書籍紹介

画像:競争法ガイド

競争法ガイド

デビッド・ガーバー[著]
白石忠志[訳]

A5判/232頁
定価3,300円(本体3,000円+税)
ISBN978-4-13-031200-4
2021年6月21日刊行

経済のグローバル化に伴い必須とされる競争法の基礎知識と世界的潮流を、分かりやすく解説した入門書。世界の競争法を知り尽くした著者が、共通の基本構造と法域固有の特徴をあわせて論じ、その全体像やダイナミズムを提示する。日本の状況を踏まえつつ、本書のポイントを解き明かした解題付。
(原書:David J. Gerber, Competition Law and Antitrust: A Global Guide, Oxford University Press, 2020)

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著者・訳者紹介

[著者]

デビッド・ガーバー
(David J. Gerber)

シカゴ・ケント法科大学院特別教授(University Distinguished Professor Emeritus, Professor of Law Emeritus, Chicago-Kent College of Law, Illinois Institute of Technology)
トリニティ・カレッジ(コネティカット州)で学士、イェール大学で修士、シカゴ大学で法務博士。ニューヨークと欧州での実務経験のあと、研究教育に従事し、世界の多数の大学における客員教授等の経験も持つ。代表的な著書として、Law and Competition in Twentieth Century Europe (Oxford University Press, 1998)、Global Competition (Oxford University Press, 2010)、がある。

[訳者]

白石忠志(しらいし・ただし)

東京大学教授(法学部・大学院法学政治学研究科)
主な著書として、『技術と競争の法的構造』(有斐閣、1994年)、『独禁法講義』(有斐閣、初版1997年、第9版2020年)、『独占禁止法』(有斐閣、初版2006年、第3版2016年)、『独禁法事例集』(有斐閣、旧書名初版2008年、初版2017年)、がある。

Q&A

競争法と『競争法ガイド』について、東京大学出版会・営業クマの“くまきち”が、訳者の白石先生に質問!

くまきち

「競争法」って聞き慣れない言葉ですが、どのような法律でしょうか?

「競争を制限しようとする行為を禁止して競争を守るために特に設けられた法」のことです。日本では「独占禁止法」と呼ばれることも多いですが、外国の同じような法もあわせて「競争法」と呼ばれることも増えていますね。

白石先生
くまきち

なるほど。その「競争法」って、重要なのでしょうか?

グローバル化とデジタル化がどんどん進む今の時代、国境を越えて経済活動が行われることもあり、注目は増していると思います。世界の仕組みと流れを知っておいたほうが良いでしょう。

白石先生
くまきち

今回は、そのガイドとなるような、入門書なのですね。著者のガーバー教授は、どのような方でしょうか?

世界各地の大学で教壇に立ち、世界の競争法を調べてきた、いわば権威的存在と言えるでしょう。しかし気さくな方です。日本でも明治大学や東京大学などを訪れたことがあります。そのときは、学術的な交流に加え、食事もご一緒させていただきました。シカゴで尺八の稽古もされているそうです。

白石先生
 
くまきち

ぼくもご一緒したかったです!!次回のご来日時にはじっくりお話しできるよう、まずは『競争法ガイド』を読みたいと思います。

この本はとても分かりやすく、しかも「競争法」という枠を超えて、法律の世界のダイナミズムを味わうことができます。2020年度には、東大の新入生向けの授業教材として、第4章を使いました。くまきちくんの知的好奇心を満足させるのは、確実ですね。

白石先生

内容見本

第1章 本書のねらい

 経済における競争は、金銭や不動産などの利益を得ようとする闘いであり、ほとんど全ての地域のほとんど全ての人の人生にとって重要である。競争が存在するか否か、競争はどれほど活発か、競争はどれほど自由か、によって、私たちが何を買うか、仕事があるかどうか、どのような仕事をすることができるか、将来どのような機会があるか、が決まる。「競争法(competition law)」は、「反トラスト法(antitrust law)」とも呼ばれ、競争を制限しようとする行為を禁止して競争を守るために特に設けられた法である。したがって、競争法は全ての地域の人の人生にとって直接的で強い影響力を持ち得る。本書の目的は、競争法を身近で理解しやすいものとし、競争法の様々な顔を国内的なものから世界的なものに至るまで明らかにすることである。
 競争法は、ますます、ビジネスを形作る重要な要素となり、経済政策に影響を与え、世界中の人々や企業や政府に対して新たな機会を与えたり、逆に何かを阻んだりしている。この案件に投資すべきか。この契約にサインしても適法なのか。このプロジェクトは進めるべきか。このマーケティング戦略を実施しても適法か。自社の競争者が規模と力にものを言わせて自社の新規参入を阻んでいるのだがどのような対策が可能か。ネット巨大企業がユーザのデータについてこのようなことをしても許されるのか。弁護士は、競争法について浅薄な理解と誤った前提しか持っていないと、競争法上問題のない契約であるにもかかわらずストップするように助言してしまうかもしれないし、逆に、当局の調査の対象とされて課徴金・罰金を受けたり担当者が刑務所に入れられたりするような契約にゴーサインを出してしまうかもしれない。本書は、全ての人がこのような問題について適切な答えを得ることができるような道具を提供する。

