書籍紹介
UP plus
ウクライナ戦争と
世界のゆくえ

池内 恵
宇山智彦
川島 真
小泉 悠
鈴木一人
鶴岡路人
森 聡
定価1,870円(本体1,700円+税)
ISBN978-4-13-033305-4
2022年8月刊
戦争の衝撃
2022年2月24日にロシア・プーチン政権のウクライナ侵攻は世界に衝撃を与え、いまなお、日々リアルタイムに戦争の状況は報道され、戦争の終結は、今現在も見えていない状況である。本書は、いまもっともアクチュアルに活躍する地域・国際関係の研究者がこの状況を各専門分野から、ロシア・ウクライナ戦争と今後の世界を見通す。緊急出版!
川島真先生によるあとがきを「note」にて公開しています。
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著者紹介

営業クマの“くまきち”です。
著者の先生と、各章の一部をご紹介します!
専門は国際政治経済学・科学技術と安全保障・宇宙政策
著書に『宇宙開発と国際政治』(岩波書店)、『EUの規制力』(日本経済評論社、共編著)などがある。
◆本書「戦争と相互依存――経済制裁は武力行使の代わりとなるか」より
二月二四日にロシアの大規模なウクライナへの侵攻が始まる前から、アメリカとNATO諸国はウクライナに対する派兵を否定し、ロシアと直接戦火を交えることを避ける選択をしたが、同時に、ロシアが侵攻した場合は大規模な経済制裁を行うと宣言し、それによってロシアの行動を抑止しようとした。しかし、結果としては、ロシアは経済制裁を恐れず、ウクライナに侵攻し、四ヵ月以上経った今も戦闘は継続されている。
専門はロシアの安全保障政策
著書に『現代ロシアの軍事戦略』(筑摩書房)、『「帝国」ロシアの地政学――「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版)などがある。
◆本書「古くて新しいロシア・ウクライナ戦争」より
戦争を形容・分類する方法はいくつかある。例えば、それが正当な戦争なのか、不当な戦争なのかといった規範的判断はその一つであろうし、あるいは規模や烈度で分けることもできる。ハイテク兵器が中心になるのか、ローテクの旧式兵器で戦われるのか、といった技術的な分類もできよう。
専門は現代欧州政治、国際安全保障
著書に『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(筑摩書房)、『EUの国際政治――域内政治秩序と対外関係の動態』(慶應義塾大学出版会、共編著)などがある。
◆本書「欧州は目覚めたのか――ロシア・ウクライナ戦争で変わったものと変わらないもの」より
ロシア・ウクライナ戦争にはさまざまな論点が存在し、その影響も各方面に及ぶが、ここでは、主として欧州の国際秩序や安全保障へのインパクトを分析したい。端的にいって、欧州は転換点にある。好むと好まざるとにかかわらず、変化が迫られているのである。
専門は国際政治学、現代アメリカ外交、冷戦史
著書に『ヴェトナム戦争と同盟外交――英仏の外交とアメリカの選択1964-1968年』(東京大学出版会)などがある。
◆本書「ウクライナと「ポスト・プライマシー」時代のアメリカによる現状防衛」より
アメリカは、ロシアによるウクライナ侵略に対して、これまでどのように対応し、これから何をどこまでやる用意があるのだろうか。本稿は、現時点で入手可能な各種資料を手掛かりに、二〇一四年にロシアがウクライナへの侵略を開始して以降、アメリカがいかにウクライナ情勢に対応してきたかを検証するとともに、アメリカの指導者が下している判断の輪郭を捉えることを試みたい。
専門はアジア政治外交史
著書に『中国のフロンティア』(岩波書店)、『21世紀の「中華」』(中央公論新社)、『20世紀の東アジア史』(共編著、東京大学出版会)、『よくわかる 現代中国政治』(共編著、ミネルヴァ書房)、『アフターコロナ時代の米中関係と世界秩序』(共編著、東京大学出版会)など多数。
