証
第13章 多数当事者の債権債務関係
一 なぜこれらの概念が必要か
二 分割債権・債務
三 連帯債務
1 連帯債務の成立
2 連帯債務の性質
3 連帯債務者の1人に生じた事由
4 求償関係
四 連帯債権
五 不可分債権・債務
第14章 抵当権
一 物的担保への序説
二 抵当権とは何か
1 非占有担保物権
2 抵当権の設定から実行まで(概観)
3 担保権としての性質
三 被担保債権
四 目的物
1 抵当権の及ぶ範囲
(1)構成部分・従物・付加一体物
(2)借地権
(3)新370条の例外
(4)果実
2 物上代位
(1)物上代位とは何か
(2)物上代位の目的物
(3)差押えをめぐる問題
3 土地と建物が別個の不動産とされることから生ずる問題
(1)法定地上権
(2)一括競売
五 実行前の抵当権の効力
1 設定者の使用収益権
2 第三者への利用権の設定
(1)抵当権設定後の賃貸借
(2)短期賃貸借の実態
(3)実務・判例の展開
(4)2003(平成15)年改正
3 侵害に対する効力
(1)物権的請求権
(2)期限の利益喪失・増担保
(3)損害賠償請求
4 第三取得者との関係
(1)代価弁済
(2)抵当権消滅請求
(3)第三取得者に関するその他の規定
5 抵当権の処分
(1)概観
(2)転抵当
(3)抵当権の譲渡・放棄/抵当権の順位の譲渡・放棄
(4)抵当権の順位の変更
六 実行段階の問題
1 担保不動産競売
2 担保不動産収益執行
3 共同抵当
七 抵当権の消滅
1 一般的な消滅原因
2 抵当権の消滅時効
八 根抵当権
1 根抵当権とは何か
2 設定
3 根抵当権の効力
(1)被担保債権
(2)被担保債権の範囲
(3)優先弁済権
4 確定前の内容の変更
(1)債権者の変更
(2)債務者の変更
(3)根抵当権者・債務者の相続・合併・分割
(4)被担保債権の範囲の変更
(5)極度額の変更
5 根抵当権の処分
6 元本の確定
7 共同根抵当・共有根抵当
九 その他の特殊な抵当権および抵当証券
1 目的物の範囲拡大
2 抵当証券
第15章 質権
1 質権の特色
2 質権の種類
3 質権の設定
(1)効力発生要件
(2)対抗要件
4 質権の効力
(1)被担保債権の範囲
(2)効力の及ぶ目的物の範囲
(3)留置的効力
(4)優先弁済権
5 質物の再利用(転質)
第16章 非典型担保
一 概観
二 譲渡担保
1 譲渡担保とは何か
2 譲渡担保の法律構成
3 当事者間の効力
(1)目的物の利用関係
(2)優先弁済権
(3)受戻し
(4)物上代位
4 対外的効力
(1)設定者側の第三者と譲渡担保権者との関係
(2)譲渡担保権者側の第三者と設定者との関係
5 集合物譲渡担保
(1)概説
(2)効力
(3)実行
(4)集合債権譲渡担保
6 その他の財産の譲渡担保
三 売渡担保
四 仮登記担保
1 序
2 基本的構造と特色
(1)目的物
(2)効力
(3)私的実行
(4)競売手続による優先弁済
(5)目的物の使用収益との関係
(6)根仮登記担保
(7)総括
五 所有権留保
1 所有権留保とは何か
2 実行方法
3 対外関係
六 その他の担保
第17章 法定担保物権
一 留置権
1 留置権とは何か
2 効力
3 要件
4 留置中の権利義務
5 留置権の消滅
二 先取特権
1 先取特権の種類
2 一般の先取特権
3 動産の先取特権
4 不動産の先取特権
5 効力
民法(債権法)改正の背景や全体像がこの1冊に――2020年4月1日から施行される改正民法の重要論点を、法務省で参与として改正作業に深くかかわった著者ならではの視点でわかりやすく解説。「民事法務」誌での好評連載に加筆して書籍化。
〈一般財団法人民事法務協会発行 東京大学出版会発売〉
A5判・横組・並製・168頁
本体1,500円+税
ISBN978-4-13-033206-4 C3032
2020年4月刊行
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