解 題 (白石忠志)

 本書は、抜群に面白い。
 競争法の概要を、骨太に示している。余計な細かいことを書いていない。建前として語られることを建前として説明する。それが本質であるかのような語り方をしない。競争法の専門家の間で何となく知られている暗黙知を、構造化し、言語化している。以上のようなことを、どこかの怪しげで訳知り顔の者でなく、定評ある研究書を刊行済みの著者が重厚な筆致で語る。通常の教科書には書かれていない本当のことが、柔らかく、すんなりと、書かれており、ところどころで思わず笑ってしまうほどである。
 ある法分野を、現代的かつ表層的な部分だけでなく、その歴史や文化との関係も絡めながら深く知りたい、という読者は、世界中に多くいる。しかし、そのような要望に応えるかに見える書物は、難解で、冗長で、読者を挫折させることが多い。本書の著者は、そのような深い理解を与えるのに好適な資質を備えていながら、同時に、難解かつ冗長に枝葉末節をもてあそぶことの弊害を理解している。何が重要なのかを煎じ詰める訓練を日頃から行っていることが、よくわかる文章である。

目 次

序文/謝辞
日本語版凡例

第1章 本書のねらい

1 本書の目標
2 目標を達成するための具体的な方法
3 本書が行わないこと
4 本書の全体の概観
5 本書の使い方

第1部 競争法の内容・法目的・判断手法

第2章 競争法の真の姿

1 競争法をわかりにくくしている諸々の要素
2 競争法はどのような問題に対処する法であるのか
3 競争法の中核的定義
4 多様性をもたらす諸側面

第3章 競争法の法目的と実際の運用

1 言語化された法目的
2 経済的な法目的論
3 社会的・政治的価値を重視する法目的論
4 言語化されていない法目的

第4章 関係機関と判断手法

1 議会
2 競争当局
3 裁判所
4 競争当局や裁判所における判断手法
5 強制と圧力

第2部 競争法の違反類型

第5章 反競争的な合意

1 競争者間の合意(水平的合意、カルテル)
2 競争関係にない者による合意(垂直的合意)

第6章 支配的地位にある企業の単独行為

1 検討の出発点としての力
2 市場画定
3 支配的地位と独占力
4 排除行為
5 排除行為をどのように呼ぶかの違い
6 搾取行為
7 単独行為の立件
8 経済的な従属と相対的な支配力
9 国際的視野から見た分類

第7章 企業結合

1 企業結合規制の歴史
2 企業結合規制の主な特徴
3 事前届出
4 企業結合審査
5 企業結合審査
6 企業結合規制の国際的側面
7 コメント

第3部 各法域の競争法

第8章 米国反トラスト法

1 米国反トラスト法の成り立ち
2 法目的
3 判断手法と違反要件論
4 関係機関と手続
5 反トラスト法の原動力
6 対象となる行為
7 州の反トラスト法
8 グローバルな競争法システムのなかでの米国

第9章 欧州の競争法

1 基本構造
2 EU加盟国の役割
3 EUの関係機関
4 法目的
5 違反要件
6 国際的役割

第10章 他の法域の競争法を理解する方法

1 様々な前提条件
2 共通した前提条件を持つ法域のグループ

第4部 国際的な躍動と変化の動向

第11章 グローバルシステム

1 管轄権
2 動的なシステム

第12章 競争の変容と競争法の変化

1 グローバル化の深化
2 デジタルエコノミー
3 競争法への影響と対応
4 競争法への影響と対応

本書の読み方
解題(白石忠志)/訳者あとがき
索引

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