◆本書「制限なきパートナーシップ?――中国から見たロシア・ウクライナ戦争」より
アメリカが国連総会で提起したロシア非難決議案に対して、北朝鮮やベトナム、ラオスなどが反対に回る中、中国は棄権した。ロシアを国連人権委員会から排除しようとする提案には反対したものの、国連総会の決議案に際してはロシアと完全に一致するわけではない姿勢を示した。また、時に主権重視などを主張してウクライナへの配慮も見せる。中国の対応は決して単純ではないようだ。
専門は中央アジア近現代史、比較政治
著書に『現代中央アジア:政治・経済・社会』(共編著、日本評論社)、『ロシア革命とソ連の世紀5 越境する革命と民族』(編著、岩波書店)、『ユーラシア近代帝国と現代世界』(編著、ミネルヴァ書房)などがある。
◆本書「ウクライナ侵攻は中央アジアとロシアの関係をどう変えるか――戸惑い・危惧と変化への胎動」より
実際には、ロシアと中央アジア諸国の関係は緊密であると同時に複雑であり、ウクライナ侵攻に対する中央アジア諸国の態度も多面的である。また、本稿を書いている時点(五月一五日)では、ウクライナ侵攻が中央アジア諸国の経済状況や安全保障環境、ロシアとの関係に決定的な変化を与えているわけではないが、今後は深い変化につながりうるし、それは当然、世界秩序全体の変化とも連動する。
専門はイスラーム政治思想史・中東研究。
著書に『アラブ政治の今を読む』(中央公論新社)、『増補新版 イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社)『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)、『シーア派とスンニ派』(新潮選書)など多数。
◆本書「ロシア・ウクライナ戦争をめぐる中東諸国の外交――「親米中立」の立ち位置と「多極世界」の希求」より
シリアとイランのように普段から「反米」を掲げ、ロシアに依存していた国々が、ロシア支持の姿勢を示したことは想像に難くなく、その影響、波及効果も限定的である。しかし、「親米」陣営にあるとされてきたトルコやイスラエル、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などが、ロシア・ウクライナ戦争に際して、米陣営に全面的に与することを避けた。これは現在の中東政治と地域秩序の重要な側面を反映している。
目 次
戦争と相互依存
――経済制裁は武力行使の代わりとなるか
鈴木一人
1 経済制裁とは何か
2 対ロシア制裁のポイント
3 対ロシア経済制裁の行方
古くて新しいロシア・ウクライナ戦争
小泉 悠
はじめに
1 二つの戦争パラダイム
2 「限定全面戦争」としてのロシア・ウクライナ戦争
3 古典的な軍事力の重要性
4 鍵を握る動員能力
5 核抑止の役割
6 「新しい戦争」としての側面
おわりに
欧州は目覚めたのか
――ロシア・ウクライナ戦争で変わったものと変わらないもの
鶴岡路人
はじめに
1 ドイツの「転換点」(とその限界)
2 NATO加盟に向かうフィンランドとスウェーデン
3 エネルギーの「脱ロシア」に向かうEU
4 維持されるNATOの中心性
5 未解決の「ロシア問題」
おわりにかえて――欧州の変化の促進・阻害要因
ウクライナと「ポスト・プライマシー」時代のアメリカによる現状防衛
森 聡
はじめに
1 クリミア併合後のアメリカのウクライナ政策
2 侵攻前のバイデン政権の対応
3 ロシアによるウクライナ侵攻後のバイデン政権の対応
4 ウクライナ戦争とアメリカの戦略的な課題
おわりに――「ポスト・プライマシー」時代のアメリカは現状をどう守るか
制限なきパートナーシップ?
――中国から見たロシア・ウクライナ戦争
川島 真
はじめに――中国はロシアと「同じ」なのか?
1 中国国内の見方
2 二〇二二年の中国と新型コロナ
3 中国外交の大原則と米中「対立」という基本構造
4 中国の想定する世界像
5 中露関係の考え方
6 アジアの多数派を獲得する?
7 「力による現状変更」という括り方――「台湾有事」をめぐって
おわりに――ウクライナ戦争と日中関係
ウクライナ侵攻は中央アジアとロシアの関係をどう変えるか
――戸惑い・危惧と変化への胎動
宇山智彦
はじめに
1 ロシアと中央アジア――親密な関係と緊張の兆し
2 侵攻に対する態度――理解か中立か反対か
3 対ロシア経済制裁の影響と「利益」
4 今後の展望――ロシアの弱さがもたらしうる国際秩序の変化
ロシア・ウクライナ戦争をめぐる中東諸国の外交
――「親米中立」の立ち位置と「多極世界」の希求
池内 恵
はじめに
1 国連決議への対応
2 中東の主要な「親米」国の姿勢
3 中東主要国の反応に通底する要素
あとがき(川島 真)
ウクライナをめぐる動き
- 9世紀
-
キエフ・ルーシ(キエフ公国)の成立
- 988年
-
ギリシャ正教を国教とする
- 1240年
-
モンゴル軍が侵入しキエフ攻略
- 1340年
-
ポーランドが東ガリツィア地方を占領
- 1362年
-
リトアニアがキエフを占領(以後、ポーランド及びリトアニアによる占領が続く)
- 1648年
-
ボフダン・フメリニツキーの蜂起(ポーランドからの独立戦争)
- 1654年
-
ペレヤスラフ協定
- 1667年
-
アンドルソヴォ条約、モスクワ大公国とポーランドによるウクライナ分割(ドニプロ川左岸・キエフ→ロシア領、ドニプロ川右岸はポーランド領)
- 1709年
-
ポルタヴァの戦い(ロシアからの独立戦争)
- 1765年
-
ロシアによるウクライナ自治の廃止
- 1783年
-
ロシアによるクリミア・ハン国の併合
- 1795年
-
第3次ポーランド分割、ウクライナはロシア・オーストリアに分割
- 1853年
-
クリミア戦争(~1856)
- 1914年
-
第1次世界大戦(~1918)
- 1917年
-
ロシア革命、ウクライナ人民共和国(中央ラーダ)政権成立
- 1917-21年
-
ウクライナ・ソビエト戦争
- 1922年
-
ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連邦)成立
- 1939年
-
第2次世界大戦(~1945)
- 1941年
-
独ソ戦開始独によるウクライナ占領(~1944)
- 1949年
-
NATO(北大西洋条約機構)が発足
- 1953年
-
スターリン死去
- 1954年
-
ウクライナ併合300年を記念してクリミアをウクライナ領に編入
- 1964年
-
フルシチョフ第一書記失脚、ブレジネフが実権をにぎる
- 1985年
-
ゴルバチョフ、ソ連共産党書記長に就任
- 1986年
-
チェルノブイリ原発事故(4/26)
- 1987年
-
ペレストロイカ始まる
- 1991年
-
ソ連崩壊、ウクライナ独立宣言(8/24)、独立国家共同体(CIS)創設、クラフチュク氏が大統領就任
- 1994年
-
クチマ氏が大統領就任
- 1997年
-
ロシアと友好協力条約締結
- 2000年
-
プーチン氏がロシアの大統領に就任
- 2004年
-
オレンジ革命(民主化運動)を経て、親欧米派のユシチェンコ氏が大統領に就任
- 2008年
-
ロシアがジョージアと武力衝突(南オセチア紛争・グルジア紛争)
- 2010年
-
親ロシア派のヤヌコーヴィチ氏が大統領に就任
- 2014年
-
マイダン革命(尊厳の革命、ユーロ・マイダン革命)。ポロシェンコ氏が大統領就任。CISをウクライナは脱退。ロシアがクリミア半島を併合。ウクライナ東部ドネツク州で親ロシア派武装勢力と治安部隊の戦闘が勃発。
- 2015年
-
ミンスク合意(ウクライナ東部紛争を巡る合意。ロシアとウクライナ、ドイツ、フランスの首脳が15年2月にベラルーシの首都ミンスクでまとめた)
- 2016年
-
EU・ウクライナFTA発効
- 2019年
-
ゼレンスキー氏が大統領に就任
- 2021年
-
ロシアがウクライナ国境に軍を展開
- 2022年
-
ロシア・プーチン大統領がドネツク・ルガンスク人民共和国の独立を承認(2/21)
ロシアがウクライナへ攻撃・侵攻を開始(2/24)
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